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118:南の大陸へ

 唐突にワルケリアナのあだ名を付けることになってしまった俺達だったが、まずは先方クレアが挙手した。


「はい、そこの不思議ちゃん!」


 お、ワルケリアナはクレアが不思議ちゃんだというコトを見事に言い当てた!

 ……って、そうじゃなくて。


「悪…蹴り…穴…」


「この子、なんだかロクでも無い名前付けてきそうだから却下!!!」


「残念…」


 獣人の勘が何かを察したのか、クレアの案は発表前にお蔵入りしてしまった。


「そこのイケメンプリンス、君のセンスはどうかな?」


「その呼び方はやめてくれ……もう、適当にアナとかで良いんじゃねーの?」


 セフィルが本気で嫌そうな顔のまま適当に答えた。


『どっかの雪の女王みたいな名前ね』


 ちなみに女王の名前はアナじゃねーからな。

 というか、何でロザリィがそれを知ってるのか突っ込みたいところだけど、余計話がややこしくなりそうなのでスルーした。

 だが意外としっくり来たらしく、ワルケリアナはちょっと満足げだ。


「悪くないけど他の意見も参考にしないとね。次、そこの地味子ちゃん!」


「えええっ、それ私の事っ!? 地味……そんなに地味かなあっ!!?」


 かつて薄幸の少女枠だったはずのエマは、ぱっと出のケモミミ娘の一言で地味子に降格。

 何だかメインヒロインにボディブローしそうな響きなので、個人的にその呼び方はやめてもらいたいところである。


 だが、元クラス委員長として、必死に考え、導き出した答えは……!!


「フェネコちゃん!」


「「「「『ナンデェーーーー!!!?』」」」」


 エマのネーミングセンスが致命的という、どうでもいい新事実が明らかになったものの、当然不採用である。

 将来的にセフィルとエマの子供の名付けは、是非ともセフィル主導でやって頂きたい。


「もう何も期待しないけど、将来嫁の尻に敷かれそうな雰囲気漂わせてるそこの少年、君の案を聞かせてくれ」


「正直それシャレになってないんで勘弁してくれません?」


 将来どころか現時点で既に頭が上がらないのはさておき、そろそろこの話題に結論をだしおきたいところだ。


「アナはロザリィが文句あるみたいだし、ちょっともじってアンナとかどうよ?」


 イメージは竜退治RPG2作目で「ふっかつのじゅもん」の歌を歌ってたあの人です。

 もしくは、ピンク髪の魔法使いのお嬢さんとか。


「むむ、アナも悪くないけどこれも捨てがたいな」


 どうやら満足頂けたらしい。

 しばらく腕を組みながら考えた結果……


「よし、アンナで行こう。少し可愛らしすぎる気もするが響きが気に入った」


「ああ、それじゃ改めてよろしくなアンナ」



・・



「さて、これから俺達は海を越えてエレク大陸へ入る」


「わーい、またお船だ~」


「うん、わくわく」


 前回のプライアに続いて二回目の乗船に、エマとクレアは嬉しそうだ。


「ノーブの言っていた研究所も港近くのオアシスにあるらしいし、まずはそこを訪ねてから世界樹を目指そう」


 さすが旅に慣れているだけあって、セフィルがサクサクと段取りを決めてくれるのがとてもありがたい。


「はわー……」


 ふと横を見ると、アンナが船を見上げながら呆然としていた。


「どうしたの?」


「このデッカいのが……船?」


 ああ、なるほど。


「アンナの世界には大型客船が無かったのな。ちなみに俺やノーブさんの元居た世界は、コレよりデカいヤツが空を飛んでたぞ」


「ファッ!?」


 アンナは力無くその場にヘナヘナと崩れ落ちた。


「そりゃ私ら獣人の天下は終わるわなぁ。人間ヤバイ……」


 しょんぼりしたまま俯くアンナにクレアが近づき、頭を撫で撫で。


「アンナさんは美人だから…大丈夫。引く手あまた」


「本当かっ!?」


 何その慰め方!

 だがアンナはその褒め言葉に満足したらしく、あっさりと復活して元気に歩き出した。


「にゃんこさん…可愛いね」


 年上のおねーさんを可愛い猫扱いとは、恐るべし。





 船上ではこれといったイベントが起こるコトもなく、あっさりとエレク大陸北部の港に到着した。

 ここから南下すると砂漠のオアシス「オースの街」があるのだが、そこそこ距離があるため馬車をチャーターして、今はラクラク移動中である。


「ノーブさんが言うには、オースの街にある"エルダ考古学研究所"の所長を名乗るおじいさんが、カレンさんの正体を一発で見破った上、何故か数十年前にカレンさんが紛失したアミュレットも所有していたみたいだ」


 しかし、そのおじいさんはカレンさんにアミュレットを渡した後は煙のように消えて居なくなってしまったらしいし、そもそもこの大陸に戻ってきた確証も無いけれども。


「後は地図を入手したいところかな。俺達の目指す世界樹に行くにはかなり距離があるみたいだし、山道や雪原を越えなければならないし」


「あのクリスくん、雪原って何ですか?」


 ……あ、そっか! 俺らの居た地域は雪が降らないんだな。

 どう説明しようか迷っていると、ロザリィが溜め息ひとつ。


『これよ』


 すると、ロザリィの手からゴーッと吹雪が吹き出して地面に雪玉が形成された。

 なるほど、水属性魔法は雪も出せるんだなー。


「わあ冷たいっ」


 雪玉を触ったエマがおっかなびっくりしている。


『景色一面全部それがビッシリな場所があると思いなさい。冗談無しで装備固めておかないと体温を奪われて死ぬわよ』


 ロザリィの淡々とした雪原の説明に、他の面々は怯えてしまった。

 ちなみに一番怖がっているのはアンナでした(尻尾ふっくら)。

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