戦争と平和、その567~廃棄遺跡下層⑧~
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下層の中心部への間にて足止めをくらい、その場に鎮座するドゥームとその一行。オシリアとミルネー、ベルゲイはその傍で同じく瞑想を行い、ケルベロスは何かしら文章を書き綴り、デザイアは暇そうに寝転がり、グンツは落ち着きなく歩き回る。
グンツが暇を持て余して吠えるたびに誰かに注意され、そうしてどれほどの時が流れたか。ドゥームの中で、ピートフロートの意識が突然声を上げた。
「(ドゥーム、面白いことが起こっている)」
「(今より面白いことが起こるのかい?)」
「(我が主、ノーティス様がここにいる。ずっと連絡がつかなかったのに、どうしてかはわからない、が――状況を打破するには、丁度良いと思わないか?)」
「(随分と協力的になったね、君も。今度は何を企んでいる?)」
ドゥームはくすりと笑った。口先三寸で戦争を起こしたこともある、元闇の上位精霊ピートフロート。久しぶりに話しかけてきたと思えば、思わぬところから思わぬことが起きるものだとドゥームもおかしくなる。
だがそれはピートフロートも同じなのか、ドゥームの意識の中のピートフロートは笑っていた。
「(フフフ、私も面白いと思っているのさ。どんなに呼びかけても、ついには私が消滅する時にすらうんともすんとも言わなかった怠惰な主と、こんなところで再開するのだから。一度くらいあっといわせてやらないと、元常夜のいらずら精霊としては気が済まないねぇ)」
「(なるほど、その点では僕とも共通するわけか。さて、どうやってアッと言わせてやるかだけど、良い案があるかな?)」
「(まだ主が私を下僕と思っているなら、話は簡単だね)」
「(ほほぅ・・・なるほど)」
二人は意識の中で打ち合わせをすると、ドゥームはぱちりと目を開けた。その様子にオシリアとベルゲイが気付き、彼らも目を開ける。
「何かあったかしら?」
「動きがあった。仕掛けるよ」
「何をだ?」
「もちろん、ここを突破するために。そして、ここから先の戦いがさらに面白くなるように」
そう言ってドゥームは最高に不敵な笑みを作った。
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「この光る道に沿って進めばいいのか?」
「うむ、ピートフロートの気配もこの先ではあるが・・・」
「順調すぎて気に食わないね」
グウェンドルフ、ノーティス、アースガルは降りたその場で悩み、立ちつくしていた。道筋は示されている。だがこのまま進むことが正解かどうか。
ノーティスがピートフロートの気配を感じ取ったことで、逆に彼らは悩んでいた。何がこの先にいるのか。本当に中層の管理者の言葉に従って進むべきなのか。
彼らの歩みを進めたのは、再度の地鳴りだった。
「下層・・・いや、中層か」
「戦いの振動が届いたのか。一体何が暴れている?」
「ウッコの戦いだとしたら、危険だな。いつこの下層に来るやもしれない」
「そんなことがあるのか?」
「ないなんて、誰にも言えないだろう」
アースガルの言葉に、ノーティスが歩みを始めた。
「どちらにしても、進まざるを得ない。ただし、慎重にな」
「そうだね。やはりマナは使えないようだ」
「しかし、ここは何の目的で作られたのだ? どうやら、人間大の何かが生活するように作られたようだが」
グウェンドルフの言葉を受けて、ノーティスが周囲を見渡した。
「何の目的も何も、居住区だろう。上は製造プラントと言っていたな。作るのなら、消費する人間がいるはずだ。そして、人間なら製造場所と居住区を隣にはしない」
「だが、人の気配はないぞ?」
「何らかの理由でいなくなったのか、最初からいないのか。だが管理者が存在すると言っていた。そやつが何を考え、何をしているかが問題だ。遺跡の機能を明確な意志をもって行使する存在がいる。それだけで厄介極まりないことだ」
「わからないことだらけだが、その答えが先にあることを望むよ」
アースガルの期待は他の二人にとってももっともだったが、やがて彼らは光の石板が示す区画に来た。そこで三人が見たのは、ピートフロートを踏みつけ、待ち受けるドゥームの姿だった。
続く
次回投稿は、8/11(火)22:00です。しばらく連日投稿です。