・【嘘】
「さってと。」
サンタが立ち上がり、腰を伸ばす。
「乗んな。家まで送ってやんよ。」
投げてよこされたヘルメットが、両手をすり抜け胸にあたった。
ちょっと苦しくて咳き込む僕を見てサンタが笑う。
少し悔しいのと恥ずかしいのとで顔があつい。
「【嘘】になんでピストルが効くの?
特殊な弾とか使ってるんですか?」
あわてて質問したために敬語と普通のしゃべり方が混じってしまった。
「なんだ知らねぇのか、コルトは最強なんだぜ?
その気になりゃ聖書の中の神さんにだって新しい穴プレゼントしてやれらぁ。」
明後日の方向に向けて自慢気に銃を構えるサンタ。
・・・出来れば一生その気にならないで欲しい。
「殴っても倒せたし、虎狩りみてぇなもんさ。
あたしも詳しくはわかんねぇんだ。」
詳しくわからないものをよく素手で殴れるものだ。
「ま、数がいやがるからこいつで蹴散らすほうが早えぇ。」
といいながら、バイクの後ろに積んであった大きな箱から長い銃を取り出した。
「AKだ。こいつはマジ最強だぜ!!」
まるで玩具を目の前にした幼児のようにキラキラした目で銃を撫でる。
「さっきはコルトが最強って言ってたのに。」
「ッセーな!コルトの次に最強なんだよ!」
サンタの顔が真っ赤になって、いよいよ赤くない部分を探すのが大変になった。
「い、いいから乗れよ!早くしねぇとあいつら、また集まってくるぞ?」
ヒラリとバイクにまたがるサンタ。
まだ耳が赤い。
手を借りてバイクにまたがる。
サンタが鍵をひねると、
ヴゥウン
赤鼻のトナカイが低いうなり声をあげた。
「しっかり掴まってろよ、コイツはあたし以上にファンキーだから、よ!」
ヴゥン ヴォンヴォン
顔を叩く風にバイクから引きずり下ろされそうになり、あわてて腰にしがみつく。
スピードが上がっていくうちに、僕は。
心のどこかに火が入るのを感じた。