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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
2029/2685

戦争と平和、その565~廃棄遺跡中層㉕~


 そのノーティスの懸念など他所に、中層の管理者は目にも留まらぬ速度で光の石板の操作を続ける。その手が徐々に見えぬほどに速くなり、ついには変形を始めた。指が増え、一部には触手のようなものが増えて、指の代わりをしているではないか。

 人間だと思っていたが、とんだ異形へと一部変形した中層の管理人を見て、唖然とする三体。だがその三人のことなど放っておいて、中層の管理者は頭をかきむしった。


「ちっ、処理が追いつかねぇ! 直接出向いた方が早いんだろうが、下層への侵入の権限はこっちにもないんだよな! 申請を――いや、それもダメか。どうしたら――」

「おい、お前――その姿は」

「なんだよ、目的に応じて体を最適化しただけだろ? 何を驚く――そうか、キミたちがいるじゃないか!」


 中層の管理者はおもいついたように手を叩くと、指を鳴らしてはしゃいだ。そして彼らの手を取ると、一瞬で別の場所に転移した。


「転移魔術だと?」

「こんなに早く起動を?」

「驚かない、驚かない。得意魔術の一つだから。それより、ここだ。そーれ!」


 壁に仕切られた出入り口のない部屋の中、管理者が手をかざすと床がゆっくりと開いて下への足場が形成される。

 暗闇の中、縦横に浮き沈みする様々な形の透明でうっすらと光る足場。それの一つが到着すると、中層の管理者は彼らをそこにぐいぐいと強引に押しやった。


「キミたちが下層に行ってきておくれよ、ボクは権限の問題で行けないからさ。不法侵入者のキミたちならそもそも資格云々が関係ないしさ、ちょっと下層に行って遺跡のスイッチを入れて来てくれないか? そうすれば、緊急用の電源が入って、中層の稼働率を一時的に上げることができるんだよね。

 この石板が導く方向へ行って、これを差し込めばいいから。よろしく頼んだよ!」


 そういって彼らに薄い掌程度の石板を手渡してきた。もう一度指を鳴らすと、足場が動き出し、中層の管理者が手を振って彼らを送り出した。


「それに乗ってたらちゃんと着くからね――余計なことをしたら、迎撃システムか魔獣にやられるから要注意!」

「待て、まだそんなことをするとは一言も――」

「選択肢なんてキミたちにはないよ! 僕が直接力を振るうわけにはいかないからさ、お願いするよ!」


 そういって魔力の解放をした中層の管理者を見て、ノーティスがびくりとした。


「馬鹿な――この魔力はグラハムの奴よりも――ウッコよりも多いだと?」

「当然だろ? 中層の管理者をするってことは、その気になったら中層の連中より強くないとできないんだよ。ライフレスなんかに後れをとるかよ」

「待て! 貴様、なぜグラハムがライフレスと知っている?」

「あ、やべ。じゃ、そういうことで!」


 管理者が手を振ると足場は彼らを包むような球体に変化して動き出し、出ることはできなくなった。

 そしてゆっくりと下降する球体を見て、中層の管理者が怪訝な顔をする。


「あれ、下層の一部に明かりが? 今下層の管理者はいないはずなのに――侵入者が下層にもいる? どうやって? 直通路は使えないはずじゃあ――ま、いっか。しーらね」


 中層の管理者にとって電源が入るかどうかが重要であって、下層の状況や、ましてやそこに向かったノーティスたちの生存など、知ったことではなかった。

 そして球体に包まれながら、ノーティスは呆れたようにどさりと寝転がった。


「――なんて自分勝手なやつだ。あれが管理者? アースガルよ、知っていたか?」

「いえ、私が知っている管理者とは何もかもがかけ離れていて――彼らは責任感が強い存在だと思っていましたが」

「まるで違ったな」

「ええ」


 二人に会話に、グウェンドルフがおずおずと加わった。


「私は管理者とは直接面識がないが――ああいう感じではなかったのか?」

「そうだ、まるで違う。丁度いい、グウェンドルフ。さっきのあいつ、どう見えた?」

「どう、とは?」

「正直な感想をくれ。その意見が聞きたいんだ」


 ノーティスの言葉に、グウェンドルフはしばし考えて答えた。



続く

次回投稿は、8/5(水)22:00です。

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