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058:さようなら

 みんなどこに行ったんだろ…?

 放課後に魔法実習の片付け当番だった私は、独りで家に帰ってきたのだけど、リビングには誰の姿も無い。



「第1回、どうにかしてクレアを元気にしよう会議~」



「っ!?」


 クリスくんとセフィルくんの寝室から騒ぎ声が聞こえてきたので、足音を立てないように気をつけながら部屋に近づいた。

 ドアは閉まっているけど、中から少しだけ声が聞こえる。


 どうやら私が落ち込んでいるのを心配したみんなが、私を元気づけるために色々考えてくれているらしい。


「定番のデートは?」

「誘ったけど断られた」


 ごめんなさい、あの時はどうしてもそんな気分になれなくて…。


「ふたりきりの時間をつくる!」

「ほぼ相づちと無言のまま2時間だったよ…」


 うー…、自分の口下手な性格が恨めしい…。 


「きせいじじつを!」

「君、それ意味分かってないでしょ?」


 あの、それは…ちょっと、まだ早いかなぁ…。


 それから皆が再び悩んでいる声が聞こえてきた。

 うぅ、またみんなに迷惑をかけてしまった…。

 

「んじゃ、久しぶりに可憐庭かれんていに顔出してみるかなぁ」

「!?」


 え、いつの間にそんな話になったの!?

 みんなが立ち上がった音が聞こえたっ。


 あわわわっ!

 私は慌てて家の外に逃げ出した。



 私、何故か4人を尾行しています…。


『話しかければいいのに、何やってんのよ…』


 今までずっと黙っていてくれたロザリィさんも、さすがに呆れて突っ込んできた。


「うぅ、だってー…」


『しかもsilentwalkまで使って…。ガチで気配消すのは流石にやり過ぎね』


「はい…」


 そして可憐庭かれんていにやってきました。


 何だか、メルフィちゃんがすごい好奇心全開でピョンピョンしてる!?

 あれは一体…王女様は雑貨屋さんが好きなのかなぁ?


 き、気を取り直して、気配を消したままお店に潜入します!



『あの店長さん、めっちゃ顔色悪いけど何があったのかしら……』


「うん、すごく心配だね…」


 前に会った時はもっと活発だった気がするのだけど、今にも倒れてしまいそうな雰囲気だ。

 そんなことを考えていると、店長さんが奥に引っ込んで何かを持ってきた。


「前回は黒いリボンに青い石だったけど、今度のは水色のリボンに黒い石ね」


 あっ! あれは!! あれはっ!!!


『お、あのデザインは見覚えあるわね。ハハーン、なるほどね~』

「うう…」


 私が入院してた時にプレゼントしてくれた髪飾りだ…。

 色は違うけど、あの形は見間違えるはずがない。


「突然だが、理由もなくプレゼントだ!」

「あ………うん、ありがとう………」


 あれは嬉しかったな~。


「俺が絶対何とかしてやる! お前の病気も治してやる! 俺がお前を助けてやる!」


 わーーーー! 思い出してしまった!! 恥ずかしい…。



 自分は一体、何を悩んでいたのだろう。


 うん、きっと大丈夫。


 クリスくんに心配かけたこと、早く謝ら…



「はい、お姫様に献上品だよ」

「???」



「指輪欲しかったんだろ?」

「わ、わたしのために???」



「そりゃそうだろう……」

「わーいっ! クリスさん大好き~っ」





 え…? え………?


『あのバカ…! なんでこのタイミングでっ!!』



~~



「これで元気になってくれたら良いんだけどなー…」


「まあ、何とかなるだろ!」


「私もクレアちゃんを応援するよっ!」


「~♪」


 メルフィだけ違う理由で機嫌が良い気がする。

 まあ、ちゃんとした贈り物の指輪は未来の旦那様から貰っておくれ。


「「「「ただいま~」」」」


 4人揃って家に入ったけど、返事は無い。


「あれ? クレアちゃんって確か片付けが終わったら帰るって言ってたよねぇ?」


「ああ。あれだけ落ち込んでいて、寄り道して帰るとは思えないな」


 そんな話をしていると、メルフィがトトトッと小走りでやってきた。


「クリスさん、机に封筒が置いてありました」


 メルフィから手渡された封筒には便箋びんせんが1枚。

 

 そこに書かれていた内容は一言。



「 さようなら 」


 

 ……どういう意味だ?


「これ、クレアちゃんの字だよ! どうしよう!!」


 エマが慌てている。


「まだ遠くまで行ってないかもしれない! 俺たちは手分けして探すんだ! メルフィはリュータスを探して、クレアが居なくなったと伝えてくれ!」


「分かった! 行ってくるよ、おにーちゃん!」


 え……?


「しゃんとしろ!!!」

「!!?」


 セフィルに両肩を捕まれて我に返った。


「お前も探すんだよ!」

「あ、ああ……」




 その日、クレアは見つからなかった。

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