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X'mas fire  作者: もち武者
5/9

・サンタの仕事

「よう、ガキんちょ。余計な穴は増えてねぇか?」


声が出ず、カクカクとうなずく。


「悪りぃな、巻き込んじまって。立てるか?」


頭をかきながら申し訳なさそうに手を差し出してくれた。


「あアレ、何?」


上擦った声が出て、少し恥ずかしかったけど。

でも聞かずにはいられない。

あの黒いモノの正体。


「ありぁな、【嘘】だ。」


嘘?


「この時期どいつもこいつもつく【嘘】だよ。その【嘘】の成れの果てってとこか。」


誰もがつく嘘?

この時期に?

・・・あ。


「サンタクロースの事!?いないのにいるって。」

「ぶぁ〜か!サンタは居るだろうが目の前に!」

ちょっとだけ怒ったような顔になった。


「良い子にプレゼントうんぬんの下りだよ、【嘘】は。」


サンタクロースがクリスマスの夜に枕元にプレゼントを運んでくる。

多分知らない人はいないだろう【嘘】が、あんな化け物に?


「悪い嘘じゃなくてもあんな風に・・・?」


誰かに迷惑をかけるような嘘ならわかる。

けど、サンタクロースの話は違う。

それなら童話や昔話もあの黒い【嘘】になるはず。


「誰かが悪用すればどんな優しい作り話も毒になんのさ。」


悪用?サンタクロース詐欺何て聞いたことない。

「言われたことねぇか?『良い子にしてないとサンタさん来ないわよ〜』とかなんとかよ。」


確かに、この時期の言うことを聞かない子供に対する親たちの最高の殺し文句。

「サンタをだしに『良い子』を強要する。

考えてみりゃひでぇ話だ。」


「でも、あんなのが生まれるほど悪い嘘だとは思えないよ。」


他愛のない嘘。

世の中には人が死んでしまうような嘘がある。

それにくらべれば・・・。


「質より量の問題だよ、ちいせぇガキなら大概騙される。

しかもそこいら中でだ。

聖なる夜が聞いて飽きれらぁ。」


1つ1つは小さな嘘。

でも、考えてみればこの日が来るまでに町中、いや世界で使われる嘘。

たいがい対象は小さな子供。

そしてその内のほとんどが信じてしまう、嘘。


「昔はもっと酷かったらしいぜ?

サンタクロースがいねえ、【嘘】をかたす奴もいねえ。

だからある日、あいつらと戦ってきた誰かがサンタクロースを名乗った。

赤い服着てトナカイ引いて、な。」


サンタクロースの誕生秘話。

それを話すサンタは少し誇らしげだ。


「嘘がほんの少し本当になって、【嘘】もほんの少しちいさくなって。

その誰かにも仲間が増えて。

それが今のあたしら、『サンタクロース』ってわけだ。」


真っ赤なバイクを撫でながら、優しい顔で語る。

その顔だけは、僕が知るサンタクロースを思わせるものだった。

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