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034:追跡!

 カシャン…。


 地下牢の扉が開き、大人達がゾロゾロと入っていく。

 その中には俺が全力で体当たりをかましたシーズの姿もある。


「ん? アレは何だ??」


 兵士4人が、神輿みこしのように棒の付いた箱を抱えている。

 中身は何かの機材だろうか…。

 最後尾の兵士がドアを通ると、再びカシャン…と施錠の音がした。


 少し間をおいてから、俺たちも動き出した。


「よし、ロザリィやっちまえ」


『unlock!』


 ちょっと反則な妖精専用魔法で解錠成功。

 しかも音も立てずとか、高性能過ぎて怖いな……。


『クリスの家に初めて入った時も、この魔法で窓からチョチョイのチョイよ』


 そのせいで、振り向いた俺に全力のエルボーをくらってKOされたのはロザリィ自身なのだけど、それを指摘すると襲いかかってきそうなので黙っておこう。


「よし、行くぞ…」

『ちょっと待ちなさい』


 俺が進もうとすると、ロザリィが髪の毛を引っ張ってきた。

 何事かと思いきや、何かを詠唱している。


『slientwalk!』


 …何かが変わったようには見えない。


「今の何?」


『風属性の気配消しスキルの上位版ね。直接相手から姿を見られたり、大きな物音を立てなければ、感づかれずに相手を尾行できるわ』


 妖精スキルって、やたら隠密用のヤツが多すぎるような…。

 いっそのことアサシンにでも転職した方が良いんじゃないか?

 だが、いちいちロザリィを突っ込んでいたらターゲットを見失ってしまいそうなので、早く追いかけよう。



 牢屋と聞くと鉄格子をイメージしてしまうけど、さすがにこの世界の技術水準では、魔法によるアシストがあったとしても、貴重な鉄を大量に必要とするような檻を造ることは無いらしい。


 城の地下牢は、地面に穴を掘ってから壁や床に石を埋め込んで作られており、牢屋に出入りするドアだけは鉄製になっていた。

 木製のドアに鉄のフレームを付ける方が製造コストを安く出来そうだが、恐らく火属性の魔術師に破られるのを防ぐためにそうなっているのだろう。


 また、鉄のドアには上部の空気穴しか隙間が無く、中から外の様子を見ることもできない。

 silentwalkの効果も考えれば、これなら俺たちが誰かに見つかる心配は無さそうだ。


「奴ら、一番奥の独房に入ったぞ…俺たちも行こう」


 俺たちの声が周りに聞こえないようにアシストはしてもらっているものの、大きな音を立ててしまうとその時点でアウトなので、慎重に行動する。

 ゆっくりと近づいてドアの手前まで来たところで、ドア上部の空気穴から話し声が漏れていることに気づいたが、ボソボソ声で上手く聞き取れない。


 会話内容をちゃんと聞き取るには、空気穴に耳を近づけたいところだ。


「セフィル、俺を肩車してくれ」

「あいよっ」


 二人肩車でどうにか俺の顔が空気穴とほぼ同じ高さになり、中の様子もある程度見えるようになった。


「どうして、この国の未来をうれえただけで私は投獄され、処刑されねばならぬのだ!」


「我らの国に問題など無い。事を荒立てようとする悪を断罪するのみだ」


「馬鹿な! 実際この状況が大問題であろう! 人の命を何だと……」


『deepsleep..』


「おの…れ……。悪魔め…………」


 囚人はその場に崩れ落ちた。

 それから、独房の中で兵士達が必死に壁を押すと、ズズッ…と壁が動き、右奥から隠し扉が現れた。

 魔法やらカラクリを組み合わせてもっと複雑なギミックを用意しているものだとばかり思っていたが、想像以上にアナログな隠し扉だ。


 隠し扉に全員がゾロゾロと入っていったのを見届けて、俺は肩車から降りた。


「大人が集まって壁を手で押すと隠し扉が出てくる…みたいな強引すぎる仕掛だったよ。戻すときは隙間に手を入れて引っ張るのだと思うけど、もっと魔法でゴゴゴゴ動かすみたいなのをイメージしてたんだけどなぁ」


『そんなもんじゃない? 一人では開けられない、という仕組みがミソなんだろうし』


 うーむ、もうちょっとファンタジーらしく魔法で隠したり出来ないものか…

 まあ、そのおかげで容易に追跡できるのだけどね。


『unlock!』


 再びロザリィのスキルでドアを突破し、俺たちは実験場に侵入した。



 ドアの向こうは岩壁が剥き出しで、地下牢よりもさらに原始的な作りになっていた。


「さすがに牢屋の奥に隠し部屋を造るとなると、あまり凝ったものには出来ないのか。敵にはあまり強力な地属性魔法の使い手がいないのか」


『アンタにしては珍しい勘違いしてるわね…』

「?」


『確かに壁を凝ったつくりにするには大量の資材の搬入が必要になるでしょうし、隠し部屋の内装をこだわる意味が無いからこんな感じなんでしょうけど、地面を掘ったら土が出るのよ? そんなもん地下牢からせっせと土木工事みたいに運び出してたら怪しさ爆発よ』


「地面を掘るときに土が出なくなる…みたいな物理法則ガン無視のスキルは無かったはずだしな。となると…」


 と俺が発言したところでセフィルが口を開いた。


「地下牢の真上のどこかに土を運び出すための出入り口があるんじゃないか? …と思って、夜中にコッソリ城の周りを調べてた時に、バルコニーで困った顔をしていたお前に遭遇したんだよ」


 ああ、それで真夜中に外を彷徨うろついてたのか……。


「つーかお前、残土ざんどのコトに気づいてたのなら、最初から言えよ」


「いや、クリスのことだから最初から全部気づいているものだとばかり……」


 うーん、信頼してもらえるのは嬉しいけど、それが原因で伝達が上手く出来ないのは問題だなぁ。


「結局、周囲にそれらしきものは見当たらなかったよ。城の敷地外の建物に出入り口を造られてたら探しようが無いけど、そもそも城の周りは民間施設だらけだし、そこから大量の残土を運び出していたら、すげー目立つと思う」


『んで、私が思ってるコトなんだけど…。たぶん、この隠し部屋って城が建った時からあるんじゃないかしら?』


「……ああっ! そういうことか!!」


 この城が造られたのがどれくらい昔なのかは分からないが、この部屋は恐らく……


「緊急時に籠城して隠れるための部屋か…」


 セフィルも察したようだ。


「王だけ生きているなんて…滑稽こっけいだわ…」


 クレアがボソッと呟いたセリフにものすごく聞き覚えがあるのだけど、何だっけ…???


「でも、そんな場所で人体実験やるような連中、ますます許せねーな」


 セフィルの言葉に俺とクレアが頷くと、再び奥を目指して歩きだした。



~~



「ここ…は…?」


 何だかベッドがすごく揺れている。

 でも真っ暗で何も見えない…。


「おとうさ…ん」


 手を伸ばすと、ゴッと鈍い音がした。


「痛っ」


 私が声を出すと、周りからざわつきが聞こえてきた。


「おお、エマ…。起きてしまったのかい? もう少しの辛抱だからね~…」


『deepsleep..』



 またこの…声……だ…………。




 ひどく……眠い……………。

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