・voice
「HEY、連中はみんな片付けた。
もう大丈・痛っ!」
肩に触れた手が思いっきり叩かれた。
その痛みから伝わる明確な拒絶。
目には私の姿はなく、ただただ恐怖に濡れている。
そこに一人の少女の姿がダブる。
突然、得体の知れない黒いモノに襲われ、怖くて恐くて。
目にうつる全てがアイツら【嘘】とおんなじモノに思えて。
自分を助けてくれた人間すらも敵にしか見えなくて、力の限り暴れて泣きじゃくった、
十年前のあたし。
そのあたしを、あのサンタクロースは。シンさんは。
「うあぁ!離、離せ!うあぁ!」
抱き締めてくれた。落ち着くまで、ずっと。
どんなに暴れても殴られても罵られても。
ずっと笑顔で
「大丈夫だ、もう怖くない。」って。
「大丈夫だガキんちょ。アイツらは全部やっつけた。」
「やめっ!うわぁ!離せ!離せ!離せぇ!」
ガキんちょの拳が肩に頭に背中にあたる。心に体に鈍い痛みが広がる。
シンさん、やっぱアンタスゲーよ。こんな痛くて辛いのを、我慢してたのか、あの夜、見ず知らずのあたしの為に。
「ガキんちょ、あたしだ。サンタの姐さんだ。」「離し、離せよ!やめろ!わあぁ!」
声が届かない。体温を感じるのに距離が遠い。
ヤベ、柄にもなく泣きそうだ。
いっそう強く抱きしめる。唇を噛み締めながら。
一体どっちがすがってんだか。
情けねぇなぁ、あたし。
「うわっ・・・ひぐっ・・・えっ・・・うあぁぁぁ!」
いつの間にか、あたしを拒む手から力が抜けていた。
わめき声が泣き声に変わっている。
よっし、ここ一番のいい笑顔で、最後の仕上げだ。
「よく頑張った、もう大丈夫だ。」
シンさん、見てっか?
アンタの守った小娘は、立派にサンタをやってるぜ。
ガキんちょの頭を撫でてやる。
触れた瞬間ちょっとビクッとなったが、もう大丈夫だろう。
男の子だしな。
「うっ・・・うっ・・・お父さん・・・。」
おいおいそこは母ちゃんか姉ちゃんだろうよ。
・・・全く、締まらねぇな。笑っちまったじゃねぇか。