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078:クーリエをさがせ!

 楽しいお茶会の時間は瞬く間に過ぎ、窓から差し込む明かりも橙色だいだいになってきた。


「この部屋から時計台は見えないけど、大凡おおよそ五時過ぎくらいだろうか。日没までには宿に戻りたいところだな」


 フォスタの意見に従い、皆で食器を片付け始めた。

 教会の人達が「私達が片付けますからっ」と言っているものの、さすがにそれは気が引けるので手伝うことにした。


 ところが、食器や盆を外の井戸の近くまで運んでいると、子供達の声が聞こえてきた。


「クーリエーー? どこに隠れてるのー??」

「おーい、でてこーいっ」

「おっかしいなー?」


 子供達は皆困った顔をしている。


「どうしたんだ?」


「クーリエがね、かくれんぼで隠れたまま見つからないのー」


「あ、クーリエというのは、この教会で暮らしている孤児の子です。年齢はハッキリとは分からないのですが、10歳くらいの男の子ですね」


 修道女の一人が子供達の言葉を補足してくれた。


「どこでかくれんぼしてたの?」


「……街の西の方」


「北教区から出ちゃダメって言ってるでしょう!」


「ゴメンなさい……」


 知らせてくれた子は申し訳なさそうにしょげてしまった。


「でも、もうすぐ日没だよ? どこかの家に保護されてたら良いけど、もし外に出たままだと危ないよねぇ」


 ティーダの意見に皆がうなづき、全員で手分けしてクーリエを探すことにした。


「妖精パワーで隠れてる子供を一発で見つけたりはできたりは……」


『それが出来てたら、渡り人はすぐに全員集合してただろうね』


「だよなー……」


 想定通りなエクレールの答えに、フォスタが残念そうに溜息を吐いた。



 日没が近い為、ラピスや教会の皆には礼拝堂で待機してもらって自分達だけで捜索しているが、一向に見つからない。


「もしかして、街の外に?」


 その可能性も否定出来ないので、エクレールと一緒に西門から外に出ると……



「助けてーーーーっ!!!」



 海岸近くで、豚と人を足したような姿の化け物に引きずられる女の子を見つけた!

 急いで駆け寄り、化け物の前を塞ぐ。


「貴様! その子を離せっ!」


『アァ? 俺に指図するんかァ?』


 喋った!?


「おい、エクレールっ。前に倒したコウモリと違って、コイツ、人の言葉を話すぞ!?」


「トロールは人型だからね」


 ……そういうものなのか。


「とにかく、その子を離してもらおうか」


『人間風情が、この俺様n……』


『ホーリーライト!!』

『ゲボハァッ!』


 まさかの口上中にエクレールの一発が炸裂。

 魔法の衝撃でトロールが吹っ飛び、一緒に女の子も飛んでいった。


「おおおおおおおおいぃぃぃっ!!!」


『ティーダよろしくっ!』

「はいはーいっ」


 後ろから疾風のように駆け抜けてきたティーダが空中で受け止めた。


「あっぶねぇ……。さすがに冷や冷やしたぞ」


『後ろからティーダが走ってくる音が聞こえたから、ボクとしては行けると思ってたよ』


 うーむ、何だか釈然としないが、無事にクーリエの救出に成功した。



 というわけで……


『くっ、殺せ!!』


 縛り上げたトロールを教会まで連れて帰ってみた。


『そのセリフは女騎士に言わせるから良いのであって、キミみたいな豚野郎が言っても誰も喜ばないよ?』


 お前は何を言っているんだエクレール。


「魔物は本来、夜にしか行動しないはずだろう? どうして貴様は日没前に子供を誘拐しようとした?」


 フォスタが追求するものの、無言のまま全く口を割る気配がない。


「仕方ないなぁ……あ、ちょっと皆は覗いちゃダメだよ?」


 そう言いながらティーダがトロールを奥の部屋に引っ張っていった。

 扉がガチャリ……と閉まってしばらくすると


「ブヒィィィィィッ!!!」


 何だか凄い声がっ!?

 しばらくして、ティーダがトロールを引きずりながら帰ってきた。


「はい、おねーさん達に正直に話してごらん?」


「魔王様からは日没までは人里を襲うなと言われてたけどよ……。街の外をガキがウロウロしてたもんで、つい……」


 何だか凄く素直になってるっ!!


「お前、何をした……?」

「えー、秘密ぅ~。別に拷問だとか性的な事とかはしてないから安心してイイよ?」


 その二つを使わずにこの化け物を従わせている方が余計恐ろしい。

 再びティーダがトロールの方を向いた。


「じゃあ質問。魔王はどうして夜にしか人里を襲わないの?」


「知らねえ。日没後に姿を見た奴らだけ襲えって言われただけだ」


 やはり夜だけ襲うように命令されているのは事実なのか。

 ……魔王の目的が全く分からないな。


「魔王はどんな姿をしている?」


「お前らと同じような姿格好をしている……」


 トロールの答えに、一同が顔を見合わせる。

 魔王という名前からして化け物を想像していたのだが、どうやら人間に近いらしい。


「それじゃ、魔王の居る島から貴方はどうやってこの大陸に来たの?」


「島の周りは波が酷くて船じゃ絶対に渡れねえ。北西の海岸沿いにある洞窟…………」


 そこまで喋ったところでトロールが無言になった。


「洞窟が何だって?」

「……」


 その直後、大コウモリを倒した時と全く同じ光を放ちながらトロールが消えた。

 口止めか……。


『魔王が意図的にリソース供給を止めて、強引に消滅させたんだね』


 エクレールの言葉に、少しトロールに哀れみを感じてしまう。

 だが、これで目指す場所は決まった。


「明日から島に繋がる洞窟を探索し、魔王の城を目指すぞ!」

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