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027:ワンダースリー再び!

「お久しぶりです新川さん、ノーブさん、井上さん」


 俺の挨拶に修行さんだけが「???」みたいな反応。


「ああ、そういや俺、名字言ってなかったっけ? あずまってんだ。アズマノブユキ。まあ、今まで通り下の名前で呼んでくれても全然良いんだけどな」


 そんな会話をしていると、井上さんがキョロキョロしている。


「どうしたイーノ?」


「えっとね。ロザリィちゃんがいないのー」


 あー、やっぱり指摘されるよねぇ。


「ロザリィを知ってるってことは、この3人も事情を知っているのか!?」


 セフィルが新川さん達3名を見て驚いている。

 あー、話をまとめるのにめっちゃ苦労しそうだなぁ。


「まあ細かいことは私たちの泊まっている宿で話をすると良いだろう。付いて来たまえ」


 新川さんが助け船を出してくれた。

 ナイスだ。



 新川さんの宿に着いた俺たちはそれぞれ挨拶を交わした。


「どこかで見た顔だとは思っていましたが、まさか本当にセフィル王子殿下だったとは…。お会いできて光栄です」


「そんなに堅苦しい挨拶はしなくていい。お忍びみたいなものだしな」


 新川さんに対してラフな応対で良いと受け答えるセフィル。

 前ならそんなこと絶対言わなかっただろうに、コイツも変わったよなぁ。

 でも、それを本人に言うと恥ずかしがって暴れそうなので黙っておこう。


「クリスくんが、たすけたいヒトっていってたのは、あなたなのねー、おなまえはー? かわいいねー、ちっちゃいねー。ギューーー。」


「クレアと言います…。ちっちゃい…ちっちゃい…か…」


 井上さんにギューっとされてるクレア。

 あれはたぶん、井上さんと自分の体型を比べて、ショックを受けている顔だなー。

 クレアは子供なのだからそこまで気にしなくて良いと思うのだけど、乙女心は複雑なのだろう。


「そういえば、そちらの妖精たちも姿が見えないようですが?」


「君のような勘のいいガキは……」


「いや、そのネタはもう良いですって」


 ちぇー、とか言いながら新川さんは改めて口を開いた。


「ウチの妖精達は実験室ラボでテストの真っ最中さ。終わり次第、ひとっ飛びで来るだろう」


『あの子たち、ホントに監視任務を何だと思っているのかしら……』


 井上さんの胸の中で、唐突に口調が変わったクレアの姿に3人が驚く。


「なんだか面白いことになってるようだね」


 例に漏れず、新川さんが真っ先に状況を察したようだ。



「なるほど、まさか妖精にそんな役割があったとはね…」


「でも俺たちの代わりに死ぬための捨て駒とか、気に食わねえなぁ」


「わたし、ちーちゃんがいなくなるの、いやー」


『うんうん、妖精の不遇っぷりを知ってもらえただけでも満足よっ。アナタたちとは美味い酒が飲めそうね!』


「それにしても、どうしてセフィル王子が渡り人のことを知り、しかもクリスくん達と一緒にいるんだい? 君たちの接点が全然分からないんだけど」


 ……これの回答には非常に困る。

 と言うのも、新川さん達3人はかつて王立医学研究所のスタッフであり、リソースリークの特効薬ルナピースの開発者でもある。

 セフィルがこれから戦わなければならない相手、つまりリソース抽出実験を行っている連中と、この3人が繋がっている可能性は否定できない。


 下手すると、この3人が「ラスボス」である危険性すらあるのだ。


『………』


 ロザリィもそのリスクを懸念し、返答に困っている様子。

 どうすればいい…どうすれば……。


「我が城で秘密裏に人体実験をやってるバカ共が居るから、その野望を阻止するためだ」


「『バカはお前だ!!!』」



「わはははー、私たちが黒幕説か! そりゃいいなー。悪役というのも憧れるねー。私は子供の頃、特撮モノではいつも怪獣を応援してたよ!」


「ま、そこで警戒するのは正しいわな。下手に情報を漏らすと王子の命に関わるだろうし」


「じょうほうろうえいって、こわいよねー」


 幸いにもお三方は黒幕ではなかったようだ。


「セフィルは他の場所でこんな感じにうっかり漏らしてないよな…」


 俺のジト目に後ずさりするセフィル。


「ば、バカなこと言うな! 俺はお前たちを信用してるから、この3人も大丈夫だと思って……だな!」


 うーん、セフィルがちょっと涙目になってしまった。

 そろそろフォローしてやるかなぁ……と思っていると、井上さんがセフィルに近づいた。


「このこ、かわいいねー。おもちかえりしたいなー。ギューーーー」


 井上さんがセフィルをギューってしてしまった。

 なるほど、この人はちっちゃい子が好きなんだなぁ…。


「ぶぶぶ、無礼者! やめろっ!」


 やめろと騒ぐセフィルだが、その顔は照れながらも満更ではない様子。


「あのおっぱいは…凄い…ね」


 クレアは…井上さんにずっと羨望せんぼうの眼差しを向けていた。



「新川さんたちはどうして王都から離れてこんな遠くに?」


「ふっふっふ、やっと聞いてくれたね。ついに例の爆薬が完成してね。その実証実験をバレル炭坑でやろうと思うんだ」


 それを聞いたクレアが一瞬ビクッと震える。


「我ながらすごいペースで開発が進んだよ! あの時に君から譲ってもらった月の石のおかげで、かなり大量のルナピースが精製出来そうなのだけど、やはり供給が止まったままではいつか枯渇してしまう。それに、あの炭坑が使えないままというのもね。その解決のために国から開発援助金が出ているし、それに報わねばならんよ」


「あの……!」


「どうしたんだい?」


「そこに、私の…両親が居るはずなので…できれば! できればで良いので…よろしくお願いします…」


 新川さんが一瞬、目を見開き、それから優しく微笑んだ。


「ああ、わかった。その時は連絡するよ」


 残念ながらこの世界にはDNA判定技術は無い。

 生死判定はリソース検出魔法で可能だが、遺体から身元を判定するには所持品から判断するしかない。

 両親がそういった所持品を身につけているかは分からないが、もしも特定できたら教えてほしい……そう言いたいのだ。

 両親の死を受け入れるには若すぎると思っていたが、俺が思う以上に彼女は未来に向かって生きようと精一杯頑張っている。


「偉いな……」


 頭をポンポンと軽く撫でると、クレアは笑顔になった。



 翌日。


「それじゃクリスくん、また王都で」


「ええ、実験が成功することを祈ってます」


 新川さんたちと別れの挨拶を済ませ、馬車は出発した。

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