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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第六章~流される血と涙の上に君臨する女~
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終戦、その37~発動と覚醒⑱~

「スウェンドルは最低限の犠牲をあえて払うことで、カラミティを味方に引き込んだ。結果、オーランゼブルをわずかながら欺くことに成功した」

「わずかに? それはいったい・・・」

「あくまで私の感覚ではあるけど、オーランゼブルの計画が強引に進められている。おそらくは彼の意図しないところで、複数の者の手によって」

「どうしてわかるのです」

「――わかるからわかるとしか言えないわ。強いて言うなら、毎日瞑想していた効果かしらね」


 リサはふと思う。アルフィリースはやることもないのでよく昼寝をしていると思っていたが、シェバの弟子たちに言わせるとそのほとんどは瞑想だったようだ。しかも見る者が見れば驚嘆するほどに、深い瞑想。

 魔術を嗜む者にとって、瞑想とは鍛錬であり、自らのオドを高めたり整えたりするには必須の行為だ。どんな魔術士でも瞑想から訓練を始めるし、睡眠とは似て非なるこの行為を極めていくのはとても難しいことでもある。魔術士なら瞑想の様子を見るだけで相手の力量がわかると言われるほど、基本にして奥義でもある。

 

「ちなみにデカ女の瞑想はどの程度なのです?」


 リサが冗談混じりに聞いた言葉に、賢者シェバの弟子たちは口を揃えて言ったのだ。


――気を抜くと吸い込まれそうになるほど、深い――


 と。賢者シェバですら、これほどの瞑想をすることはない。おそらくではあるが、当代随一の魔術士に違いないと弟子たちは口を揃えて言っていた。

 そのシェバは、かつて魔術協会で最高の魔術士と呼ばれたのではなかったか。リサはそんなことを思ったが、魔術士でないリサにとってはアルフィリースが呼びかけても起きないただの寝坊助にしか見えなかった。

 ただ、誰の呼びかけにも応じないほどの瞑想状態でも、リサの呼びかけには常にアルフィリースは明確に反応した。


「リサの呼びかけって、とっても深くて繊細なのよね。心地良いわ」


 アルフィリースは微笑みながら言ったものだが、それもリサにはわからないことだった。

 そのアルフィリースが瞑想をしていたのにも、ちゃんとわけがあった。


「黒緑鋼って、魔術を吸い取る性質があると思っていたのだけど、正確にはちょっと違うみたいなのね。オドではなく、マナを吸収する――いえ、マナの通り道になるというのかしら。マナの浸透率が異常に高いのだわ。それも、人間やエルフなんかよりも、余程」

「つまり、どういうことです?」

「黒緑鋼の傍にいると、人間が自然に取り込んでいるマナが吸い取られるように感じると思うの。結果として、近くで生活する魔術士は存分に力を振るえない。ローマンズランドに魔術士が極端に少ないのも、そのせいだと思う。魔術を扱おうにも、黒緑鋼に吸われて上手く集めることができないはず。余程生来強力なオドを持っているか、意図的に黒緑鋼からの吸収を断てる人でないと、魔術そのものがままならないはず」

「それと瞑想と、何の関係が?」

「瞑想を通じて、黒緑鋼の性質を掴んだわ――いえ、それを利用してさらに竜脈への介入すらもできたかもね。おかげさまで、黒緑鋼の岩盤にちょっとした仕掛けをしたわ」

「仕掛け?」

「どれほど効果があるかはわからないけど、ひょっとしたら私たちに有利になるかも。あと竜脈の流れを感じてわかったのだけど、誰かが強引にいじった跡があった。おかげでこの大地が悲鳴を上げているのよ。度重なる地震は、そのせいね」


 地震――たしかに生活していてわずかな揺れを感じることは多く、幼少期の頃よりも頻度は増えていると思っていたが、最近収まってきたような気がしていた。それをアルフィリースに伝えると、爆発前の静けさだとあっさり言ってのけた。


「もうすぐ大爆発するわ」

「ええ!? 逃げなくては!」

「いえ、むしろここが一番安全かもしれない。余程離れるか、中心にいるかどちらかの方がいいわ。そして私は中心にいなくては」

「なぜゆえに」

「竜脈の噴出点がこの王城だからよ。カラミティはオーランゼブルが無数の戦争を起こして集めた竜脈を活性化する魔法陣で集めたエネルギーを、根こそぎ奪うつもりでいるから」


 アルフィリースの言葉の意味を反芻しながら、それがどのくらいまずいことなのかがわかりはじめると、リサは自分で顔色が退く音を聞いた気がした。



続く

次回投稿は、1/28(日)15:00頃を予定しています。

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