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046:ラブレター その1

 時はさかのぼり、これは俺達が王都での事件を解決し、神都ポートリアに帰る前の日のお話。



………

……



「マジ…か……」


 この世界の文化にしては珍しくリオン魔法学園は校内土足厳禁、つまり入り口に靴箱があるのだが、俺用のボックスに一通の手紙が入っていた。


 幸い、クレアは聖属性クラスの子たちに囲まれたまま教室に連れて行かれてしまったので、今この場に居るのは俺一人だ。


 学園、靴箱、お別れの前日、手紙……。

 ここまで条件が揃っているなら、手紙の内容なんて読まなくても想像がつく。


 転生前の俺にはこんな甘じょっぱいイベントなんて全く起こらなかったし、全く異世界様々である。


「うへへへ~、差出人はどんな子かな~……はっ!? イカン! イカンですよ!」


 例え差出人がどんな美人だとしても、俺にはクレアが居るのだ。

 一瞬、両手に花とか考えてしまったけど、そんなことは倫理的に許されないし、下手するとクレアがヤンデレに目覚めてしまうかもしれない。


 いや、間違いなく殺られる!!


 転生前の俺は40前のおっさんでクレアは11歳。

 実質20以上も年下の娘を怖がるなんて…と思われるかもしれないが、残念ながら男女関係において年齢の大小はあまり意味を持たないらしい。


 前の世界で友人が4つ年下の後輩と結婚し、数年後に尻に敷かれているのを見て、他の友人たちとバカにして笑っていたけど、今ならその気持ちがとても分かる。


「でも、やっぱり手紙を読んでから断らないとな……」


 そう思った俺は手紙の封を開けた。



---

 突然のお手紙ごめんなさい。

 貴方がこの街を離れてしまうと知り、居ても立ってもいられず、思わず筆を取りました。

 この想いをお伝えしたいと思いますので、夕刻五時に王都大聖堂へお越しくださいませ。

---



「うわー、大当たりだよ……」


 そう思いながら封筒の裏面と添え付けのメモを見ると……



---メモ1

 愛しのリュータス・エリアス様へ

---メモ2

 クリスくんへ。

 このお手紙をお父様へ渡してください。



「親父ィィィィ!!!」




「……というわけなんだ」


 部屋には俺、クレア、セフィル、エマの4人。

 さすがに、この場に父を同席させるわけにはいくまい。


「これ宛名が…書いてない…。ドジっ子……?」


「地属性クラスでやたら父さんを慕ってる子が居たから、間違いなくその子だと思う」


 それを聴いたセフィルがため息をついた。


「それにしてもすげーな……。親子揃って20以上も年下の娘に手を出すとか、罪深すぎて正直引くわ…」


「親子揃ってとか言うんじゃねえ!」


 俺とセフィルがやいのやいの言っている中、クレアはじっと手紙を眺めている。


「クリスくんはきっと…この手紙が自分宛だと勘違いした…と思う」


 何なのこの子! 勘が良すぎて怖いわ!

 だが内心を悟られると後が怖いので冷静に対処する。


「どちらかと言うと、どうやって断ろうか困ってたんだけどな…」


 その回答に満足したらしく、クレアは手紙を机に置いた。


「でも、これは彼女とクリスくんのお父様個人の問題ですし、私たちは見守るだけの方が良いと思うのですが……」


 さすが優等生のエマは委員長らしく模範的なコメントだ。


『バカね。こんな面白いイベントをスルーだなんて、遠足の日に一人だけ風邪で休む子みたいなものよ!』


「そういう人の古傷をえぐる例えは止めてさしあげろ」



「で、結局のところ、クリスはどうしたいんだ?」


 セフィルに問われたものの、なかなか悩ましい。


「どうしたいと言われてもよく分かんないんだよなぁ。父さんはクリスくん父であって、その人の色恋沙汰に俺が口出しして良いのかって問題もあるし」


「うーん、セフィルくんから話は聞いてたけど複雑だね……」


 4人の子供たちがため息をついた。



 色々と話し合いは難航したものの、結論としては、父の部屋のドアの隙間に手紙を差し込み、ノックして逃げる「ピンポンダッシュ作戦」に決定した。

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