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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
2021/2685

戦争と平和、その557~廃棄遺跡中層⑰~

***


「レイヤー、これの使い方、わかる?」

「ああ、これは・・・こうだね」

「きゃっ」


 レイヤーの指示した通りに筒状のスイッチを押すと、光の柱が突然照射された。その反動でルナティカが驚き、年相応の悲鳴をあげて尻もちをつく。

 光の柱は壁に命中すると赤く壁を溶かしたが、音はなく爆発などはしなかった。


「何、これは」

「熱線を出す――魔術でいうなら、超高密度の熱の塊を打ち出す武器ってところだね」

「音がなかった」

「背後から撃てば、相手気付かれることなく即死させられる。ほとんどの鎧が無効だね。殺傷能力を保持できる距離がそれほど長くないかもしれないから、熟達した弓矢の方がましな場合もあるかも。

 距離と威力をかねるならこっち。威力を押さえても距離を重視するならこっち」


 レイヤーがそれぞれの武器をルナティカに見せるが、どうやって扱うのかも想像がつかない。ルナティカはそれらを手渡されても、不思議そうにこわごわと眺めるしかできない。

 レイヤーは他の武器を調べながら、ぺらぺらと説明を続けていた。


「安全装置をつけているから大丈夫だよ。そいつらは音も凄いから、撃つと気付かれるからね・・・うーん、お目当ての武器はどこだ?」

「目当て。どんな?」

「単振動剣か、光の剣があるはずなんだけど、場所がわからない。まいったな、広すぎる」


 レイヤーとルナティカは武器庫と思しき場所に来ていた。レイヤーがここなら中層の化け物たちに対抗できる武器があるはずだと言ったからだ。

 そのレイヤーは一つ一つの武器を手に取り、使えそうな武器を集めながら何かを求めて動いているようだった。レイヤーはこれは使えない、これは重い、などと口の中で呟いているが、その一部を説明されただけでも相当な威力の武器ばかりで、刃物の収集や研磨を趣味とするルナティカでも、恐ろしさを感じるものばかりだった。

 レイヤーいわく、扱い方は説明さえあればだれでもできるもので、簡単だと言っていた。こんなものを軍隊が持ったら――ルナティカはそんな想像をしてぶるりと震えた。同時に、アルフィリースがこの武器庫の存在を知ったらどうするだろうかと思ったのだ。

 そんな折、ルナティカは黒くて丸い球がいくつも置いてある棚を見つけた。それらを手に取っていると、レイヤーが傍から一つをひょいと持ち上げていた。


「これは――使えるね」

「どうやって使う?」

「両端にある突起を同時に押すと、音がするだろ?」


 ピッ、ピッと音がする。そしてレイヤーがそれを地面に転がした。


「で、五回目で爆発する」

「え?」


 説明と同時に、黒い球が一瞬で人間の倍以上の大きさに膨らんだとように見えた。黒い球が消滅したあとは地面が抉れ、何も残っていない。音はなかった。


「こ、これは」

「重力制御の最高位魔術と同じ効果を再現したみたい。マイクロブラックホール爆弾だってさ」

「マイクロ――それも声が教えてくれる?」

「だね。ここに来てからずっと声がしているから、うるさくって。そこかしこにある武器の説明を、片端からするんだよ? 必要なものだけでいいのにね」


 レイヤーが小さくため息をついて、歩みを早めた。その黒い球をいくつか懐にしまい、歩いて行く。ルナティカは恐ろしかったが、今後のことを考えて何個か拝借しておくことにした。

 そして武器庫の様子が変わった。人が扱える武器から、明らかに巨人族からそれ以上のサイズへと変化したのだ。


「ここは?」

「――大きな生物が使用することを想定して作った武器みたいだね。巨人や、あるいはここで培養している生体兵器が」

「生体兵器?」

「アノーマリーの魔王みたいなものだよ。そいつらがこの武器を使うことを想定したみたいだ。

 たとえばそこの筒。さっきルナティカが使った武器はレーザー銃って言うらしいけど、これはレールガンって言って――説明はよくわかんないけど、光に近い速度で物体を打ち出す武器みたい」

「攻城戦に使う?」

「うーん・・・この大きさだと、使ったら、数発で城塞都市が吹き飛ぶみたいだね」


 レイヤーもびっくりしたように説明していたが、ルナティカは心底恐ろしかった。なぜなら、そのレールガン何某が何十もそこに並んでいたからだ。これが全て動いたら――どんな防御も意味がない。

 レイヤーはさらに説明を続けた。


「あっちのが軽量化して、巨人なら扱えるようにしたものみたいだね。威力は制限されるし、銃身は一発ごとに冷却が必要で連射性はないけど、何百も運用ができる。欠点もあって、十数発で銃身が限界みたいだけど」

「その間に街が何個も滅びる」

「そうだね。もっと危ない兵器はいくつもあるけど」

「誰が、何のためにこんなものを」

「いや、こんなものはまだマシな方らしくて。かつての戦場じゃあこれが標準装備だったって――」


 レイヤーがさらに恐ろしいことを言いかけて、歩みを止めた。そして進路を突然変更していた。


「誰かいる」

「こんなところに?」

「あれは――ティタニアか」


 レイヤーはティタニアが倒れているのを見ると、その場所に駆け寄った。



続く

次回投稿は、7/20(月)23:00です

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[一言] >「きゃっ」  レイヤーの指示した通りに筒状のスイッチを押すと、光の柱が突然照射された。その反動でルナティカが尻もちをつく。 ルナティカさん元々誰かを振り回す側だったのに、最近はレイヤー…
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