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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1990/2685

戦争と平和、その526~廃棄遺跡中層②~

「あった、これかな」

「それは?」

「多分、浄化装置。これを使えば水が飲めるはず。飲料水の確保は重要でしょ?」

「たしかに。使える?」

「問題ない。遺跡の稼働能力をこちらに回せば――こうかな?」


 レイヤーが操作する器械がヴン、と低い起動音と共に少し揺れ、そして動き始めた。目の前の蛇口から透明な水が溢れ、レイヤーはそのあたりの筒の蓋を開けると、中身を捨てて入れ替えた。


「とりあえず、10本ほど作っておこう。何があるかわからないし、何日もここにいることになるかもしれない」

「ウッコはどうする?」

「ハンスヴルが勝ってくれればいいけど、それは無理だろう。それに彼が勝ったとして、僕たちの安全が確保されるとは限らない。他にも心配なことはあって――」


 レイヤーが水を筒に詰めながら、何かの気配を感じ取って別の方を振り向いた。まだルナティカは何も感じないが、耳を澄ますと、カシャン、カシャンと何かが歩いてくるのが聞こえてきた。


「何か来る?」

「マリオネットビースト――起動しているのか。誰かここにいるんだな。ルナ、逃げるよ」

「マリオ――何?」


 返事を聞く前にレイヤーとルナティカは駆けだしていたが、その直後、うず高く積まれた食料の山の陰からぬっと四足歩行の獣が姿を露わした。

 青い体毛に、長い毛。足の一部は皮で覆われていないようだったが、巨大な目が一つぎょろりと動いてレイヤーとルナティカを捕えた。


「飛んで!」

「うわっ!」


 レイヤーがルナティカを抱えて飛ぶ。その跳躍で食料の山を一つ越えて盾にしようとしたが、獣が放ってきた衝撃波がかろうじて止まった程度にしかならなかった。先ほどの浄水設備は一瞬で粉微塵になり、ルナティカは円形にくりぬかれた食料の山を見て、青くなった。


「これは何? 何を撃ってきている?」

「空気の塊だよ。魔術の『圧搾大気』のさらに密度が高いやつで、鉄の鎧くらいなら簡単に粉砕する。この食料の山も粉砕するみたいだね」

「冷静に言ってる場合?」

「たしかに」


 レイヤーが後方を指さすと、そこには後から後からぞろぞろと同じ獣が湧いてくるところが見えていた。ルナティカは青ざめ、レイヤーはため息をついた。


「レイヤー、急いで距離を取ろう」

「いや、困ったな。あそこまで数が多いと逃げ切れない。だってあいつら――」

「え?」


 レイヤーのぼやきと共に、先頭の一体が地を蹴ると――


「足が速いんだよ」


 一歩でレイヤーとルナティカが隠れた食料の山に到達する獣。無機質な一つ目が、2人を捉える。


「うっ!?」

「仕方がない、ちょっと数を減らそう」


 レイヤーがシェンペェスとティルフィングを抜く。獣が口を開けたその瞬間、その顎を蹴飛ばして空気の塊を暴発させる。頭から上が吹き飛んだ獣だが、その腕がレイヤーを横殴りにする。


「レイヤー!」


 だがレイヤーはその衝撃を回転しながらいなし、別の食料の山の上に着地した。そこに次々と獣たちが襲い掛かる。

 獣たちは一体何でできているのか、ティルフィングですらろくに通らぬほど外皮が固かった。だがレイヤーは獣たちの間を高速で動き回りながら、空気の塊を同士討ちさせて、相手の数を減らす。

 獣たちはあとからあとから湧いてくるが、その数が少し減り始めた。ルナティカは戦いに巻き込まれないように慎重に距離を取っていたが、獣たちが気付こうとするたびに、レイヤーが気を引いてルナティカの方に向かわせない。


「そろそろかな・・・?」


 戦局が膠着したと判断したか、獣たちの行動に変化が出た。一定数の個体が距離を取り、数体の獣がレイヤーの周りをぐるぐと回って動きを妨害する。レイヤーは慎重に様子を窺ったが、獣たちが突然レイヤーに飛びかかり覆いかぶさると、距離をとった獣たちが仲間ごとレイヤーに集中砲火を浴びせたのだ。



続く

次回投稿は、5/21(木)10:00です。

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