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世界で一番大きな国。  作者: ヨウカズ
第一幕:紀元前
2/5

2・大和とシエの稲作講座。

中国の『改变自我(分身)』シエは、日本の『分身』大和に稲作を指導しに来ていた。


「違うある大和! もっと腰を落としてくわ使うよろし!」

「こ、こうですか…い、痛たたたたっ! こ、腰がぁ…っ!」


大和は腰に手をあてて、痛そうに顔をゆがめて突っ伏した。


「や、大和!? だ、大丈夫有るか? いやー、無理させすぎたあるね…休むよろし」


シエが申し訳なさそうに頭の後ろをかく。 弥生人が慌てて大和に駆け寄った。


「大和さん! 大丈夫ですか?」

「稲作なら、続きは私達がやるので、休んで下さい! 腰を痛めているのでしょう…?」

「い、いえ、問題ありません。 ………続けなくては…」


シエはくわをついてふらふらと立ち上がる大和を、不思議そうに見つめた。


「大和、別にそこまでしなくてもいいあるよ? 我ならまた今度会いてる日に続きを教えに―」

「ダメです!」


大和はバッと、顔をシエに向けた。 シエがますます目を丸くする。


「シエさんは今…自分の国が戦国時代という深刻な状況にあります…。

 それなのに、シエさんがわたしの所に居ては…いけません。

 ですから………わたしは日本男子として、他人に御迷惑をかけるようなことは…」


大和は再びうつむいて、苦しげな表情を浮かべる。


「お気持ちは大変ありがたいのですが…シエさんは―」 「他人じゃねえあるよ。」


その言葉に、大和は再びシエを見上げた。

シエの顔は晴れやかで、いつもとなんら変わらぬ笑顔をしていた。


「我は大和…お前の事を弟だと思ってるあるよ。」 「わたしが、シエさんの…弟…?」

「うむ! そうある、弟ある!

 我が稲作や青銅器の作り方を教えてる時の大和の顔は、

 いろいろ知れてとっても楽しそうだったある。」

「た、確かに、様々な物事を知るのは嬉しき事でしたが…」

「だから! 大和は我の弟ある! 弟の面倒をみるのは、当然あるよ。」

「しかし…やはり国内では戦争が…」

「だぁーっ! 韓も、魏も、趙も、心配ねぇある!

 我の中にある奴らある。 なるようにしかならねえあるよ。」

「ええっ!? そ、そんな気楽に構えてていいんですか!?」

「全く、問題ねぇある。 何だかんだで、今まで何とかなってきたある。 今度も大丈夫ある!」

「その自信は一体どこから来るんですか…」


大和が少し、呆れ気味に額に手をあてる。


「ま、そうゆう事ある。 稲作も青銅器も、我が教えたいから教えてるあるね。」

「………」

「それとも、我のやりたいことに口出しするあるかー?」

「いっ、いえ! そうゆう訳では…」

「あはははは! 大和のそうゆう一歩引きます、みたいなところは本っ当面白いある!」

「なっ…!」


大和が顔を赤くするのを見て、シエはますます笑い声を大きくする。


「大和ー! これは姉の命令あるよー! 休むよろし。」 「ですが…」


つぎの瞬間、シエがきつい口調でカッと言葉を発した。


「休まないと腰悪くするあるよ!」

「は、はい! では、お言葉に甘えさせて頂きます。」


争いを好まない大和は、言うとうりに木陰へ行った。

シエは優しい顔に戻って、くわを動かし始めた。


「よぉーし、弟が見てるから、我やる気出して耕すあるよー!! うぉたぁーー!!」

「ちょっ、シエさん! 速すぎです!

 もっとゆっくりやらないと体力が持ちませんよ!」

「ん? 大和、なんか言ったあるかー?」 「……いえ、何でもありません…。」


半分ほど終わってもけろりとした表情で続けるシエは、疲れを知らないようだ。


「…何でわたしの方が老体みたいなんでしょう…」


それが彼にわからないことのひとつだった。

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