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115:突撃!ワラント城

「というわけで、私の偽者をギッタギタにぶちのめしに行きます!」


「何が"というわけ"だよっ!!?」


 ベロベロに酔っぱらったカレンさんがノーブさんに抱えられながら帰ってきたかと思いきや、開口一番これである。


「ノーブさん、コレどゆこと?」



 ~~かくかくしかじか。



「神殿の床下に隠してたお酒を取られた腹いせ!!?」


 俺の驚きの声に、カレンさんはチッチッチッと、どこかの日本一の腕前の早川さんのような仕草でニヤリと笑う。


「食べ物の恨みだって怖いんだから、酒の恨みはもっと怖いのよ。犯人をとっちめた後は末代まで祟ってやるから!」


獣神様アンタが言うと洒落にならないわね』


 さすがのロザリィも、カレンさんの怒りの理由に呆れ顔だ。


「そんなことよりも、その爺さんの正体の方が気になるな……。いくらなんでも会話だけでカレンが獣神だと気づくのは不自然過ぎるんじゃないか?」


 セフィルの言葉にノーブさんが頷く。


「やっぱ王子もそう思うか……。海の向こうのどこぞの街で考古学研究所をやってるとか言ってたし、この一件が終わったらそこを訪ねてみるのも良いかもな」


 海の向こうとなると、ここから更に南下して船旅か。

 うーん、今回は思ったよりも長旅になり……


「ダーリン、私達は帰還しないと……お店の家賃が払えないわ」


「oh...」


 大人の悩みはリアルだなぁ。





<ワラント王城前>


「とりあえず来てみたものの、当然ながら門番が居るわけで」


 門の左右にワンコのコスプレをした中年男性が二人。

 冷静に考えるとなかなかショッキングな絵面だが、文化の違いとはこういうモノなのだから仕方ない。

 RPGなら勇者御一行が門番をガン無視しながら堂々と国王の前まで歩いて行けるけど、いくら異世界だと言ってもそんなムチャは通用するわけもなく、そんなコトをやろうものなら一発でお縄である。


 というわけで~……


「……セフィルくん、お願いします」


「おう、任せとけ」


 エマにお願いされたセフィルは、久しぶりに「王子っぽい作り笑顔」で優雅に衛兵達に近づいていった。


「やあ、私はレヴィート王国の第三王子セフィルだ。諸事情によりお忍びで来た」


 そう言いながら毎度おなじみの印籠……じゃなくて王家の紋章を掲げると、門番二人は慌てて城の中にすっ飛んで行った。

 大陸中央から北西にかけて巨大な国土を保有するレヴィート王国の王子様が、遠路はるばる大陸南西の小国にやって来たのだから、ただ事ではないと思われて当然だろう。


『アンタ、まるで王子みたいだったわね』


「絶対お前がそれ言うと思ってたから、いちいち突っ込まないぞ」


 何故か勝ち誇った顔で笑うセフィルにロザリィは少し悔しそうだ。

 だが、それを見てエマが難しそうな顔をしていたのが気になった。


「委員長……じゃないや。エマ、どうしたの?」


「ロザリィちゃんとセフィルくんのやり取り、ちょっと憧れるなぁ…って。私もセフィル君にバシバシ返せるように、努力したほうが良いのかなー?」


「やめとけ」「やめてくれ」


 首を傾げるエマに、俺とセフィルのツッコミが同時に入った。



・・



「よくぞ遠路遥々お越しくださったセフィル王子よ!」


「こちらこそ突然の訪問に対し、快くお迎え頂き誠に感謝致します」


 ワラント国王自ら俺たちを出迎えてくれたのはさすがに驚いたが、これが国力の差というものなのだろうか?


「しかしセフィル王子自らお忍びで来られるとは、一体何事であろう?」


「単刀直入に。貴国に獣神ティーダ様が降臨したと噂を耳にしまして……」


 セフィルの言葉にワラント国王は嬉しそうに笑った。


「うむ、七十有余年ぶりに降臨されて、我が国では大々的に宴を開いているところ。私も曾祖父から話は聞かされておったが、その話通りの幼い少女の姿で、誠に驚いた」


 少女???

 俺が何気なく横目でカレンさんを見ると……うっかり目が合ってしまった。


「そりゃ私にだって子供時代はあるわよ。当時まだ二十代だったんだから。……どこかの誰かさんは、そんな私をお子様呼ばわりしてくれてムカついたけど」


 なんで俺を睨みながら言うのかよく分からないけど、なるほど獣人はなかなか老けないんだな。

 どこかの野菜っぽい名前の戦闘民族もそんな設定だった気がするし、エルフやらドワーフも長寿みたいなパターンが多いもんな。


 あれ? ということは、つまりカレンさんの実年齢は100歳のお婆……


「君が心の中で思ってる事を言ってごらん?」


「ひいっ!!?」


 カレンさんが笑顔で俺の肩をポンと叩いたけど、その目は全く笑っていない。

 この話は深く追求してはイケナイ!!

 俺は再びセフィルたちの会話に耳を傾けた。


「一説によると獣神ティーダは貴国の崇拝する創造神ラフィートと友好関係にあるそうだ。我々も末永くそうありたいものだ」


「ええ、我がレヴィート王国もそれを心から願っております」



・・



 というわけで……


「こちらが神殿です」


 ウサ耳のメイドさんに案内されて、獣神ティーダのまつられている神殿にやってきた。


「まさか、獣神様に会わせて→イイヨー! ……って、トントン拍子すぎてびびったわ」


「ああ、俺も断られる想定だったから、逆に驚いたよ」


 王子という身分だからこその特例だとは思うけど、こんなにあっさりと通してしまうということは、つまりワラント国王ですら偽神を本当の獣神ティーダだと信じて疑っていないのだ。


「それでは私はこれで……」


 ウサ耳のおねーさんは俺たちを残して去っていった。


「この国、さすがに不用心すぎじゃね? セキュリティがザルすぎんぞ」


 俺のぼやきに、セフィルが不思議そうに首を傾げる。


「せきゅ? まあ、神殿で無礼な行動をとる人間なんて居ないから、そんなもんだろう」


「なるほどなー」


 まあ、寺や神社で暴れるヤツなんてそうそう居ないもんなぁ。

 俺とセフィルがそんな会話をしている矢先……



 バーーンッ!!!

 


「たのもーーーーっ!!!」


 カレンさんが思いきりドアを蹴破った。


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