025:秘めた想い
出発前日の夜。
隣のベッドではスースーと寝息を立ててクリスくんが寝ています。
「何だか、すごいことになっちゃったねぇ」
『まさかあのポンコツ王子が"悪意"に繋がりそうなネタを持ってきてくれるなんて、想定外だったわ』
「もう、セフィルくんをポンコツとか言っちゃダメだよー」
ちなみにこの会話はロザリィさんと頭の中で行われています。
じゃないと、クリスくんが起きちゃうからね。
初めは戸惑いもあったけど、幸い「考えているコト」まではロザリィさんには伝わらないようで、思ったよりも不自由はしていません。
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「それにしても、セフィルくんの猛アタックには驚きだよねー」
『あの地味女に惚れるなんて、王族の趣味は分かんないわねぇ。自分と正反対の相手に惚れるとは言うけど、つまり自分が煌びやかとでも言いたいのかしら…』
「そ、そこまで他意は無いと思うんだけど…」
でも、その委員長さんは既に一週間以上も学校を休んでいる。
御見舞に行こうと思ったのだけど、大きな街の病院に移っちゃったらしくて結局会えずじまい。
私たちが王都から帰ってくる頃には、元気になっていると良いなぁ。
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『ところでアンタ、いつまで不思議ちゃんのキャラを続けるワケ?』
「うっ…!」
なかなか痛いところを突かれてしまった。
確かに自分は内気過ぎて、初対面の相手に対しては警戒して冷淡な喋り方になってしまうけど、今更クリスくん相手に警戒なんてするわけもなく…。
「キャラクター性というものがありまして…。その…いきなり喋り方を変えて、クリスくんが受け入れてくれるのかと……」
『何言ってんの! アンタたちは生死を共にするレベルで相思相愛の関係でしょ! その程度のコトで仲違いするわけあるまいし、せっかくだから思い切って話してみなさいよ!』
「そ、相思相愛! そっか…そうだよね! 明日頑張ってみようかな! …それにしても、相思相愛かー…へへへ」
『言葉に興奮してないで、さっさと寝なさい。明日は早いんだから!』
えーーー、さんざん煽るだけ煽ったくせに、一方的に話をぶった切られた…。
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ツギノヒー。
さて、一足先に台所で朝食を準備しています。
クリスくんはいつも二番目に起きて来るので、顔が見えたら勝負です!
「あっふ…おはようー」
欠伸しながらクリスくんが出てきた! よしっ、今だっ!
「おはよークリスくんっ。朝ご飯の準備できてるから、席についてねっ。ところで、お城ってどんなところだろうね? 私、この街から出るのは初めてだから、ドキドキしてるんだ~。王都に着いたら一緒に街を見て回ろうねっ」
そして全力の笑顔!(キラッ☆)
「……… ・◇・ ………」
クリスくんが豆鉄砲くらったハトみたいな顔で固まってる!?
これはいったい、どういう反応なのだろう…???
「…………ふぅ。流石にびっくりしたよ。今朝のロザリィのイタズラはハイレベルだな」
「!!」
ガーーーーーン…そ、そんな…。
ガクッ…。
「どうしたっ!?」
『やっぱ慣れないコトはするもんじゃないわねぇ…』




