壱話 きっとこれは僕の物語だ
時はアズラス歴X43年。雲と同じ高さにある渓谷"ミージル渓谷"のとある場所にて。
八坂鎮。
今年で18歳、所謂地球という場所でならばだいたい高校生3年生だろうか。
そう、"地球という場所でならば" である。
「おはようシズル。今日もいい勉強日和だな。」
「いやいやいや…勉強日和ってなんだよ!俺は異議を申し立てるねテリス!こんな勉強今さら…」
「まぁ待て、そんなに声を荒らげては捗るものも捗らんぞ。」
大きなリュックを背負いながらやってきたのはうちのメイド兼用心棒のテリスだ。
この世界、"アズラス"という名前の世界に来て早いものでもう10年になる。
5年前にうちにやって来たメイドがこのテリスなのだが…少々変わっている。
「さてシズル、今日はなんの日かわかるな?」
「なんの日ってお前…俺の誕生日だろ。」
「ふむ、わかっているようで結構。今日はサプライズのプレゼントもあるから期待しておくように。」
前言撤回だ。かなり変わっている。
そしてテリスの言った通り今日は俺の誕生日だ。
とは言っても正式には生誕した日ではないので得てして妙な感覚だが。
「それ今言ったらサプライズにならないだろ…。」
そうこうしているうちにテリスは出掛ける準備を終えたようだ。
「という訳でワタシは今から狩りに行ってくる、勉強はしっかりとやれよ?」
「はいはい、あんまり騒ぎにならないようにな。」
「それは心外というものだが…シズルが心配してくれてるんだ肝に銘じておこう。では、行ってくる。」
そう言って窓を開け颯爽と飛び降りていった。
「まったく普通にドアから出られないのかね。んーっ!よし、やるか!」
小さく愚痴ると背伸びをしつつ勉強を再開する。
そう、この世の理についての勉強である。
これは僕が、八坂鎮が運命に逆らい生きていく物語である。