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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
2010/2685

戦争と平和、その546~廃棄遺跡外周①~

 グウェンドルフは語る。


「それにしても、お主があの土地を動くとはな。死を覚悟のことか」

「その通りさ。それこそが私の寿命だと考えているけどね。長く生きた、終わる時を選択できる私は幸せだ」

「ならば多くを言うまいが、まさかアルフィリースに関わることだとはな」


 アースガルは目的も事情も話していた。アースガルはアルフィリースの小手を見てグウェンドルフとの関係を察していたが、改めて聞くと運命とは数奇なものだと思うのだ。

 グウェンドルフは旅の中でアルフィリースがアースガルに師事したと聞き、さすがに驚きを隠せなかった。


「むしろ私は、君がアルフィリースをもっと手厚く守護していると思っていたのだけどね?」

「言うな。真竜の長である私が特定の個人に肩入れするなど、本来あってはならないことだ」

「そんな倫理観なぞ捨ててしまえばいいのだよ。誰が得する訳でもなく、君だって納得していないだろうに。鱗を分け与えて小手を作らせるほどだ。そうするくらいには気に入っているのだろう」

「・・・それはだな」

「それに、彼女は御子として選ばれている。気づいていないわけではないのだろう。真竜であるなら、彼女を保護し、むしろ仕えてもよいくらいだ。そうしなかったのには、理由があるのか?」

「お主こそ気付いているのだろう? アルフィリースの中にいたのは、御子だけではない。訳の分からぬもう一体がいたのだ。それこそアルドリュースが危険視し、封じ込めた存在だった。そのような者に、私が味方するわけにはいかぬ」


 グウェンドルフが強く言い切った時、アルネリアが見える位置に到達していた。夜も更けているが、大陸平和会議が開催されているせいで、周辺部には明かりが十分に灯り、都市の輪郭を浮かび上がらせている。

 グウェンドルフは目立たぬように飛びながら、降りる場所を探した。アースガルは下の様子を見ながら、グウェンドルフに諭した。


「君の時はどうだったか知らないが、アルフィリースはその得体のしれない何かとも上手くやっているようだったよ。おそらくは、オーランゼブルの配下か、あるいは協力者だったのだろうけど」

「・・・驚くところなのだろうが、なぜか納得してしまうな。あの子は辺境の魔物とすら心を通わせる時があった。もちろん人間に害意しか抱かぬ魔獣もいたが、時間さえあれば彼女が口説き落とせぬ魔物も魔獣もいなかった。私もほだされたし、最初は魔獣使いの素質を持つのかと思っていたが」

「違うね、彼女の真の能力はもっと恐ろしいものだ。彼女が意図してそれらを振るうようになったとき、世界は形を変えてしまう。アルフィリースは薄々そのことを感じつつも、意識していないようにさえ見えた。

 彼女に今は邪念がないが、彼女がこれから困難に突き当たるに従い、人生に絶望しあの力を意図的に使うようになったら――」

「その時は私が彼女の前に立つことになる。それがアルドリュースの遺言でもあり、私と彼が話し合った結果だったから」

「まさかそのために小手を授けたのか? あれは君の守護じゃなく、位置を報せる発信機のようなものか」

「もちろん旅の無事を願った。アルフィリースの前に敵意を持って立つなど、考えたくもない」

「そうだね。オーランゼブルもまさかそこまで考えていたわけではないだろうが――」


 アースガルとグウェンドルフが同時にぴくりと反応する。その視線が同時に同じ方向を向いた。


「あそこか」

「ああ、あそこは確か遺跡があったところだね。浄化の遺跡だったか? シモーラが守護者だった場所だ」

「そこからウッコの気配が漂ったとは、なんとも皮肉なことだ。あの大魔獣と再度まみえるなど、御免被りたいものだ」

「ウッコに応じて、戦姫ソールカも目覚めている。わざわざ大規模のソナーをうって、自分の覚醒を大陸に知らせたからね。もうあそこにいることだろう。戦える者は集まれと、そう告げているのさ」

「何体集合できるかな」

「エンデロードは来てくれるかもしれないね」

「暇を持て余して太っていたぞ。かつてのようには動けまい」

「それ、本人の前で言っちゃあだめだよ?」


 彼らは軽口を叩きながら、遺跡の上空に到着した。もちろん魔術で気配を消しており、彼らは遺跡の周囲に展開するアルネリアの部隊に気付く。


「ふむ、別にみられても構わぬが、少々面倒だな。ミランダかミリアザールがいれば話は早いのだが、そこまでわからぬ」

「じゃあ、隠し通路を使おう」

「隠し通路?」

「縦穴があるんだよ、この遺跡。シモーラに聞いたことがあるからね」

「私は初耳だぞ」

「君、その頃は人の話なんてろくにきかかなかったでしょ? まだ放浪の身だったころ教えてもらったんだ。指示するところに降りてくれ。そこにこっそりと抜け道を作ってある」

「悪い奴だな」

「お互い問題児だったから、我々は気が合ったのだろう?」


 にやりと笑ったアースガルにグウェンドルフは溜め息をつき、彼の案内に従った。そして地上につくと、彼らの背後からひっそりと忍び寄る気配に気付いた。



続く

次回投稿は、6/29(月)7:00です。

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