1/9
・最低な日
僕はこの日が大嫌いだ。
街はどこもかしこもキラキラライトアップされ、間の抜けた陽気な歌があちこちから聞こえてくる。
歩いてる連中も誰も彼も浮かれている。
今日はクリスマス。
多分ほとんどの人間が幸せを謳歌している日。
でも。
サンタはいないし、
帰っても家には誰もいないし、
勿論パーティーもツリーもない。
ほとんどいつも通り。
いつもと違うものといえば、テーブルの上に置いてある夕食代が千円多かったのと、冷蔵庫に入っていた小さなケーキぐらい。
「ふう・・・。」
ため息、もう何回目だろう。
塾から家までの帰り道では、この目抜通りを必ず通る。
普段なら何とも思わない街並みが、今日は何もかもがしゃくにさわる。
手にぶら下げたコンビニ弁当すら、重く感じる。
無意識の内に早足になっている自分に怒りすら覚え、立ち止まって空を見上げた。
雪がちらつくホワイト・クリスマス。
見知らぬ髭のおっさんの誕生日をなぜ世界中で祝うんだろう。
「クリスマスなんて廃れればいいのに。」
道行く人に聞こえないよう小さく呟いた。