表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/146

041:ちょっと一息 その2

~セフィル+エマのターン~


「それにしても、クリスくんの求める癒やしって何なのかなー?」


「アイツの場合、中身がおっさんだからな。周りに気ぃ使いすぎなんだよ」


 実は王都での事件の後、委員長にはクリスとクレアのことを一通り説明してある。

 聞いた直後は「ヒェー」みたいな頓狂とんきょうな声を出して驚いていたが、地下牢の一件でクレアが『甘ったれんじゃないわよ!』 といった勇ましい言葉を投げかけたり、委員長が錯乱さくらんして暴発させた高威力のサンドブラストを謎のシールドスキルで跳ね返したりと、明らかに桁外れの強さだったことを思い返して納得したようだ。


 特にクリスが特効薬ルナピースを手に入れてクレアを救うくだりを聞いている時の委員長はハンカチ片手に感涙していたが、俺自身もその話はカッコイイなチクショー! と思っている。


 一方で、俺が委員長を助けた後にサンダーブレードを振り回しながら戻った時は、クリスから「せめて最後まで格好つけろよ!」と文句を言われたので、自分もまだまだ修行が足りないと反省している……。


「クリスくんが入院して帰ってきたら全然別人みたいだなーって思ってたら本当に別人だなんて、世の中ビックリなことだらけだよー」


「もしかすると、クリスが俺たちと一緒に居るのは、赤ん坊の面倒を見るようなものなのかもな。俺たちに話を合わせるだけでも気疲れするのかもしれない」


「そうかなー? どちらかというとクリスくんって、あの性格が素っぽいんだけど」


 確かに、俺のサンダーブレードを見て目を輝かせながら興奮していた姿は、とても演技とは思えない。

 年齢的に俺の親父とあまり変わらないはずなのだが、もしかしてクリスが元々居た世界の大人は皆、子供っぽい性格なのだろうか?



 そんなこんなで、俺と委員長はリカナ商会にやってきた。


 と言っても別に買い物に来たわけではなく、クリスにバイトを休んでもらい、その代理で委員長に入ってもらったわけだ。

 俺は委員長と一緒に居られるし、クリスもしっかりと休息が取れる。


 きっと今頃はクレアと仲良くまったり過ごしている頃だろう。


「しかしお前まで嫁を連れて来るとは、全く春だねぇー」


「社長~~、俺にも、俺にも彼女を…彼女をぉぉ…」


 店主や出入り業者の兄ちゃんともすっかり顔馴染みだ。

 初めは俺をボウズ呼ばわりする無礼な奴らだと思っていたが、今となってはその呼び方に親しみを感じている。


「でもボウズは王子様なんだろ? 俺の店で働かなくてもカネには困らないだろうに」

 うっ…!!


「クリスの家に住まわせてもらってるので、少しくらいはお金を入れようか……と」


「おぉ! 偉いじゃねーか! 王族なんてモンはいけすかねーと思ってたが、やっぱボウズは違うなー! この国の将来は安泰だ!!」


 店主が俺の背中をバシバシ叩いてくるが、心が痛い……。


 すみません…ここで頂いたバイト代は全て借金の返済にてる予定です。

 さすがの俺も、5000万ボニーという途方もない金額には気が遠くなる。


「セフィルくん、ごめんね…。私も働くから…」


 俺の表情を見た委員長が察したのか、謝られてしまった。


「いや、いいんだ。お前のためなら、このくらい…」


「「???」」


 店主と出入り業者の兄ちゃんが不思議そうな顔をしていた。



 お昼過ぎ、いつものように店の手伝いをしていると、店の周りの通行人たちがざわつき始めた。


「誰かー! 手を貸してくれーっ!」


 声の聞こえた方を見ると、馬車の車輪が道の泥濘ぬかるみにはまっていた。

 大人達が集まって引き上げようとしているのだが、かなり苦戦しているようだ。


「あれならレベリングの魔法で道をならせば出られるかも?」


 委員長がトトトッと表に出て行ったので、俺も付いていく。

 そういえば王都での事件以来、委員長が魔法を使う姿を見ていないのだが、いきなりぶっつけ本番で大丈夫なのだろうか?


 なんといっても、委員長は常人の16倍もの魔力量なのだから…。


「おい、委員長! 手加減しr…」



「レベリング!」



 なんということでしょう! デコボコだった地面が、まるで漆喰しっくいを塗った壁のように綺麗に均されたではありませんか。

 しかも、それまで泥濘ぬかるみにはまっていた馬車の車輪が突如平坦な地面に乗り上げたため、引っ張っていた大人達は全員ひっくり返って、地面を見ながら目を白黒させている。


「あわわ…あわわわわ……」


 その当事者である委員長も立ちすくんでいる。


 ……これはマズイ!!

 俺は慌てて委員長の手を引っ張り、リカナ商会の建物に逃げ込んだ。


「どうしよう! セフィルくん! どうしよう!!」


 涙目で俺の胸に飛び込んできた委員長。

 ハァァ…このまま時間が止まってしまえば良いのに……じゃなくて!


「とにかく手加減の練習をしよう! ロザリィもバカみたいに魔力強いから、アイツに聞けばきっとコツとか教えてもらえるからさ!」

「うぅ……」


 正直、魔力を16分の1に絞って魔法を使うなんて想像したことも無かった。

 もしかしてクレアとロザリィは、ものすごく高度なことをしているのだろうか……?



 リカナ商会からの帰り道。


「魔法使うのが怖いよぅ……」


 あれから委員長はずっと落ち込んだままだ。

 何か委員長の気分を明るくできるモノは無いか?

 委員長の好きなモノ……好きなモノ……あれだ!!


「そうだ! 俺について来いよ!」

「きゃっ! えっ、何、何???」

 委員長の手を引いて俺は走り出した。



 数分後、俺たちは目的地に到着した。


「学校の花壇?」


「そう、お前の将来の夢を教えてもらった場所さっ」


 俺はここで委員長が夢を語る姿を見て本気で惚れたんだ。


「今度は手加減無しで思いっきりやっちまえ! スッキリするだろ?」


 俺がそう言うと、委員長が満開の笑顔になった。



「花よ花よ…」


 この魔法はどちらかというと「ネタ扱い」されている不憫なスキルだ。


「荒れた大地を癒したまえ…」


 でも、今の委員長の魔力なら…

 

「グロー!!!」


 委員長が手加減無しで放った魔法は花壇だけに留まらず、校庭の一部も巻き込んで花畑にしてしまった。


 一面を埋め尽くす黄色の花。


 もしかすると、委員長はこの花が好きなのかもしれない。

 正直な話、今までこの花にはそれほど興味が無かったけど……。

 今日から俺の一番好きな花は、コレで決まりだな!



~~



「エコール校長! 早く窓の外を見てください!!」


 ノックもせずに教員が部屋に飛び込んできた。


「あらあら、そんなに慌ててどうしたのかしら?」

「とにかく外を!!」


 席を立って外を眺めてみると……


「あらあら、たくさんの向日葵ヒマワリ。綺麗ですねぇ」


「そんな呑気のんきな!! いったい誰が……」


 慌てる教員を尻目に向日葵畑を眺めていると、二人の子供が楽しそうにはしゃいでいる姿が見えた。


「ふふふ…。良かったですね」


 リュータス君から話を聞いた時は少し心配でしたが、あんなにも楽しそうな笑顔ができるのだから、きっと大丈夫ですね。



 あの子達の未来がステキなものでありますように…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ