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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1996/2685

戦争と平和、その532~廃棄遺跡下層③~

「どういうことさ、筋肉じいさん?」

「その呼び名はどうかと思うが、――ここは作られてから一度も使われていないとしたら? だから何の記憶もないとは考えられないか?」

「一度も使われていない――なるほど、そういうことか。ここは『使っていた』のではなく、『これから使う予定』だったんだな。そうなると・・・」


 ドゥームの頭脳が回り始める。いかに他人を苦しませるか、人の考えていることを台無しにするのか。それのみに終始するドゥームの思考は、時にアノーマリーなどを上回る冴えを見せることすらあった。

 そしてドゥームは自分たちがいた住居――この周辺では一番高いと目されていたが――を出て、屋上から一帯を見渡した。闇であっても関係なく見渡せるドゥームの視力は、一つだけ様子の違う建物を捉えていた。


「――あそこか」


 ドゥームはいち早く仲間の元に戻り、次の目的地を指示する。


「さて、筋肉じいさんが助言ヒントをくれたことだし、次の場所に向かう」

「そこには何が?」

「ひょっとすると、この遺跡の管理者の記憶が残っているかもしれない。ねぇ、この遺跡が居住区だとして、なんのために作られたと思う? まだ使われていないとしたら、誰が、何のために?」

「「「・・・」」」


 誰も何も答えられなかったが、ケルベロスだけがぼそりと呟いた。


「――非難場所、だべか?」

「その可能性を僕も考えた。誰も使っていないけど、これほどの空間を用意する必要があった。広さだけなら、数十万人が暮らせる可能性がある。誰が、何のために、これほどの空間を? 精霊はいないが、一瞬だけど明かりが灯った。その理論は? どこから光の元を?」

「アノーマリーが以前、工房に明かりを灯す仕掛けを作っていただ。アノーマリーは魔術なんて使わなくても、明かりを灯すことはできるって言ってただ」

「そうだよね。アノーマリーの研究の神髄はそこだった。僕も、ここはアノーマリーがもし永らえて研究を続けていたら――そんな可能性を見ている気分になっているんだ。

 逆に言えば、アノーマリーと発想が近しいということ。これを作ったのが僕の知恵の及ばぬ天才だとしても、近しい天才の発想を踏み台にすることでその考えに近づくことはできる。これらが巨大な一つの機構システムで動くのだとしたら、それを操作する場所がきっとあるはずなんだ。そこの記憶を辿れば――」

「この遺跡の秘密をいただくことができるってことだか?」


 ケルベロスの言葉にドゥームが頷き、ニヤリと笑った。


「その通りだ。冴えているじゃないか、ケルベロス」

「いやぁ、面白くなってきただな」

「おい、2人で面白がってんじゃねぇぞ。どういうことが説明しやがれ!」

「うるさいぞ、グンツ。わからないのなら、たまには黙ってついていけ」


 不満を口にするグンツを、ミルネーが窘める。


「お前は2人の意図がわかったのかよ、ミルネー?」

「ふん、さっぱりわからん。だが口数の多い男は嫌いだ」

「んだとぉ!?」

「仲良いよね、君たち」

「「ふざけるな!」」

「ひえっ」


 ドゥームがグンツとミルネーの2人に同時に怒られた。それを見て、ベルゲイが妙な顔をする。


「おかしなものだ。貴様らはこのうえなく邪悪な気配を感じるのだが、まるで子どものように無邪気でもあるな」

「・・・こどもはある意味では残酷でもあるわ。それに邪悪だからといって、常に悪意を振りまいているとは限らない。時に親友のように近づき、そして相手を絶望の底に落とす。そういう邪悪もあるわ。誰かを幸せにしようとして、他人を不幸せにすることもある。良かれと思ってやったことが、相手にとっては迷惑なこともある」

「それではまるで、人間の行為そのものではないか?」

「そうね。だから人間そのものが邪悪だという説もあるわ」


 オシリアの言葉に、ベルゲイは唸った。だがそこで一気にオシリアの言葉を否定するでもなかった。


「――私の言葉を即座に否定しないあたり、あなたも自覚があるのでしょう? 剣帝に対する怨讐を抱いて生活してきたあなたたち、人間よりも半ばこちらよりだわ。それがわかっているから、あなたは私たちと同行することにさほど抵抗感を抱かなかった」

「・・・その言葉が一部合致していることは認めよう。だが貴様らのようにただ他人を苦しめることだけを考えている連中とは一緒にしないでもらいたい」

「あら? 私たちだって、仲間のことはそれなりに考えているわ。それなりにね」

「楽しそうに話しているじゃないか。じいさんの癖に頭が固くないのはいいね」


 ドゥームが話に割って入って来、ベルゲイはぐいと前に出てドゥームを問い詰めた。


「一つ聞いておきたい。ティタニアをこの手で始末、あるいはその行く末を見届けさせる気はあるんだろうな?」

「そりゃあね。だからここのシステムを掌握しに行くんだろ? 僕だってティタニアには世話になったんだよ。気にかけていないわけじゃない。ただどのような形になるかまでは断言できないね。僕だって未知の領域にいるんだから」

「その気があるならいい。貴様と共にいても望みが果たされないのなら、別行動をするまでだからな。まだ行動は共にさせてもらう」

「従順なんだか、反抗的なんだか・・・」


 ベルゲイの言葉を聞きながら、ドゥームもまた「ま、それがいつになるのかはわからないし、間に合わないかもしれないけどね」などと考え、次の目的地に向かうのだった。



続く

次回投稿は、6/1(月)9:00です。

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