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029:クリスinマジックアカデミー

「うははは、なかなか似合ってるじゃないか!」


 ケラケラと笑うセフィルの前には、典型的なトンガリ帽子な魔法使いスタイルの俺と、ちょっとサイズが大きくて手指が隠れるくらい袖がブカブカなプリーストの格好をしたクレアの姿。


 今朝、俺たちはエコール校長から預かった手紙を届けるため、城の敷地内に隣接されたリオン魔法学園に訪問した。

 手紙には俺とクレアを短期留学させてほしいといった内容が書かれていたそうで、学園長先生が快く承諾してくれたのは良いのだけど、ここは俺たちの通っている田舎の学校とは違って全生徒が制服着用な、貴族御用達の教育機関なのであった。


「うう…ぶかぶか…。ただでさえ背が低いのに…さらに子供っぽく…」


「さすがに短期留学でオーダーメイドは無理だからなぁ。でもまあ、クレアのプリースト姿というのも…可愛いから、大丈夫だ!」


 柄にもないことを言おうとしたせいで、照れてしまう。


「か、可愛い…! そっか…えへへ」


「コラそこ、イチャイチャしなーい! 失恋したばかりの俺には目の毒過ぎるんだよ!」



「そういやセフィルって、ずっと遠征してて全く城に居なかったみたいだけど、勉強はどうしてたんだ? 王子様の場合は専属教師を雇うのだと思うけど」


「いや、俺はちゃんと学園に通ってたよ?」


「通ってた?」


「ああ、俺は飛び級だったから、とっくに卒業済みなんだよ。じゃないと親父が遠征なんて許すものか」


 ……………………。


「『えええええっ!?』」


 俺とロザリィの叫び声が響いた。


「なんでそこまで驚くんだよ! そもそもウチは由緒正しき王族家だぞ? 15代も国を維持し続けられる一族の中で俺だけバカなわけがあるか!」


『バカと天才は…』

「紙一重…」


「よーし、お前ら今すぐ不敬罪ふけいざいでたたっ切ってやる!!」


 やいのやいの……!

 そんなこんなで子供三人騒いでいると、一人の男が近づいて来た。


「そこの者達! 城内で騒ぐのはやめなサイ!!」

 

 その声の方を向くと、見るからに「私は偉い!」という風貌の男がいた。

 首の周りにシャンプーハットみたいなヤツ…ラーフル? いや、ラーフルは黒板消しだ……ともかく、名前が思い出せないけどそんな感じのモノを巻いてある、見るからにお偉いさんだ。


「セフィル王子殿下、いくら何でも騒がしすぎませんかネェ?」


 嫌みったらしい言い方から、セフィルのことを快く思っていないのは、火を見るより明らかだな。


「これはこれはネブラ外務大臣殿。なあに、幼子おさなごたわむれとして大目に見てくれ。仲の良い 友! 人! たちと居るとつい話が盛り上がってしまってな!」


「ぐっ。まあ良いでしょウ。デスが! 大声で話す時は部屋に戻られることをお勧めしますがネエエ!」


 そう言ってきびすを返して立ち去る。


『もうアレが黒幕で良いんじゃない? 試しに私の対悪魔用スキルぶっ放して消滅したら当たり、悶え苦しんで死んだらハズレで良いわよね』


「よくねーよ! つーか、なんで対悪魔用なのに人にダメージ与えてんだよ。…それにしても、あのおっさん、やたらセフィルの事を思いきり目の敵にしてたけど、なんなんだ?」


「ああ、あやつは性格が悪すぎて、あの歳で独り身かつ、ぼっちなんだ。俺に偉そうなことを言う都度にぼっちネタでイジり続けたら、完全に敵対関係になってしまった」


『アンタ鬼ね……』



 そんなこんなで短期留学初日ですよ!

 この学園は属性ごとにクラスも学科も分かれる少人数制らしく、俺は地属性専門クラスで学ぶことになった。


 つまり聖属性のクレアは……


「またクリスくんと…違うクラス…。うぅ…がっくし…」


 異世界学園モノの王道たる「同じクラスにメインヒロイン」を全く実現出来ないクレアの不憫ふびんぷりったら……。


「まあ、ココは魔法学科オンリーで午前だけらしいし、昼からは一緒に居られるから頑張ろうぜっ」


「うん…分かった…頑張る…!」



 というわけで、初日の授業が終わりました。

 いやはや、さすが王家御用達なだけあって、超ハイレベルだ。


 俺たちの通っている学校の場合、午後の魔法実習は部活の自主練みたいなもので、配布されたテキストを基に用途やアレンジを探っていく「想像力重視タイプ」だった。

 一方こちらはその真逆の「超・理論タイプ」で、詠唱速度と威力の関係性から最も高効率な詠唱方法を探ったり、王都の地図上で侵略者の侵攻ルートをシミュレーションして撃退するプランを練ったりと、思いっきり戦争や首都防衛で使う想定の内容だったりする。


 でも、魔法に対して強い憧れのある俺にとって「コレジャナイ感」がヒドい。

 試しにレベリング(地均し)を発動する際に、意図して思考を乱しながら発動すれば道を崩せる~…みたいな話を振ってみたけど、あまりにもランダム要素が強すぎてダメなんだそうだ。

 地属性魔法は「便利な万能魔法」だからこそ、理論的に使うとますます面白味が無くなってしまうのだけどなぁ…。


「それにしてもクリスくんはなかなか筋がいい。ほぼ独学でそれだけ地属性の特性を理解しているとは驚きだよ」


 まあ転生前にハマってたMMORPGで効率厨だったんで…。


「何故かサンドブラストを修得してるのが不思議なのだけど、何のために覚えたんだい? 相手を殺傷せずに視力を奪うための魔法だし、普通は野生動物を狩猟するハンター職が取るんだけど…」


 生地のダメージ加工のためとは言えないなぁ。

 って、サンドブラストって目潰し用だったのか。知らなかったよ…。


「クリスくんはリュータス様の御子息なのでしょう? 貴方のお父様って素敵ですわね…」


 えーっと、歳の差がありすぎると色々大変ですよ?

 あと、幼馴染みとか同級生が義母になっちゃうシチュエーションの作品は、俺の好みじゃないので結構です。


 ……とまあ、こんな感じである。

 はてさて、クレアは大丈夫だろうか?

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