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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1979/2685

戦争と平和、その515~廃棄遺跡㉞~

「死ねぇ!」


 それは無造作に放たれた、体内の魔力の放出。魔術としての形態をとらず、体内にある小流オドをぶつけるだけの、魔術とも呼べぬ代物。だが他の生物と比べて桁違いの魔力を有するブラディマリアであれば、それだけで致命傷になる威力を持つ。

 ヴァイカもブラディマリアの攻撃の危険性を、瞬間的に察知する。まともにくらえば死を避けられないと知り、ヴァイカは本能のままに反撃を行った。


「風舞の八形、捻れ風穴」


 咄嗟に出た反撃のための一撃。相手の攻撃をいなし、そのまま反射する舞を放つ。至近距離でねじれたブラディマリアの攻撃は完全に反射できず、逸れた攻撃があらぬ方向に向かった。


「あっ」

「うっ」


 ヴァイカとブラディマリアが同時に叫んだが、その攻撃が命中したのはウッコの本体だった。ウッコにしてみればさほど大した攻撃ではなかったのかもしれないが、それでも血飛沫が飛び、ウッコに痛手を与えたことには変わりない。

 攻撃をくらったウッコは目をかっと開くと、首を伸ばして大きくいな鳴いた。


「ケェエエエエエエ!」

「ひょひょ、これは予想外の展開。まさか本体がもう起きるとは! こんなことをしている場合ではありませんねぇ」


 目の前に迫る二体の巨人に対し、袖に腕をひっこめると袖の中の腕が何倍にも膨れ上がるハンスヴル。巨人は自分たちの体躯ほどにも膨れ上がった腕を見上げ、そして叩き潰されていた。

 しゅるしゅるとまた萎んだ腕を袖から出すと、今度はその手に玉のようなものが複数握られている。それらでお手玉をしながらウッコに投げつけると、ウッコがハンスヴルの方をくるりと向いた。

 その目は限りなく血走り、明らかな敵意をもってハンスヴルを睨みつける。


「ひょひょ、これは極上の殺気! 滾りますねぇ。そう思いませんか、少年少女よ?」

「冗談じゃない、自殺は他所でやって!」

「もう遅いでしょう。戦って殺すしかありませんよ、ここを生き延びるにはね!」


 ルナティカがやや悲痛な声色で文句を言ったが、その時既に動き出している者たちがいた。ウッコが口の中に光り輝く白い炎を沸き立たせるのを見て、一番早く動いたのはなんとレイヤーだった。


「させるか!」


 炎がこの部屋を満たすことを察知し、レイヤーが一番に飛び出した。レイヤーに迫る触手は、ハンスヴルが球を投げつけ叩き落とす。


「ひょひょ、私の援護があると信じている突撃ですねぇ。甘いですが、心地よい!」


 レイヤーの突貫はウッコの喉を捕える。全力で地面を蹴ったレイヤーの体当たりは重く、ウッコは嗚咽とともに天井を向かされ、炎は暴発して不発となった。


「うわっ!」

「レイヤー!」


 吹き飛ばされて落ちるレイヤーを受け止めんと、ルナティカが走る。そして喉を蹴られて暴発した炎で苦しむウッコが、地団太を踏むように地面を叩いた。声にならない悶絶をするウッコが暴れ回り、部屋の中は揺れて騒然となる。


「うわわわ!」

「なんという衝撃か!」


 地震が間近で起きたかのように衝撃に、ジェミャカとヴァトルカは立つこともままならない。その中をブラディマリアと浄儀白楽は互いに合流し、チャスカはウッコに近寄ろうとしてままならず、ヴァイカは宙に飛んでいた。

 その目に、地面に一筋の亀裂が入ったのを見逃さない。


「好機! 大地舞、13形、奈落沈ち」


 ウッコの上で震脚のように腰を据えた二段蹴りを繰り出すヴァイカ。ウッコの自重とその威力に、たまらず岩盤が崩れ、その崩落にその場にいた全員が巻き込まれる。


「ひょひょひょ、まだ下があると? 楽しいですなぁ、伝説の魔獣とともに奈落巡りとは!」

「レイヤー、捕まって!」

「いや、ルナ。下に行くよ!」

「え?」


 なんとか踏みとどまろうとしたルナティカの手をすり抜けるように、レイヤーは下に向かう。ルナティカもまた、それに続いて下に降りることを反射的に選択した。

 そしてブラディマリアは羽を広げて浄儀白楽と共に残ろうとしたが、浄儀白楽がそれを拒否した。


「マリア、下に行くぞ」

「は? ウッコとともに落ちるなぞ、御免被る」

「この下に何がある? ウッコがいる階層よりも、下に何が? ウッコはもっと深くで休めばよかったものを、こんな人がはいりうる場所にいたのだ――そして、いやにあっさりと地面が抜けた。運命を感じぬか?」

「それは――」

「お前ですらいまだ知らぬ真実が待っているやもしれぬ。今はただ興味に任せてはどうか」


 浄儀白楽が笑顔になっているのを見て、ブラディマリアは諦めたようにため息をついた。この男が一度言い出したら聞かないのをブラディマリアは知っている。それに、確かにその言葉にひかれたのもわかるのだ。

 チャスカもまた、ジェミャカとヴァトルカを捕まえて崩落した穴に落下する。


「チャスカ姉! 追うの?」

「当然。あれを完全に復活させないと」

「制御できるとは限りませんよ? いえ、むしろできません!」

「だからいい。あの化け物ヴァイカを倒すには、ウッコを目覚めさせるしかない。それに、ソールカ姉さまも近くに来ている」

「姉さまが?」


 ジェミャカはこの逆境を逆転できる期待に、目を輝かせた。だがすぐにチャスカによってそれは曇る。


「お前たちは同罪、ソールカ姉さまは許してくれない」

「そんなぁ・・・」

「それより、深い。ちゃんと着地しないと、我々でも危ないですよ!」 


 そう言いながら、彼らは地の底の、さらに底へと落下していったのである。



続く

次回投稿は、4/28(火)11:00です。

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[一言] >「お前たちは同罪、ソールカ姉さまは許してくれない」 上位の戦姫には逆らえないんだから仕方ないんじゃ…… というか下手すると二人の存在忘れられてそう……
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