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034:ターゲットにダイレクトアタック!

 あれから数日が経ったものの、思いのほか情報が集まらない状況に、正直焦っていた俺は、ついに地下牢で張り込むことにした。


 さすがにクレアと一緒だと「見学でーす」と言っても説得力が無さ過ぎるので今まで近づかなかったが、そもそも地下牢に秘密部屋への入り口があるのだから、ここで見張るのが一番の近道だろう。


 運良く地下通路に掃除用具入れの木箱があったので、俺はその中に身を潜めている。

 子供の体格ですらギリギリの大きさなので人が入っているようには見えないし、万が一バレたとしても「かくれんぼ」とか適当な理由で誤魔化してしまえば良いだろう。

 まったくもって、子供の身体というのは諜報活動に大変便利である。


 そんなコトを考えていると、カツッカツッ…と近づいてくる靴音が聞こえてきた。

 木箱の隙間からそっと覗いてみると、衛兵らしき男の姿が見えた。


「おーい!」


 男が声を上げると、牢屋の奥からタッタッタ…と小走りで誰かがやってきた。


「どうしたー?」


「バロン騎士長から伝達だ。例の政治犯の死刑執行を明後日の夜10時に決定したんだそうな」


 なっ!?


「あー、やっぱり死刑なのか…。現体制の批判は逆賊と見なされてもしかたないけど、それでも死刑は…ちょっと酷すぎると思わねえ?」


「バカ! 聞かれたらお前もヤバいんだぞ」 


「いっけねぇ…くわばらくわばら…」


「んじゃ、準備よろしくなー」


 そう言って男は去っていった。

 ……って、さっき「準備よろしく」と言ったか!?


 ということは、今の男は関係者じゃないか!!


 周りに誰も居なくなったことを確認し、急いで男を追跡する。

 地下から1Fに上がってさっきの男を捜すと、ちょうど中央の噴水近くに居た!


 歩いている男の向かって…どりゃああああ!!!


 全力で男に体当たりした俺は、その反動で吹っ飛んで廊下に倒れる。


「いってぇぇぇ!!!」


 この野郎、服の下に鎖帷子くさりかたびらか何か着込んでやがる!

 まるでデコボコしたコンクリートに体当たりしたかのような痛みに悶絶する俺。

 この痛みはヤバイ……。

 後でクレアにヒールをかけてもらわなきゃ……。


「き、君! 大丈夫か!」


 慌てて男が駆け寄ってきた。


「ごめんなさい、急いでて…痛たたっ……」


 結局、俺は男に連れられて救護室に行き、看護師さんにヒールしてもらいました。

 うーむ、情けない……。


「ありがとうおじさん」


「おじさん…おじさんかー! 来月三十だけど、お兄さんと呼んでくれないかな!」


 何を女々しいこと言ってやがる。

 まあ、俺も三十過ぎて保育園で営業してた時にチビッ子達にそう呼ばれて愕然としたけどさ…。


「ありがとうおにーさん。えーっと…あの、僕はクリスって言います」


「おお、そういえば名乗って無かったな。俺の名前はシーズだ。この城の衛兵をやっているよ」


 うっし、犯人に繋がるヤツの個人情報ゲット…!



「一部始終見てたけど、前職は詐欺師でもやってたのか…?」


 セフィルが呆れながら俺に話しかけてきた。


「詐欺師とは失礼な。あそこでアイツの名前を聞き出す最良の方法が体当たりだと判断しただけだよ。もし俺が大人の姿だったらヤツの隣を走り抜けながら高価な品をポケットから落として、拾ってくれたお礼に夜に一杯誘って、酒場で聞き出すところだ」


「きたねええ! 大人きたねええ!!」


 ターゲットの個人情報を手に入れるために手段なんぞ選んでられるか!


「なるほど…勉強になった…」


 なんだか、クレアに余計な知識を付けてしまった気がするなぁ。

 それはさておき、ついに有力情報を掴んだのだ、これを活用しない手はない。


「死刑と称した人体実験は2日後。指示役はバロンというヤツで、さらに伝言役にシーズという男がいるコトが分かった」


 俺の言葉に対して、セフィルが少し不安げな顔をしている。


「バロン騎士長は親父の懐刀だよ…。国王の側近が思いきり反逆行為をしている証拠を見つけてしまったわけだし、これは大変なことになったな…」


 セフィルの言葉に場が静まりかえる。

 しかし、ここでじっとしておくわけには行かないだろう。


「またと無いこのチャンスを活かすべく、ここは攻めるべきだと思う」


 恐らく死刑と称した人体実験を行う時には関係者が集まってくるはずなので、バレないように尾行するためのアイデアを皆に伝えてみた。


「多少不安はあるが、悪くないと思う。ただ、そのためには多種多様のスキルを使う必要があるようだけど、俺たちは3人それぞれ雷・地・聖だろ? 他に誰か協力者が居るのか?」


 セフィルに言われて、首を傾げる二人。

 ……あっ! そうか!!


「そういえばセフィルに説明して無かったな」

「?」


『妖精は蓄積した知識とスキルを全て次の世代に継承するから、新たに生まれた個体は歴代のスキルが全部使えるのよ。だから、さっきクリスが言ってた必要スキルは全部私一人でやれるわ』


 ……しばらく固まるセフィル。

 10秒くらいでハッ!!?と察した様子。


「てめえ! そんなヤツに俺が勝てるわけねーじゃねえか!! 何が歴代のスキルが全部使えるだバカ野郎!」


 その罵声がかえって心地よいのか、ロザリィはニヤニヤしながらセフィルの周りを小躍りしている。


「まあいい。これでスキル問題も解決。後は作戦を成功させるのみだ!」

「「『おー!』」」



~~



「お父さん…?」


「こっちにおいで、エマ…」


 父から手招きをされ、ベッドから起きた私は、身体のあちこちが痛むことに気づく。


「痛っ!」


「おお可哀想に…。だが、その苦しみもこれで終わる。私に付いておいで…」


 ベッドから降りて、寝間着姿のまま父に連れられて玄関に出ると、大人の人たちがたくさん居た。


「この方達は…?」


「お前の病気を治してくれるお医者さんだよ…」


 お医者さん…にはとても見えない。

 白衣は着ているけども、これはまるで何かの実験を…


『deepsleep..』


 ………な…に…。


『これで彼女はしばらく目を覚まさないでしょう。起きそうになる都度に昏睡させますので、馬車の揺れで苦しむこともありません』


「ああ、助かる」


 ……お…とうさ…。


「もう大丈夫だよ…」


 ………。



「これで全て終わる…」

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