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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その606~解ける封印㉖~

「爺さん、死ぬ気か?」

「そうだ、老い先短い命をなぜ散らしたがる?」

「なんて言い草だ! そうじゃねぇよ、ちゃんと目算があらぁな。あの化け物、ちゃーんと目で見てやがる。だったら、俺なら虚を突ける。あの戦姫のねえちゃんたちは身体能力だけで、技術がねぇ。ただ稼げるのは30呼吸だけだ、それ以上は無理だからな。だからあと10呼吸、残りのお前らでなんとかしな」


 ベッツが既に結界の外に出たのを受けて、レクサスがため息とともに動いた。


「んじゃあ5つだけ俺が。リサちゃん、センサー能力で気を逸らすの、やる余裕あります?」

「できなくはありません。が、あれだけの頭と目があるのです。どれほど効果があるかは知りませんよ?」

「十分すよ。あいつが混乱してくれりゃあ、それで十分っす」

「なら残りの5つは俺だ。おい、イブラン。お前の透明になるそのローブを貸しやがれ。ちったぁマシだろ」

「本気ですか、あなた」


 イブランが文句を言いながらも、ローブを手渡す。ラインがそれを纏うと、首と足を残して気配が消えた。


「ははっ、やっぱり便利だな。これとダンススレイブで何とかなるだろ」

「返してくださいよ。辺境の魔獣を素材にしているとはいえ、貴重なことには変わりがないのですから」

「さーて、どうかね」

「待てお前達、防御の魔術くらいはかけてやる」

多重防護鎧プレートメイル


 ディオーレが出撃する三人に防御魔術をかける。見た目は変わらないが、金属そのものの輝きが増したようにも感じられた。

 ディオーレが真剣な表情で三人に忠告する。


「あくまで一時しのぎだ。時間と共に効果は弱まり、一撃耐えるかどうかも保障はない。あまり頼るな」

「ははっ、それでもありがてぇっす」

「んじゃあちょっと言ってくらぁ。飛びこんでくる間合いを間違えるなよ?」


 ベッツがそう言って先陣を切った。その背中を見ながら、リサがぼそりと呟いた。


「さて、もう一つの仕掛けが間に合うまで時間を稼いでくれますか・・・」

「仕掛け?」

「こっちの話ですよ。それより、ウッコの核の移動が早くなっています。やはり進化しているようですね」

「そうかぁ。じゃあこれが最初で最後のまともな討伐機会かもね。長引かせると厄介な手段を持ちいることになりそうだ。ここで仕留めてしまおう」


 中層の管理者が両手に魔術を展開し始めた。防御魔術も維持していることを考えると、3つ同時の魔術展開。そのことがわかるクローゼスやミュスカデは、この男が恐ろしくてたまらない。


「(これほど高等で種類の違う魔術を複数展開するとは、なんて奴なの)」

「(魔術士としては極みに到達しているんじゃないのか。精霊への親和性が私たち魔女よりもよほど強い。それに――精霊と対話するんじゃなく、強制的に命令して従えている。とんでもない魔術士だわ。ウッコよりも、この男を仕留めた方がよいのではないかしら?)」


 そんな魔女たちの疑念の混じった視線など気にしていないのか、中層の管理者がルイに話しかける。


「ねぇ、君はたしか氷の魔術が使えるよね?」

「・・・それがどうかしたか?」

「呪氷剣。あれなら通用するよ、準備しておいて。この距離からでも攻撃できるでしょ?」


 中層の管理者の言葉に従い、ルイが魔力を解放する。髪色が白く青く染まり、抜き放った刀身も同じく染まり、冷気を放ち始めた。


「なぜ通じるとわかる?」

「防御魔術にしろ性質による防御にしろ、複合属性の魔術には対応できないからさ。複合属性を混在させた防御魔術なんて存在しないし、構築に時間と手間暇がかかり過ぎて、意味がない。君の呪氷剣は意図して使っているかどうか知らないけど、闇と氷の複合属性だよ。通るはずさ」

「もう一度聞くぞ。なぜワタシの魔術を知っている? この遺跡ではまだ見せていないはずだが?」

「――魔術士だからね、見ればわかるさ」


 ルイは不審がりながらも剣を構えたが、クローゼスは納得がいかなかった。氷の魔女の自分ですらルイの性質に気付かなかったのに、そんなことがありえるのかと、疑念が渦巻いた。

 だがラーナに袖を引かれ、その疑念も今は胸にしまい込む。ラーナはルイの呪氷剣を見て、クローゼスと共に増幅しないかと持ち掛けた。可能だとして、ほんのわずかのこと。だがそのほんの僅かが生死を分けることもある。クローゼスとラーナはできることに取り掛かった。

 そしてベッツが前衛に加わったことで、ウッコの注意を一身に集める。


「ちょっと邪魔するぜ」

「人間、何を?」

「馬鹿な、無謀です」

「まぁ見てろ、お前らに足らないのは技術よ」


 ウッコがベッツを握りつぶさんと腕を伸ばしたが、掴んだはずのベッツの姿が消えた。そして数歩以上離れたところに姿が出現したことに、ソールカやヴァイカですら目を見張った。



続く

次回投稿は、10/26(月)16:00です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりベッツカッコいい。そもそも化物みたいな身体能力とか魔力とかではなくて、技術ってとこがかっこいいですね。 
[良い点] 封印が解けて死んでしまう前にティタニアが無事剣を奉じる相手を見つけられることを祈ってます。長い間それだけを使命に彷徨い続けたのですからね ドゥームにだけは奪われないように! おすすめとし…
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