俺の戦い
俺は今、たたかっている。見えざる敵と。その敵は皆知っている。しかし今までその姿を見た者はいない。
その姿を見たという人もいないわけではない。だが、ここで断言しよう。
「あなたがたは夢を見ていただけだ」
俺は日々の日常生活の中で突如として現れるその敵とたたかってきた。しかしながら、俺はそいつに一度たりとも勝ったことはない。奴の攻撃は強力で意識を失わないようにするだけで精一杯なのだ。
そのくせこちらからの攻撃が当たらない。いや、我々には攻撃する術を持たない、の方が正しい。あまりにも強大すぎるのだ。
そのため、中には最初から諦めて、奴に身をゆだねてしまう者もいる。同じ人間として恥ずかしい。
学生の頃、なぜたたかおうとしないのか。友人にそう聞いたことがある。すると友人は
「最初は僕もたたかってたんだけどな。もういいや、たたかって何の意味があるんだろう。そう思えてきてもう僕はもう……」
それっきり、彼とは会っていない。
俺はあいつとは違う。倒せなくても、抗ってみせる。何度でも、何度でも。
その敵は見えないが、やってきたという確信はある。感覚がそう伝えているのだ。
あれは先週のことだった。その時の俺にはやらなければならないことがあった。とても大事なことだった。しかしそいつは、見計らったように俺の前に……。
体が重くなり、頭が麻痺してくる。いつもそうだ。いきなりやってきたと思った時には奴の重たい攻撃を受けている。ダメージは計り知れない。俺は力を振り絞って抗った。もう自分で何をしているのかもわからない。しかしこのままでは負けてしまう。
何としても――
だめだった。また負けてしまった。何と情けない。やらなければならないこともやり遂げることはできなかった。負けてしまっては俺は友人と同じなのではないか。俺も諦めた方がいいのではないか。諦めて気持ち良くなろう。
…………。
いや、だめだ。人生を棒に振るわけにはいかない。まだ俺は若い。諦めてたまるか!
俺は再びたたかうことにした。
「ポーン、どうも時報男です。ただいまの時刻は深夜2時。ただいまの時刻は深夜2時」
ほぼ毎日聞く余計な音が聞こえる。
また奴が襲ってくる。今度こそ負けはしない! 勝ってみせる。
「うおおおおおおおおおおっ――」
いざ、勝負だ、睡魔!