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070:フェアリーパニック!

 行商から手に入れた地図の精度はなかなか大したもので、ほぼ予定通りの時間に宿場町アイルに到着した。


『ヒール!』


 エクレールが疲労困憊のシルバーに魔法を唱えると、たちまち全快。


 しかし、魔法とは何と便利なものであろうか……。


「人々がエクレールのように魔法が使えれば、色々と世の中が便利になりそうだな」


『んー、残念だけどそれはムリかな。この世界は人間が魔法を使えないようになっているからね。理由は知らないけども』


「そうか……」


『でもカトリは運がいい! なんたって魔法を使えるボクが付いてるからねっ。ただし、私欲を満たすような不純な目的には協力しないよ?』


「そんな事をさせるわけが無いだろう……」


 呆れる自分を見てエクレールは笑った。



 どうやら今回の宿は素泊まり専門らしく、馬と荷物を預けてから情報収集の為に酒場にやってきた。

 食事処も兼ねているようなので、店主の前の席に着くことにしよう。


「……お前さん、見ねえ顔だな」


「ああ、ライン公国から遠征して来たんだ。自分と同じく、こういうのを連れて居る奴を探している」


 胸元の衣嚢ポケット に入っているエクレールに指を差したが、店主は怪訝な顔をしている。


『や、やあ!』


 ガシャーンッ!!

 エクレールが手を挙げたのを見た店主が凄い顔で硬直したまま、手に持っていた食器を落とした。


「よっ、よよよっ妖精っ!!?」


 店主の叫び声を聞きつけた常連達が集まってきた。


「すげえ! 本物だっ!!」

「ありがたやありがたや……」

「お持ち帰りしたい~」


 これは一体……?


『カトリは分からないだろうけど、これが妖精を見たことの無い人間の反応なんだよ…』


「そうなのか? ライン公国や神都ポートリアの人々は普通だったのだが……」


『城の人達は仕事でボク達と接する事があるから驚かないだけだし、実は神都ポートリアの人達も結構ジロジロとボクを見てたよ? それに本来、妖精は人前に姿を見せないんだ。人によっては、妖精の存在すら嘘だと言うくらいにね』


 なるほど……。

 そんなのが田舎の酒場に突然現れたのだから、騒ぎになって当然か。


「この様子を見た限り、三人目の渡り人はここまで来ていないか、もしくは妖精を隠したまま行動している可能性が高そうだな……」


 それにしても、この騒ぎはどうしたものか……。

 この騒ぎの中で食事をしろと?


 だが、自分が原因で騒ぎになったというのに、店が騒がしいからと言う理由でこの場を立ち去るのか?


 うーむ……ええい、ままよ!


「親父! 適当な食事と酒をくれ!」



『なんだか、スゴく疲れたよ……』

「御苦労だったな……」


 エクレールが酔っ払い客を引きつけてくれたおかげで、どうにか食事を済ませる事が出来たのだが、何故か酔っ払い達にお酌を要求され、顔を真っ赤にしながら自分の身体より大きな酒瓶を持ち上げる姿は、さすがに少し可哀想だった。


「しかし、よく酔っ払い連中を攻撃せずに我慢出来たな。いつもなら躊躇ためらいなく一発かましてただろうに」


『あそこでボクが暴れたらカトリがお尋ね者になっちゃうからね……。本当は店ごと爆破したい気分だったけど』


 気を利かせた事よりも、本音が物騒過ぎて素直に褒められない。


「少し窮屈かもしれないが、明日は念のためシルフィと同じように鞄に隠れてもらう方が良さそうだなぁ」


『うん……。酔っ払いも大概だったけど、町の子供達に見つかったらもっと恐ろしい事になりそうだもの』


「あー……」


 子供達に危害を加える訳にも行かず、なすがまま玩具にされるエクレールの姿が容易に想像出来る。


『「はぁ…」』


 二人の溜息が重なった。

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