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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第三幕~その手から零(こぼ)れ落ちるもの~
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足りない人材、その9~機密情報~

「夜遅いのはわかってるんだけどね。お客さんよ」

「アルフィ、失礼します」


 ユーティの後に続いて音もなく入ってきたのは楓であった。彼女は闇に紛れるように黒装束を身に着けており、するりとアルフィリースの部屋に滑り込むように入ってきた。


「楓、何の用? こんな時間に来るからには、相当内密の用事なのでしょうけど」

「はい。ミリアザール様が資料を渡し損ねたと申しまして。依頼までもう少し時間があると思っておられたようなのですが、どうやら出立が早まりそうとの連絡を受け、急ぎ参った次第です」

「なるほど。ただ相当眠いから、手短にお願いね」

「目が覚めるでしょう、これを見れば」


 楓が懐から取り出した書簡をアルフィリースは受け取ると、眠い目をこすりながらそれを開いた。すると楓の言った通り、確かにアルフィリースの眠気はどこかに吹き飛んでしまったのだ。


「楓、これは・・・」

「はい、内容は私も知らされております。これは黒の魔術士達の情報を、わかった範囲でまとめました。アルネリアと、魔術教会の機密情報の結晶です。これをどう扱うかは、貴女にお任せいたします」

「ねえ、私も見ていいの?」


 ユーティも雰囲気からさすがに遠慮していたのだが、あっという間に我慢の限界が来たようだ。アルフィリースは半ば放心状態でユーティにもその書簡を見せる。内容はこうであった。


「 黒の魔術士達の出自、能力と対策について


・オーランゼブル

 エルフの長にして、人間に魔術を伝えた者。全ての精霊と交信する能力を持ち、全属性の魔術に加え、天道魔術なる魔術を行使する。占星術にて未来を読むことを可能とし、大陸の発展に大いに貢献。2000年ほど前ハイ・エルフの一族もろとも姿を消し、およそ200年前に再び行動が確認されている。

 現時点で天道魔術がどのような魔術かは推察不能。また弱点に関しても不明。一人娘がいたとされるが、生死不明。


・ヒドゥン

 吸血鬼と人間の混血と考えられる。詳細はブラド・ツェペリン公に確認を。自身に対する錬成魔術を得意とし、変幻自在に姿を変える。さらに血を操る魔術も行使することができる。本人は普通の背丈の神経質そうな男で、痩身である。

 数々の国に変装して潜入していた形跡がある。オーランゼブルの計画をもっとも身近から手伝っているとされ、立場上二番手の位置づけと考えられる。重要な情報を握っていることも考えられ、可能ならば捕獲されたし。


・ライフレス

 英雄王グラハムだと目されている。少年の様な姿をしているが、成人に代わることもある。体の構成は魔術素子でできており、既に実体のないこの男は原則的に破壊、殺害は不可能。対抗策は魔術教会イングヴィルに問い合わせる事。

 部下として、鎧の巨人(肖像画から推察するに、右腕と言われたドルトムント)、髑髏の男(エルリッチとして、かつて魔王として行動していた。ミランダとの交戦記録が残っている。魔王同士の協定を完成させ、諸国を恐怖に陥れた存在)を抱えている。最近では白い獣も従えている。

 英雄王としての行為は、アルネリア教会に資料をまとめておく。


・ドゥーム

 出自などは一切不明。悪霊と人間が交わった存在ではないかと考えられるが、少年の姿を取る。殺害方法も不明。聖の魔術だけでは消滅は不可能と考える。殺害には遺物アーティファクト、もしくは特別な力を持った人間が必要。

 闇の魔術と多数の悪霊を従える力を行使する。部下としてはゼアの悪霊(生前、ゼアを滅ぼした元凶とされる。魔女の素養を持った少女が悪霊化したもので、非常に高い魔術耐性を持つと考えられる。使用する魔術は、念動力のような種類であり、対抗策は不明)、大食の悪霊(生前より人食を繰り返し、町人達によって殺された少女の悪霊。生物に憑りつく能力を持ち、肉体より分離した時に退治する必要があると考える)、色欲の悪霊(詳細不明、ターラムに潜伏中と考えられている)、不眠の悪霊(前回の遠征にて、アルネリアが消滅させた)がいる。

 他にも、最近では人間の部下を従えているとの報告もある。


・アノーマリー

 魔王製作を行っている中心人物と考えられる。醜い老人のような容貌だが、声は少年の様に聞こえる。自らの分身を数多く生産し、実験を手伝わせている。本体は不明。分身は倒すと記憶を他の個体と共有する。

 ヘカトンケイルも魔王の一種と考えられており、各地の状況を鑑みるに最優先で殺害すべき対象と考えられる。


・サイレンス

 詳細不明だが、腰まである金髪を持つ美しい男性と考えられている。多数の『人形』を各地に放っており、情報収集をさせていると考えられる。人形を見分ける一般的な方法は現在考案中。

 出自不明。本体の戦闘能力は不明。殺害方法も不明。


・ドラグレオ

 南の大陸の『三すくみ』を構成していた存在の一人。銀にも見える白髪をした大男で、部下を一切持たず単独で行動する。その戦闘能力は絶大で、存在が確認された数百年前より一度の敗北もない。種族は人間の模様だが、巨人族並みの体躯を誇る。

 出自・詳細な能力は不明。異様なまでに頑強な体と、白銀の吐息ブレスを使うことが確認されている。また睡眠や食事を異常なほどに取る時がある。一度睡眠をとると数年覚醒しない時もある。腕力も強いが、強さは一定しない。傷も負うが、回復が異常に早いことなどが確認されている。


・ブラディマリア

 南の大陸の『三すくみ』の一人。『執事バトラー』と呼ばれる部下達を多数抱える。彼らの戦闘能力は絶大で、全てブラディマリアの息子と考えられている。ちなみに娘は一体もいない。

 能力に関しては不明な点が多い。南の大陸で確認された姿は成体。金の髪と、漆黒の翼をもつとされる。種族は魔人。はるか昔、真竜と大陸の覇権を争った一族の末裔と考えられる。


・ティタニア

 『剣を奉じる一族』の末裔と判明。彼らは伝説の武法具を収集することを一族の使命としており、数百年に渡って活動してきた。大戦期よりもはるか前、魔王が大陸の覇権を争っていた時代に滅亡したと考えらえるが、なぜ彼女だけが生きているかは不明。

 通称は『剣帝』。現代もなお伝説の武具の収集を続けていると考えられている。各地の封印された武具の回収、強奪を行っている。


・カラミティ

 南の大陸の『三すくみ』の一人。南の大陸の人間をほぼ殺しつくした存在と考えられる。その活動は少なくとも700年に渡り、美しい女性の姿で現れることが多いが、体の一部が甲虫のように変形したとの報告もあり、正体に関しては不明。アルネリアもかの正体を突き止めようと部隊を何度か南の大陸に派遣したが、いずれも失敗に終わっている。

 クルムスの戦争中出現するも、倒した後も他の場所に出現したとの報告があることから、本体は別の場所にいると考えられている。出自なども不明。


 以上、現時点でわかっていることを伝えておく  

                                       ミリアザール」


 アルフィリースが書簡を読み終わると、楓が感想を求めた。



続く

次回投稿は、2/7(木)20:00です。

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