3・シエの憂鬱。 と、少しローマ帝国。
シエはひととおり終わらせると、船に乗って中国へ帰ってきた。
「おおー、長楽宮あるか! だいぶ完成に近づいてきたあるね…。」
「シエさーん!」 「ん?」
振り返ると、紙の束を抱えた中国人の男性が、急いでこちらに走ってきていた。
「何あるかー? 騒々しいあるなー。 またどこかの軍が仲間割れでもしたあるか?」
「そうではありません! み、みて下さい!」 「ん…? これは…」
男性は神の束の一枚をシエに渡した。
「王を束ねる皇帝が今…決定したのです…!」
「な、何!? ど…どこの国あるか!? 韓あるか? 魏あるか!? まさか趙…」
「その三国のどれでもありません…」
シエは急いで紙に目を通していくうちに、ひとつの国名が目に入った。
「―秦です!!
長きにわたる戦国時代が、今、終わったのです…!」
「秦…! …そうあるか…よし! 今から緊急会議を開くある!」
「はい!? な、何を話すんですか? ちょっ、待って下さい!」
シエは自分の会議室へと駆けだした。
「おい、楽宮はあとどのくらいで完成するあるか?」 「も、もう半月もすれば…」
「よーし、上々ある。 長楽宮がつくり終わったら…秦の始皇帝に宮殿作ってやるある!」
中国にもやっと、はじめての皇帝が生まれた。
「その名も…『阿房宮』ある! 始皇帝と共同で作れば、お茶の子さいさいあるよ!」
アジアで以後、その名を轟かす中国。
これからこの国はその持前のリーダーシップで、アジア制を引っぱっていく存在となるのである…
―東ヨーロッパ―
「いやーぁ、なーんかあっさりマケドニア勝っちゃったなあ~?」
「そうですねー、ロマエさん。」 「あははは、俺つえー。」
30代近そうな男性が、頭をかきながら首をかしげていた。
彼は…ローマ帝国の『alter ego(分身)』である。
彼は大きく伸びをすると、首の関節をコリコリ言わせた。
「よーし。 じゃ、このまま西地中海でも占領すっかぁ! もう一戦ぶちかますぞーーっ!!」
「おおーーーっ!!」
そうして彼はまたいきようようと、剣を振り上げた。
「おー、カルタゴさんのお出ましだぜこりゃ。」
彼が地平線に目をやると、鎧を身にまとったカルタゴ軍が姿を現した。
「よーぉカルタゴさーん。 元気してた?」
カルタゴの『分身』、カサエルはローマを睨みつけた。
「黙れ!
わたしの地中海の海上覇権をほとんど奪っておきながら…今度はさらに
西地中海までも我が手に収めようと言うのおか!?」
「おっ! よくわかったなー、正解だぜ!
にしてもよー、ゴチャゴチャ話すよりさっさとやった方がよくないか?」
「だからそうする! うおおおおおお!!」
カルタゴ軍がローマ軍に向かって、一度に突撃して来た。
「あーやれやれ、怖い奴はモテねーぞー? まーお前ら、準備できてる?」
「はい!」 「いつでも戦えますよ!」 「よーし、じゃ。」
ロマエは剣を振り下ろすと、カルタゴ軍に面と向かった。
「いっちょ揉んでやるか?」
そう言ってロマエは、不敵に笑った。
こうして始まるのがハンニバル戦争こと「第二ポエニ戦争」。
地中海の覇者の、伝説の一部である。
―中国―
「ひ、ひいぃっ!!」 「皇帝に向かって―何て奴だ! そこの者、こいつを処刑しろ!!」
「お、お許しください! 少し、手が滑ってしまって…お許しください!」
シエは茶を溢した使用人が、またひとり処刑されるのを目の当たりにした。
シエはびくびくと怯えながら、皇帝を中心に広がるカーペットの上で怯えていた。
「ったく…おいシエ!」 「は、はい!」
「お前のしつけが悪いから、とんだそそうをする使用人がいるんだ!」
「申し訳、ありません…」
シエは正座して佇まいを直すと、頭を下げた。
「何度目だと思っている! 次またこのような事があったら…次に処刑されるのはお前だぞ!」
「……はい…」
『なんで…何でこんなことになっちまったあるか…?』
秦の始皇帝…彼は、ちょっとしたことで使用人や国民を処刑するような人物だった。
「もういい…下がれ!」 「はい…。」
とぼとぼと背を向けて部屋を後にするシエに向かって、
皇帝は「ったく…顔を見るのも忌々しい…」などと言葉を浴びせていた。
シエは震えていた。
「…皇帝がいれば、我も国らしくなって…もっと発展すると思ったあるが…
どうして、こうなったあるか…? 我…どうすれば… ―はっ!!」
『よ、予定表!』
シエは何かを思いついたように、自室の予定表を確認し始めた。
「…あ! ここなら3日間休みある…ここで…」
『いつもは休みの時は宮殿を出て、森でのんびりしに行ったあるが…』
「…あいつに、相談するあるか…。 情けねえある…」
『でも…そんなこと言ってらんねぇある! もしかしたら我…この国とともに、滅ぶかも知れないある』
今のところで、一度登場人物をまとめようかと思います。
アブローラ(国:?)
おっとりした口調の少年。 ある国の『分身』。
今のところ、黒海に進出したりしたくらいしかわかっていない。
↑と話してた男性
アブローラの事をひいきしてるらしい。 上司チックな雰囲気あり。
シエ(国:中国)
ハキハキとした遠慮のない少女。 中国の『分身』。
大和に稲作を教えたりと面倒見がいい。
大和の(自称)姉的存在。 現在始皇帝の政治がヤバくなっている。
大和(国:日本)
おどおどとした少年。 日本の『分身』。
他人に迷惑をかけたがらない。 シエとは姉弟的存在(?)。
腰を痛めやすいじじいくささがある。
ロマエ(国:ローマ帝国)
おっさん臭さとガキっぽいやんちゃさがある。 只今地中海侵略中。
カサエル(国:カルタゴ)
きりっとした印象がある。 たぶんもう出ない。