063:幸せな結末
私は、パパとママに今まであったことをたくさん話しました。
クリスくんのこと。
実は一度死んじゃったこと。
妖精のロザリィさんのこと。
セフィルくんやエマちゃんのこと。
たくさん、たくさん…。
………
……
…
「クリスくん、娘を宜しく頼む……」
「私からも宜しくお願いしますね」
「は、はいっ!」
『ニヤリ』
「何だよロザリィ…」
『アンタこれで浮気でもしようものなら、二人から呪い殺されるわよ?』
「ううううう、浮気なんてしねーよ!!」
『あら、麗しの王女様に指輪を贈るなんて真似しておいて、いい度胸してるわねー』
「誤解される言い方は止めろ!!」
「クリスくん、その話を詳しく聞かせてもらおうか?」
「お義父さん! これには事情がっ!!」
…
……
………
パパに睨まれて焦るクリスくんの顔は、今思い出しても笑ってしまう。
クリスくんがメルフィちゃんに指輪を贈るのを見た時はあんなに苦しかったのに、今では笑い話になってしまった。
これからも辛いコトはあるかもしれないけど、きっと大丈夫!
…でも、ひとつだけ気になることがある。
『やっぱり人間は、とても弱い生き物だ……』
『さようなら、愛してるよ』
『この想いだけは、絶対に消させない!!』
『大丈夫だから……』
この声は何だったのだろう…?
ロザリィさんにも確認してみたけど『そんな声、聞こえなかったわよ?』だそうで。
となると、私にしか聞こえない妖精さんの声?
そんなコト、ありえるのだろうか?
~~
今回は驚きの連続だった。
クレアの両親から任されたのもあるけど、やはりクレアの炭坑への単独突入は衝撃的だった。
………
……
…
「井上さん!!」
「あらー、クリスくんひさしぶりー。おくにクレアちゃんもいるよー」
『まほうでドカーンドカーン!』
「くそっ、さっきからバカみたいに地震が起きてるのはそれが原因か!」
「それにー…」
「話は後です! たぶん違う音が交互に鳴ってるんで、クレアはディギングとレベリングを繰り返してるみたいですけど、あんな無茶なディグングの使い方してたら、いつ崩落してもおかしくないですよ!」
「ええええーー!?」
「とりあえず井上さんはここに残ってて! 俺だけで行ってきます!」
「ちーちゃん! クリスさんについていってあげてっ」
『あいあいさーっ!』
…
……
………
井上さんが咄嗟に妖精ワンダーを同行させてくれたから助かったけど、あのまま俺が一人で行ったところで、クレアと一緒に生き埋めになっていただろう。
妖精の力を得たクレア、王族として高い能力を持つセフィル、魔力量が常人の16倍のエマ……か。
「どう考えても俺が最弱なのよなぁ」
残念ながら俺には、最弱と言いながらチートスキルを使いまくることも、悪知恵で魔王軍幹部を撃破する能力もない。
営業スキルでお金を稼ぐことは出来るけど、今回のようにお金で決して解決できない問題に対して、俺はあまりにも無力過ぎる。
俺はいつか、仲間たちの足を引っ張るだけのお荷物になるのではないだろうか?
この世界でやっていけるのだろうか……?
「クリスくん…また難しい顔してるね…」
優しく微笑みながらクレアが近づいてきた。
「大人ってのは、常に悩みながら生きてるもんなのさ」
「気取らなくても…クリスくんはカッコいいよ?」
「ははは、ありがとうな」
お礼にクレアの髪をくしゃくしゃにしてやる。
「やー…髪飾りが取れる…」
クレアの頭には水色のリボン。
「………似合う?」
「うん、超似合ってる」
「前と同じ感想…?」
「愛してる」
クレアが真っ赤な顔をしたまま固まってしまった。
「大人扱いしろって言ったくせに、言われて真っ赤になるなんて、やっぱり子供だなぁ」
苦笑いする俺。
クレアは真っ赤な顔のまま怒ってポカポカ叩いてきた。
「もー! もーっ!!」
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未来がどうなるかなんて全く分からないけど。
今日のところは悩むのをやめよう!
だって、この時間を楽しまないともったいないだろう?
再び幸せを掴むチャンスをくれた神様に感謝しつつ、俺は空を見上げた。
- THE END -
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なんてね。
本当にコレで終わると思う?
まだ物語は始まったばかりだよ。
だから
早くここまでおいでよ。




