戦争と平和、その618~解ける封印㊳~
「怯えていたのではない!」
「俺の分析を待っていたのだ。我々の攻撃方法で相手の防御を突破するためにな」
「結果は?」
「ふん、いずれ戦うかもしれぬ相手に種明かしはせぬ。俺たちは勝手にやらせてもらおう。で、誰が一番槍を務めるのだ? 物理攻撃が効かぬ相手ではない。気を引くだけなら誰でもできることはそこの爺が証明しただろう?」
「誰がジジイだ!」
「ならば俺が行こう」
互いに牽制しあう者達をしり目に、暴れ狂うウッコに突撃していったのは、なんとベルゲイだった。
他の者があっという間もなく、単騎でウッコに向かって突っ込んでいく。ここまでどこにいたのかというほど気配を消していたベルゲイだが、ティタニアだけがその表情を捉え、そして横を通過するベルゲイと一瞬視線があった。
「――なるほど。最初からずっと一撃に備えて気を練っていたのですか。だからオドを奪われても、倒れずにいられたのですね」
「太古の巨獣よ、拳を奉じる一族が長ベルゲイ、推して参る!」
ベルゲイはウッコの猛攻を受け流し、致命傷をぎりぎり避けながら懐に入り込んだ。限界まで吸い込み、丹田に溜めた力を爆発させる。倍にも近いほど隆起した筋肉を、息を吐きながら脱力しつつ打ち込む。
「フゥウウウウ!」
拳は瞬間音速を超え、空気の壁を打ち抜く音とともにウッコの腹に命中した。ウッコの胴体がくの字に折れ、背中に抜けた衝撃でウッコの背部の体毛が舞った。
「凄ぇ爺だな、今度一杯飲まねぇか?」
「抜かせ、同じような歳だろうが」
ベルゲイの背を蹴ってベッツが笑いながら飛ぶ。だがウッコは大打撃を受けながらも、まだいくつもの頭部が警戒を解いていない。
当然のようにベッツを迎撃すべくいくつもの頭が飛んできた。
「おっと、残念。そいつは『虚』の方だ」
ベッツの姿が消え、ウッコの正面に突然現れる。そして人型となったウッコの首の部分に、深々と剣を突き刺した。
「魔獣討伐はヴァルサスの方が得意だがなぁ、俺も囮ばっかりってのは我慢ならんのよ。ちょっとばかり死んどけ、な?」
「凄い人間、ちょっと惚れた」
ベッツの背後からさらにヴァイカが現れる。ベッツに迫る首を軒並み斬り払いながら、さらにベッツの剣を蹴りで押し込んだ。ウッコの頭がたまらず崩れたが、斬り払われた端から再生する頭がヴァイカに迫る。
それらを宙に舞ったヴァイカの武器を取って叩き落とすベッツ。
「油断してねぇか、姉ちゃん」
「問題ない、が。良く合わせられる」
「俺達、相性がいいかもなぁ?」
その瞬間、ウッコの胴体が変形し、がばりと口が開いた。口の奥には陽光の如き光と、大火炎が見える。
「!?」
「やっべぇ!」
その大火炎が放たれる瞬間、ライフレスの《死せる太陽による判決》が口の中に飛び込んでいった。ウッコの背部が何倍にも膨れ上がり、限界を超えて背中に何本もの血筋を噴き出した。
ライフレスが息巻く。
「乳繰りあっている場合か、貴様ら!」
「助かったぜ!」
「まだ、油断しない!」
ウッコが形状を変える。人間部分は融けるようになくなり、再度巨大な赤子にも似た手足が背中から生えた。
頭には山羊のような角が生え、ライフレスの魔法を受けたことで醜く膨れ上がった部分を捨てて新たな体を作ろうとしている。
「再生が早過ぎる!」
「核はどこ、リサ!?」
「右腕、頭はダミー!」
鼓膜の破れたリサに声が届いたわけではない。だが何を必要とされているかは聞かずともわかる。リサはウッコの右腕を杖で指し、その合図に応じてブラディマリアが飛び出した。
「一族の恨み、ここで返す!」
「マリア、間違えるな。風、火、土の順だ!」
「うむ、任せろ旦那殿!」
ブラディマリアが放つ大出力の三連撃。魔術で組んだ風の刃が腕を落とし、口から放たれる火が腕を焼き、さらに土の魔術を発動させて潰さんとする。
《天地崩壊》
残りの体の部分がかろうじて天井から降り注ぐ落石をせき止めるが、その間に焼けた腕は変化し、脱皮するように次の腕が出現する。
続く
次話投稿は、11/19(木)15:00です。