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030:もしもヒロインがスクールカーストに挑んだら

 ここは聖属性クラス。

 留学先ですらクリスくんと同じクラスになれない自分の運の悪さにはつくづく嫌になる。

 それに、聖属性クラスはかなりヘンなのです。


 と言うのも……


 女女女女女女女

 女女女男女女女

 女女女女女女女


 これが私のクラスメイトです。

 …えーっと、何これ? 罰ゲーム???


『中心にいるヤツがキングで、他に群れてる女連中からクイーンを選出するためのスクールカーストが形成されてるっぽいわね…。頭悪すぎて吐き気がするわ…』


 ロザリィさんの発言と知識を元に考察……ああ、なるほど。

 私の一番嫌いなタイプの仕組みだということは理解できた。


「ようこそボクの教室に!」


 うーわ、この男、悪びれることなく「ボクの教室」とか言いましたよ…。

 この悪趣味っぷりには、閉口するしかない。

 周りの女どもがキャー!とか言ってるけど、アレのどこが良いの?


「さあ、君もボクのハーレムに!」


 ハーレムって言い切っちゃったよ!!

 あー、もう…面倒くさいなぁ。


「生理的に無理なんで…遠慮します」


 それからが凄かった。

 ポカーンと放心状態のハーレム男を放置したまま授業が始まったのだけど、周りの女子連中から突き刺さる視線の凄いこと凄いこと。

 敵意…むしろ殺意とも呼べるコレだけでリソースが削られているかのような錯覚すら覚える。


『いきなり宣戦布告とは流石さすがね。見直したわ』

「面倒くさいなぁ…」



「ちょっとクレアさん、よろしくて?」


 うわー、やっぱり来たー!

 これがロザリィさんの知識にあった「新人イビリ」ですかね。

 声をかけてきた人の雰囲気から察するに、カーストの上位者だろう。


「はい…なんでしょう?」


「キング様が貴女のような庶民を気にかけるだけでも光栄なことだというのに、それを生理的に無理とはどういうことなのでしょう?」


 生理的に無理なものは無理なんですけど…。

 というかあの男、もしかして本当にキングって名前なの…?

 それとも女子にそう呼ばせてるだけとしたら、かなりイタイ人だ。


「権力を行使して…女子をはべらせる軟弱男は…趣味じゃない」


 向こうの方でガターン!と音がしたけど、無視しておこう。


「ななななっ!?」


「それに…交際相手が居るので…他の男にびる気は無いです」


 周りからエエエェェェ…みたいな声が聞こえる。

 どういう意味だよ…。

 こんなチンチクリンに彼氏が居たらおかしいとでも言いたいのか。


「しょ……」

「しょ…?」


「勝負ですわああああああああ!!!」



「えーと…勝負と言われましても…困るのですが。殴り合い…?」


「そんな野蛮なことはしませんわ! 学園生らしく魔法で勝負ですわ!」



『その話乗った! 全力で叩きのめしてあげるわっ!!』



 突然ロザリィさんがやる気満々に…。

 こういうノリは正直苦手なのでお任せします。


「あ、貴女! いきなり雰囲気が変わりましたわね!!?」


『そう? まあ気のせいよ気のせい。さあ、ちゃっちゃとやっちゃいましょ! ホーリーライトで撃ち合い? それとも悪霊の群れに飛び込んでホーリーシールドの強度対決も楽しそうよね!』


「え…え…え…!?」


 カーストさん(仮名)も超好戦的な私…というかロザリィさんの姿に困惑している様子。

 大丈夫だと思うけど、あまり私の身体で無理しないでくださいね。



「おーいクレアー、何やってんだー?」



 その声にさらに周りがざわつく。


『あらセフィル王子ごきげんよう。卒業生様がどうしてこちらに?』


「ごきげんようじゃねーよ。お前らの様子を見に来たんだけど、何だよこの殺伐ムードは? クリスは思いっきり営業スマイルで場に合わせてんのに、なんでお前が真っ先にケンカ買ってんだよ」


『買ったんじゃなくて売ったのよ?』


「なおさら悪いわ! クレアが付いていながら何でこんなことに……」


『ケンカ売ったのはこの子自身よ?』


「…マジか?」


 たまれなくなった私は思わず目を反らす。


「クリスの将来が少し心配になってきたよ俺…」

「失礼な…」


 突然繰り広げられたセフィル王子と庶民の小娘の漫才に、周りからは「どういう関係?」「まさか交際相手って…」などの言葉が聞こえてくるけど、無視無視。


「まあいいや。そこのお前」

「はっ、はひぃ!」


 急にセフィルくんに声をかけられて驚いたためか、変な声を出すカーストさん。

 やっぱり、普通の方はセフィルくんに声をかけられると緊張するのですね。


「どんな勝負するかは知らないけど、そいつバカみたいに強いから、死なないように気をつけてな?」


「え……」


 サーッと血の気が引くカーストさん。


『バカとは失礼ね。この小娘より先にアンタに一発かましておこうかしら…』


「バカ! やめろ! 俺はもうお前とケンカする気はねーよ!」


 さらに周りのざわつきが激しくなる。

 セフィルくんがうっかり「もうお前とケンカする気は…」とか言っちゃったので、それはつまり、私が過去にセフィルくんとケンカしたことがあるという意味になってしまうわけです。


 そんなセフィルくんに「死なないように気をつけて」と言わしめるほどの危険人物に対して挑んでしまった哀れな小娘…。

 まさに蛇に睨まれた蛙さん。


「そんな…わたくしは…ぅぅ…」


 いや、もう涙ポロポロ流して泣かれちゃってるんですけど…。

 さすがに可哀想になってきたし、助け船を出してあげよう。


「あの…セフィルくんは…死なないようにとか物騒なこと言ってるけど…死ぬようなことは…しないから…」


<意訳>

  私、そんな酷いことしないよ。仲良くしようよ。


<周囲の解釈>

  死なないように時間をかけてボコってやる。



 そして私は留学初日から「クラスで最も力を持つ女子を一睨ひとにらみで倒した」だの「デッドリーアイズドラゴン」だの不名誉な称号を頂いたのでした。

 

…どうしてこんなことにぃぃぃ!!!?

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