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110:カレンの目的

~前回までのあらすじ~


 行きつけのお店の店長さんが神様でした!



 ……って!!


「なんじゃそりゃあああああああっ!!!」


 思わず自分で突っ込んでしまったけど、こんなのアリかよ。


「あれぇ? 結構クールな感じにカミングアウトできたと思ったんだけど、何故かクリスくんがテンパっちゃったよ」


「そりゃそうだろうよ……」


 ノーブさんが呆れ顔のまま溜め息を吐くが、問題はそれだけではない!


「ラフィート様といいカレンさんといい、この世界の神様は人間に手ぇ出し過ぎじゃね!? あと、ノーブさんも神様と結婚とかその辺、大丈夫っ!!?」


 俺の怒濤のツッコミに、ノーブさんは腕を組んでウーンと少し考えた後……


「嫁が神様とか、かっこよくね?」


 駄目だこの人。


「まあ、神と言っても半人前……というか半神前だからね。ラフィート様みたいに世界のことわりをガン無視して暴れまくるような反則的な力は無いし、役職が神様なだけで種族としては獣人のままだよ」


 役職が神様って、それはそれで何だかなぁ。


「そうか! 分かったぞっ!!!」


 突然セフィルが大きな声で叫び、一瞬ビクッとなったクレアが敵意剥き出しの目でセフィルを睨む。


「さっきからいちいちうるさい」


 再びクレアに怒られてシュンとなりつつ、気を取り直したセフィルは改めて口を開いた。


「ここに本人が居るのに、ワラントに獣神ティーダが降臨したと話題になってるということは……」


 あっ、そういうことか!


「偽者が神の名を騙って、何か企んでいるのかっ」


 俺の言葉にセフィルは肯く。


「そもそもこの世界において神の名を騙るのはメチャクチャ重罪なんだよ。王子である俺ですら、王位継承権を一発で失って投獄されるくらいにな。ド田舎の国とかはその辺が緩くて独自の宗教があったりするらしいが、ワラントみたいな大国でそんな嘘を流してバレたら死刑は免れないだろう」


「ひぇー、この世界の宗教に多様性が無いのはそれが原因かぁ」


 感嘆の声を上げた俺に、エマは不思議そうに首を傾げる。


「クリスくんの前居た世界ってそんなにたくさん神様居たの?」


「うーん、実際に見たことは無いけど俺の国では八百万の神々が居ると言われてたなぁ」


「俺の田舎だと1000万とか言ってたぞ」


「へぇ、地域差があるのかな? ノーブさんってどこ生まれだっけ?」


 ついついローカルトークに花を咲かせる俺たちの横で、エマが呆然としていた。


「い、いっせんまん……クリスくん達の居た世界って、一体……」


 確かにこの世界の規模で考えると、下手すりゃ全世界の人口を足してもそこまで人類が居ない可能性があるんだな。

 俺に念写スキルがあれば、世界の大都市の街並みの写真を見せたり出来るんだろうけど、残念ながら地属性の俺には無縁な話だ。


 ただ、そんな中ひとりだけロザリィがいぶかしげな顔で俺を見ていた。


『神様がそんだけ居て、それ以上に人間が居て……それなのに働き過ぎて死ぬとか、アンタの世界ってよっぽど狂ってるのね』


 呆れ顔で溜め息を吐くロザリィに、俺は思わず苦笑した。


「さて、それじゃ続きを話すわね? 既に察してると思うけど、私が大事な店をお休みにしてまであなた達との同伴を願い出たのは、私の名を騙る輩に天罰を与えるため。もし君たちが事情を知らないままワラントで犯人に遭遇したときに色々困りそうだったから、事前に知らせておこうと思ってね」


「なるほど、自称ティーダを名乗るヤツにカレンさんがいきなり飛びかかったら驚くもんなぁ」


「私は有無を言わさず、後ろから撃つかも?」


「撃つのかよ」


 物騒な物言いのクレアにセフィルがツッコミを入れる様子にカレンさんがニコニコ笑っていると、カレンさんの尻尾が左右にユサユサと動いた。


「なんでカレンさん、さっきから尻尾を動かしてるんです?」


「ああ、これ? 機嫌によって勝手に色々動くのよねぇ。今まで隠してた事を思いっきりぶちまけてスッキリしたから、今は落ち着いてる時の動きね」


 そう言いながら自分の尻尾を手でベシベシ叩くカレンさん。

 うーん、獣人の尻尾の動きって無意識下だったのね。


 でも、棚に商品を陳列する時にゴキb……じゃなくて『黒い悪魔』に遭遇したら、尻尾が膨らんで後ろの棚にガシャーン!みたいな悲劇が起きそうだけど、その辺は困らないのかな?


「でも意外とこれ結構不便で……。棚に商品を陳列する時に例の黒い悪魔に遭遇して驚いたりすると、勝手に尻尾が動いて棚の上の商品がガシャーン!みたいな事になったりするの」


「俺すげえ!!」


「?」


 とまあ、こんな感じで勇者カトリが泊まった由緒正しい宿での、まったりとした雑談タイムは過ぎていった。



◇◇



 そして翌日、出発しようと準備していた俺達の前に、教会のおねーさんが再び現れた。


「あの、皆様は……もう旅立たれてしまうのでしょうか?」


「ああ、俺達はワラントに向かう用事があってね。どうかしたのか?」


 いぶかしげな顔でノーブさんが応える。

 ……あ、そういえばノーブさんだけ面識無いんだっけ。


「当教会の神父クーリエが御挨拶したいと申しておりまして……」


 はて? 何でわざわざ旅人の俺達に挨拶を求めるのだろうか???

 布教のための勧誘でもされちゃうのかなぁ。


「あっ! 警戒しないでも大丈夫ですよっ。旅人を捕まえて入信を要求するような、強引な勧誘などは致しませんので。そもそも、ラフィート様はそういった強要を大変嫌うお方だという記録も残っております」


 へぇ、創造神なのに多様性を認めてくれるとか、あの女神様はなかなか寛大なんだな。

 まあ魔王退治の時に獣神カレンさんと一緒に行動してたみたいだし、他の神様との関係も良好なののかもしれない。


「せっかくお誘い頂いたことだし、教会にも行ってみるかなー」


「ありがとうございますっ! 申し遅れましたが、私はシスター……シスターシーアと申します」

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