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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第一章~平穏が終わる時~
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暗躍、その4~本性~

「本名で呼んでも構わないかい?」

「もちろんである。そちと妾の仲であろうが、ライフレス?」

「それでは遠慮なく。ブラディマリア、ドゥームをほったらかしていいのかな?」

「どういうことかの?」

「万が一にもドゥームがそのままミリアザールを討ってしまったら? 貴女はミリアザールに個人的な恨みがあるはずだ」

「そのようなことを言えば、妾はそちにも恨みがあるのう、ライフレス」

「・・・確かにその通りだ」


 一本取られたと言う顔で自嘲気味に笑むライフレス。ブラディマリアはそんな彼を楽しそうに、しかし瞳の奥には彼に対する怒りを隠しもせず話を続ける。


「確かに妾の目的はミリアザールが一番である。だがドゥーム程度になんとかなるようならば、ミリアザールは1000年も生きておるまい。ミリアザールはその戦闘能力と言うよりは、指揮官能力と用意周到さで戦うタイプであろう。それが自分の本拠地にいる状態に、ドゥーム達は飛びこむのであるぞ? しかもミリアザールはドゥームにとって相性が最悪の相手でもある。ドゥームに勝てる要素はあるまい。まあかなりの打撃は与えるかもしれんがな。むしろ向かわせるのがなぜドゥームなのか、という方が問題じゃ」

「ふむ・・・1つにはドゥームは戦闘経験が少ない。自分以上の実力の敵と戦ったことはないだろうから、彼に経験を積ませたいと言うのがある。またアルネリア教の現在の戦力をある程度把握したいというのもそうだ。もう1つは、ドゥームは――――だからね」

「ほほう・・・それは面白い事実よのう。そちが考えたのか?」

「発案は僕とアノーマリーだね」

「なるほど、やはりそちは隅におけんな。そちと決着をつけるのはミリアザールの後になりそうじゃのう」

「僕としては君と戦うのは勘弁願いたいな、ブラディマリア。君は強すぎる」


 両手を上げて降参のポーズをとるライフレス。そんな彼を見て忍び笑いをするブラディマリア。


「冗談が上手くなったの、ライフレス。そなたがかつて大魔王を一騎打ちで破ったのは、一体なんじゃったのかの?」

「また古い話を・・・それに一騎打ちなら『オネエ』の独壇場だろう? あれに一騎打ちで勝てる奴がいたら見てみたいよ。特に僕のような魔術士は相性が悪い。彼女も一応魔術士なのにねぇ」

「確かにただの人間にしては強すぎる女子おなごではある。だが負けもしない、といったところか?」

「・・・まぁね」

「この狸め」


 二人してククク、と笑う。一見仲が良いと思えるかもしれないが、実際には過去には敵対関係にあった2人であり、今回同士として集まっていなければ即座に殺し合いを始めていてもおかしくない間柄なのだ。


「だがそなたの言うことにも一理ある。配下には監視させておくかの。ユーウェイン、おるか?」

「イエス、マドモアゼル」


 ブラディマリアの背後に現れた一人の男性。ライフレスでさえ思わず唸る、青い髪の美男子だ。ライフレスはふと思い出したが、ブラディマリアの部下は皆美男子で構成されていた。もちろんそれだけでないことも知ってはいるが。


「ドゥームと共にアルネリア教に潜入し、見張れ。ただし本人には気取られるなよ? まずはないと思うが、万一ドゥームが優勢になるようならば・・・部下ごと殺せ。妾はアルネリアにて高みの見物と洒落込むことにするでの」

「御意にございます」


 そして音も無く消える男。


「あの顔は初めて見たけど、あれが君の部下か。ドゥームを殺れるほど強いのか?」

「妾に仕える執事達バトラーじゃよ。またドゥームより強いかどうかは問題ではない。まあ相当な手練てだれではあるがな。だが肝心なのは妾のために何のためらいも無く死ねるかどうかということ。だいたい代わりなんぞいくらでもおるでな」

「怖い女だ」

「自分が生き残るために仲間を盾にするような奴に言われとうない」

「残念ながら生まれてこのかた、僕に仲間なんて1人もいたためしがない」

「ふ、言いよるわ。ところでドゥームの戦いを見物にいかんかの? 妾も興味があるでな」

「それは僕も同様だ。特に今は仕事もないし、おネェへの詫びも後でいいだろう。では行きましょうか、マドモアゼル?」

「ふ、口は達者よな」


 そうして姿を消す2人。そして消音と認識阻害の結界が消え、この森の惨状を間もなく周囲の村や町が知ることになるが、その原因はゼアと同じく謎に包まれたままだった。



続く


次回投稿は11/30(火)13:00です。


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