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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
2045/2685

戦争と平和、その581~解ける封印①~

「ぬ、貴様は」

「オーランゼブル!」

「ブラディマリアに浄儀白楽か。こんなところで出会うとはな」


 突然目の前に降下してきた浄儀白楽を抱えたブラディマリア。曲がり角で出会ったとはいえ、互いにここまで接近するまで気付かないとは予想外だったのか、オーランゼブル以外は互いに警戒して弾けるように距離を取った。


「師匠殿、距離を!」

「要らぬ。それより浄儀白楽よ、どういうつもりか? このような遺跡にまで入り込み、この大陸に攻め込むだけでは飽き足らぬか?」

「俺の目的は変わらぬ。だが俺が攻め込む前にこの大陸が灰になってしまったのでは、意味があるまい。こちらにはブラディマリアもいる。ならば件の大魔獣をこの手で――と考えるのは、自然ではないか?」

「ふん、ブラディマリアがいたところでどうにもならぬ――だが、戦力は一人でも多い方がよい。丁度良かった、その女を返してもらおうか」


 オーランゼブルが掌をブラディマリアめがけてかざすと、ブラディマリアがふらふらと浄儀白楽から離れて、オーランゼブルにしなだれかかった。見たこともないブラディマリアの挙動に、浄儀白楽が瞠目する。


「それが貴様の魔術か!」

「一度わが魔術で精神束縛した者は、私以外に解く術はない。かけるのが面倒な分、完全に解除するまでにはいくつかの段階を踏まねばならぬからな。定期的に顔を合わせぬ限り束縛は弱くなるが、一度でも面と向かえばこの通りよ」

「そうやって、身の回りを意志持たぬ人形で固めているわけか。蝋で固めたような脆い立場から世界を動かすつもりか、貴様!」


 浄儀白楽が珍しく感情を露わにしたが、オーランゼブルは鼻で笑っただけだ。


「ふん、なんとでも言うが良い。意志を持つ者など私一人で十分」

「俺のことも、機会あらばそうするつもりだったか?」

「貴様は周到さと用心深さでいえば、黒の魔術士の連中よりも上だろう。貴様もラ・ミリシャーも、精神束縛するにはちと面倒な相手よ。やってできぬではないが、それほどの魅力を貴様たちには感じぬな。

 そもそも貴様の強さは、その狡猾さあってこそだ。精神束縛で自由意志を奪っては、意味があるまい」

「ぬぅ」

「さて、もう去ぬがよい。これから私は忙しい。ウッコを何としてでも仕留めねばならぬからな。必要とあらば、この遺跡の機能を一部使ってでも――」


 その時、浄儀白楽耳に囁く声が聞こえた。その内容に浄儀白楽は驚きつつも表情に出さぬようにすることに成功したが、それとはまた別にこの場に現れた者がいた。


「オーランゼブル!?」

「・・・ほぅ、これは僥倖。失ったはずの手駒がさらに向こうからやってくるとは。もはや計画には関係ないが、この好機は逃すべきではないか」


 オーランゼブルの前に現れたのは、アルフィリースたちである。何の前触れもなく突然アルフィリースたちが目の前に現れ、オーランゼブルはほくそ笑んだ。


「ウッコが目覚めた時には上手くいかないものと思ったが、中々どうして。たまには自分で足を運んでみるものだな」

「こんなところで何を?」


 アルフィリースの疑問にオーランゼブルは薄く笑っただけである。


「それはこちらが聞きたいところでもあるが、そなたたちは知らぬままでよいことだ。それよりもせっかくここまで来たのだ。私の魔術を味わっていくがいい」

「アルフィリース、下がれ! このハイエルフの魔術は――」

「光の戦姫ソールカか。丁度いい、貴様もまとめて我が配下に加えてやろう」


 オーランゼブルの陰がぶわりと伸びて、アルフィリースたちに迫った。アルフィリースたちは済んでのところでその影を躱したが、一部がアルフィリース、ライン、ラーナ、リサに触れる。

 そして彼らは崩れ落ちた。


「ぐ・・・う」

「あ・・・が」

「力が・・・入らない」

「それが私の魔術だ。本格的に魔術をかけるまでには時間がかかるが、私の影に触れた段階でほとんどの者は抵抗できぬ。まずは貴様たちの精神を塗りつぶしてやろう。弱い所を燻り出し、剥き出しにした精神は誰しも脆いものだ。貴様たちの底を晒すがよい」

「やらせん!」


 ソールカがオーランゼブルに飛びかかったが、その前にブロンセルと銀の戦姫が立ちはだかる。


「ブロンセルだと!? 貴様、同じ五賢者の死骸を操るのか? 恥を知れ!」

「それはただに亡骸だ。ブロンセルの崇高な精神は既に死んでいる。感傷的なことを言うな、感情を持たず戦うだけの機械である戦姫のくせに」

「その戦姫を妻とした男がよく言う!」


 ソールカがかつての仲間と戦闘に入り、オーランゼブルは改めてアルフィリースたちに精神束縛をかけんと手を伸ばそうとした瞬間、視界が暗転したことに気付いた。


「!? なんだ、これは?」


 それが浄儀白楽の方術だと気付いて、そして解除するまで一呼吸もない。オーランゼブルは視界が暗転しても、冷静に対応した。だがその暗闇で、オーランゼブルは確かに自分を虚仮にする笑い声を聞いたのだ。



続く

次回投稿は、9/6(日)20:00です。

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