戦争と平和、その507~廃棄遺跡㉖~
「ルナ、危ない!」
瞳からは光線が放たれた。だがレイヤーの体当たりが早く、光の矢はルナティカから逸れる。光の矢は壁を抉っており、人間が受ければ粉々になることは想像に易い威力だった。
次の矢を目が放とうとする瞬間、ティタニアが目を十字に切り裂いた。
「どうやら斬ることに問題はないらしいですね」
「ティタニア。あの魔獣、やれると思う?」
レイヤーとティタニアが同時に赤と金の魔獣を見る。だがティタニアはつう、と汗を一滴垂らすと、乾いた笑いをこぼした。
「なんと・・・まぁ、無理ですね。あんな魔獣はどんな辺境でも見たことがない。辺境の王種よりも、はるかに上位の存在でしょう。あんな魔獣がこの世にまだいるとは。
今はまだよいですが、本体が起きたら逃げることすらできませんね」
「なら答えは一つだ。奥に行ってレーヴァンティンを持ってきて。レーヴァンティンがあれば倒せるかもしれないだろう?」
「それはそうかもしれませんが・・・分の悪い賭けには違いがありませんよ?」
「ま、やるだけやってみるさ」
「私はやりたくない」
ティルフィングを構えるレイヤーに、嫌々マチェットを構えたルナティカ。そしてティタニアの行動は早かった。
「すぐに戻ります。それまでもたせてください」
「何とかする!」
レイヤーの返事もまたずにティタニアは扉の奥に向かったが、ルナティカは冷静に状況を分析していた。
「何とかなると思う?」
「何とかしたいけど・・・まずいかな?」
「確認するまでもない」
目の前にはさらに数を増やした目と口。次々に尾の辺りから無制限に湧き出る触手のような相手に、レイヤーとルナティカの顔は青ざめていた。
そしてティタニアが部屋の奥に踏み込んだ。あの魔獣が完全に覚醒する前に戻らなければと思う一方で、あっさりと入れたものだと意外に思う。
「ふむ、あの魔獣はここを守護していたわけではないのですか? そうすると、レーヴァンティンを移動させた者と、あの魔獣をここに配置した者は別なのでしょうか。いったい誰がそんなことを」
あの魔獣をここに移動させることのできる者がいる。それは方法によっては実力など関係ないのかもしれないが、それでも十分に脅威にちがいない。
今まで戦ってきたどんな魔王よりも、黒の魔術士よりも上。ノースシールで戦ったバイクゼルよりも上なのではないかと予想される。この遺跡といい、しかも一部が稼働していることが疑わしいことといい、この世界への興味は尽きないとティタニアは感慨深くなった。
「そもそもレーヴァンティンを作ったのが誰なのか、そのこと自体も気になりますが。触れればその武器のことはある程度わかりますから、一体何を語ってくれるのか楽しみではありますね」
そう独り言ちたティタニアの前の、赤く輝き白く燃える剣が現れた。いるだけで強い輝きと気を放つ剣が、まるでティタニアを警戒するかのように強く揺らめていたのだ。
ティタニアは歩みをゆっくりにすると、ふぅとため息をついて気合を入れ直した。
「これは――気を抜くと、触れただけで燃え尽きますね。ここまで強い拒絶反応、頑固な気配を放つ剣は初めてです――が、触れないわけにはまいりません」
ティタニアの決断が揺らぐはずもなく、決意とともにレーヴァンティンの柄を握る。その時、ティタニアにレーヴァンティンの記憶とでもいうべき光景が流れ込んできた。
続く
次回投稿は、4/12(日)12:00です。