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012:少女の想い

 一人夜中に目を覚ました私は、薄暗い部屋の中でぼうっと天井を眺めていた。



「俺が絶対何とかしてやる! お前の病気も治してやる! 俺がお前を助けてやる!」



 思い出すだけでドキドキして、目が冴えてしまう。

 パパとママが死んでしまったコトが本当に辛くて、今でも時々思い出して泣いてしまうのだけど、あの男の子の言葉のおかげでどうにか頑張れる気がする。


 最近ずっと会えなくて寂しいけど、看護師おねえさん曰く「最近、この窓の下の道ですごくいっぱい馬車が走ってるのは、全部クリスくんが頑張ったからなんだって!」とのこと。


「それもぜんぶ、君を助けるためなんだよ! 妬けちゃうよねぇ~」


 いざ他の人から言われるとすごく照れてしまう。



………

……



患者クランケの状況を教えろ!」


「近所に住む10歳の男の子だ! 近くの橋から落ちて頭部を強く打ったらしいから首をやっちまってるかもしれん。慎重に動かせよ」


「息はあるみたい。少し出血してるけど傷は浅そう。でも意識が戻るかどうか…」


「教会に連絡はしたか!? バカか! 急いで呼んでこい!!」


 下の階から大人達の騒ぐ声が聞こえる。

 階段の手すりに掴まって隙間から覗くと、担架で男の子が運び込まれているのが見えた。

 それからプリーストのおねえさんがバタバタと走って治療室に入っていくと…


「神の祝福を…ヒール!!」


 窓から眩い光が溢れた後、おねえさんが会釈をして部屋から出て行った。



 しばらくしてお医者さんや看護師さん達が男の子を部屋に運んできた。

 茶色い癖っ毛の髪型に加え、長いまつげも印象的で、ぱっと見はまるで女の子のよう。

 寝言で「エビス…」とか「ニューサツ…」「クライアントガ…」などよく分からない言葉を呟いているが、どれも意味が分からない。


 この子は外国人なのだろうか?


 すごく興味がある。


 目覚めたら話かけてみよう。


 でも、変な子だと思われないかな……?


 人と話すのは苦手だし、きっとおかしなコトを言ってしまうかも。


 嫌われないかな……。


「あら、クレアちゃんはあの子にご関心?」


 いつの間にか看護師さんが私の横に立っていたらしく、私を見てニヤリと笑う。

 顔を真っ赤にした私は首を左右に振るけど、クスクスと笑われてしまった。

 恥ずかしい…。


「ここ…は……?」


 向かいのベッドの男の子がムクリと起きた。


「クリスくん!! 良かった! 目が覚めたのね!! ちょっと先生呼んでくるわ!!」


 バタバタバターッ!と看護師さんが病室を出て行った。


「くぉらティカート! 院内で走るなと何度言ったら!!」

「ゴメンおとーさん! でもでもあの子が!」

「でっけぇ声出すな! 聞こえとるわ!!」


 院長先生と看護師さんの騒ぎ声に病室の皆が笑っている中、男の子は自分の手を見つめたり、天井を見たり窓から空を見たりと落ち着かない様子。

 何かを探しているのだろうか…?


「やはり……夢じゃないのか……」


 すごく大人びた喋り方にドキリとしたが、すぐにやってきた院長先生と看護師さんに話しかけられると、普通に喋っていた。

 さっきのあれは何だったのだろう?

 気になるなぁ…ジー…。


 あ、男の子と目が合ってしまった…。

 でもいきなり目を逸らすのも失礼かもしれない。

 どうしたものか……。


「な、何か用かな…?」


 え、用!? 何、何を話せばいいんだろう…えーっとえーっと…。


「頭に包帯グルグル…」

 私、何言ってるのー!?


「ああ、川に落っこちてケガしちゃってね」


「イタイイタイ?」


「いや、もう大丈夫だよ」


「よかった」


 あまり男の子と喋ったことが無いから、何を喋っていいか分からない!

 うーんうーん…。

 あっ! まだ私、自分の名前を名乗ってない!


「クレア」

「???」


 私、クレアって言います、って言えばいいのに何よ「クレア」って!

 男の子、すごく困ってるよ!!


「私の名前」


「ああ、なるほど。俺はクリスだよ」


「似てるね」

 似てないよ!!

 クリスくん、すごく苦笑いしてるよ!!



……

………



「ふふっ………」


 思わず思い出し笑いをしてしまった。


 偶然、病室でお向かいさんになった男の子。

 私が話しかけても嫌な顔ひとつせずに返してくれた男の子。

 私のピンチに駆けつけてきて、手をさしのべてくれた男の子。

 きっと大丈夫、だから私も頑張る………!


 もしも病気が治ったら、一生かけてこの恩を返そう。

 強く決心し、私は目を閉じた。



「それじゃ、おやすみなさい」


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