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トラブル
誰かを救わなければいけない。
なぜならば、俺は救われてしまった側の人間であり、それを可能にする力がある。だからこそ、やらねばならない。
そこに俺の意思がなくとも、既に俺という存在が意味を成さなくなったとしても、結局は自己満足・・・いやただの八つ当たりだな。それを世界にしてやりたいだけなんだ。
だから俺は叫ぶように救う。
俺から奪っていったモノを再び取り戻すことができるなんて幻想を抱きながら、ただ両の手を差し伸べる。
救えば救うほど神海暁晃という人物は忘れ去られていく。
きっかけはなんであったか。たしか懐かれていた猫が車に轢かれそうになったのを助けた。そして俺はその猫から威嚇され手を噛まれる。
これはマシな方だと気がつく。
小学六年の夏に仲のよかった友達と遠足に行って、帰り道にバスが横転して大惨事となった。けが人もなくその事件は終わったが、その日から俺は孤立した。
誰も俺の名前を知らない。担任の先生すらもそう発言した