・聖夜の使者は轟音と共に
その日の真夜中。
僕は積もったばかりの新雪を踏みながら歩いていた。
特に目的も意味もない。
帰ってから風呂に入り、夕食のコンビニ弁当とプチケーキを食べ、勉強を済ませたあと。なんとなく空を眺めてぼんやりしていた。
「早く寝ないとサンタさんがこないぞ!?」
父さんが生きてた頃のクリスマスにそう言われたのを思い出した。
あの頃はまだ母さんも働きに出てなくて、あわてて帰って来た父さんと三人でクリスマスを過ごしていた。
サンタなんかいない。サンタなんか。
今日、夜の町を歩き回ってサンタなんかいないことを証明してやる。
あの時なんであんなに熱くなったのかわからない。
今はもう頭が体と共にすっかり冷えてしまって
「もう帰ろう。」
と車通りの全くない道路を横断しようとした時。
ヴォンヴォンヴォン
耳が凍ってしまったんじゃないかと思うほどの静寂を荒々しく噛み砕くような轟音に、
ヴォンヴォヴォン
思わず足を止めて立ち尽くしてしまった。
ヴォヴォンヴォン
気づいたその時にはライトに照らされ視界は真っ白だった。危な
ギキィィイィィ!
腰が、抜け
「オイコラくそガキ!死にてぇのか!!」
ズカズカと足下にあるもの全てを踏み砕く勢いで詰めよって来たのは。
「ん?HEY!気失ってんのか?HEY!」
サンタ、だった。
多分。