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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その631~陽光⑩~

「人の背後に立つな、人間!」

「いいじゃねぇか、敵じゃねぇんだし。そもそも隙がある方が悪いんだろ?」

「私のどこに隙がある!」

「隙だらけだぞ、ほれ」


 ベッツはヴァイカの鼻をつまもうとして、その手をヴァイカに払われた。すると、ベッツの手はヴァイカのあらぬところをつまんでしまった。


「あっ」

「きさ、きさ、貴様ぁあああ!」

「事故だ、不可抗力だ! お前が手を払うから悪い!」

「問答無用! 殺す!」


 ヴァイカが大刀を振りかざし、ベッツに向けて構えた。ベッツは両手を挙げて降参の意を示すが、もはやヴァイカはそれでは止まらない。

 それを見ていたレクサスとルイに、ベッツは助けを求めた。


「見てないで助けろよ!」

「爺さんよ・・・ご愁傷さまです」

「骨を拾うのも汚らわしいな」

「うぉお、これは死ぬぞ!?」


 ベッツが避けようとして、背後に泣き崩れたままのチャスカがいることに気付いた。そしてキレたヴァイカはそのことが目に入っていない。ソールカはあっと思ったが、力の使い過ぎと気を抜いて深く腰掛けていたせいで、反応が遅れた。

 ヴァイカの大刀が振り下ろされる。ベッツが瞬間的に状況を把握し、最適な反射を自動的にとった。


「チィ!」

「何?」

「びぇえええ、え?」


 ヴァイカの大刀を裏拳で逸らしながら、勢いを殺しきれないと感じたベッツがチャスカの尻を蹴り上げ立たせる。反射的に立ち上がるチャスカを反対の腕で持ち上げ、大刀が地面を砕く石の散弾からチャスカを守った。

 チャスカが軽すぎて、思わず抱きかかえる形になるベッツ。そして裏拳の手をそのまま添えて、ヴァイカをくるりと投げ飛ばしてすとんと尻から地面に静かに落とした。痛くないように、足で受け止めてやるのも忘れないベッツ。とりあえずヴァイカも止まり、安堵のため息をついた。


「ふい~、なんとかなったな」

「ふぇええ」

「おおぃ、泣くな! 女の涙は勘弁だ。それより軽すぎるぞお前、飯食ってるか?」

「・・・食べてない」

「ちゃんと食べろ。これだけ出てるところが出ていて、どんな体の構造だ?」


 良い場面なのにまたベッツが際どい発言をしたとルイはため息をついたが、チャスカの様子がおかしかった。ベッツから離れようとせず、その両腕をベッツの頭の後ろに回したのだ。


「・・・じゃあ、あなたが食べさせて?」

「・・・おお?」

「姫様、番を見つけた。暴れてごめんなさい。でもこの人と行っていい?」

「えぇ?」


 ベッツに抱きつきながら頭を下げて謝罪するチャスカに、ソールカが腰かけた岩からもう少しでずり落ちるところだった。

 力ずくで言うことを聞かせる以外、一度も謝罪などしたことのないチャスカ。その彼女が今、確かに謝罪を口にしたのだ。

 そして地面にへたり込んだままのヴァイカも、呆然としながら予想外のことを口にした。


「・・・姫様、すみません。私はこの男の番になるしかないようです」

「はぁあ!?」

「女の大事な部分を二か所も触れられてしまいました。この身は穢れました。この助平爺を番にするのは癪ですが、責任を要求するしかないようです。何より、私の本能がこの男を強者だと認めています。申し訳ございません、しばしお傍を離れます」


 こちらは立ちあがると90度の礼をして、ベッツの傍に寄り添った。その場の全員が口をあんぐりと開けて立ち尽くし、ソールカは今度こそ岩からずり落ちた。


「さぁ、責任を取れ!」

「責任ってなんだ?」

「とりあえず子種を寄越せ。無事に孕んだちゃんと殺してやる」

「怖ぇ! おい、ルイ、レクサス!」


 今度こそ本当に助けを求めるベッツだが、ルイもレクサスも他人のふりをした。


「ヴァルサスには報告しておこう。ベッツは幸せになったと」

「爺さんよかったっすね。いつも酒の席では振られた話ばっかりだったから。いきなりハーレムじゃないっすか。最高で最恐の2人だ。どうかお幸せに」


 嘘泣きするレクサスに、手を伸ばそうとしてヴァイカとチャスカに抑え込まれるベッツ。


「冗談じゃねぇ、こんなの俺が望んだ形じゃねぇ! こんな怖い女2人に囲まれて、平穏に暮らせるかぁ!」

「心配するな、外敵は私が排除してやる」

「ヴァイカに殺されそうになっても、私が時を戻して助けるよ?」

「そういうことを言ってるんじゃねぇ!」


 騒ぎ立てるベッツだが、徐々に2人によって離されていく。ソールカは呆然としてそれを見送り、シュテルヴェーゼが物珍しそうにソールカに声をかけた。


「口を閉じたらどうだ、ソールカ。太陽の戦姫がそんな顔をするな」

「・・・無理、開いた口が塞がらない。現在最強の戦姫2人が同時に人間の爺に娶られたのよ? これで口が開かなかったら、一生口が開かないわ」

「そうかもしれないが」

「銀の一族の終焉かも。どうしよう?」

「お前もいっそ番を見つけたらどうだ?」

「それ、いいかも」


 シュテルヴェーゼの冗談にソールカが同意したので、本当にまずそうな顔をするシュテルヴェーゼ。それを面白そうに眺めるラ・フォーゼ。



続く

次回投稿は12/15(火)13:00です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無自覚最強ハーレム主人公たるジェイクに続くオッサンハーレム主人公! ベッツ頑張って、、 ソールカはヴァルサスかライン、グウェンドルフもありそうです [一言] よく考えるとドゥームもハーレ…
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