戦争と平和、その501~廃棄遺跡⑳~
「・・・かつて、誰かがいたのだな? 7つの遺跡を作った、誰かが。仮にそのウッコやアッカすら手なずけるほどの、誰かが」
その言葉に全員が振り返ったが、当のアルフィリースは驚きもせずに返答した。
「さぁ、どうでしょうか? 私もまた真実は知らないのです。私の知識もまた遺跡の管理者、主にシモーラからの聞きかじりで、断片的でしかありませんから。
ですが、ここに鍵がある。レーヴァンティン、パンドラという鍵が。巻き込んでしまって申し訳ないのですが、今回の目的はウッコの討伐のみにあらず。私は遺跡の、その先を知りたいのです」
「そんなことに付き合うほど奇特な人間がここにいるとでも? 頭の中が余程おめでたいようですね」
リサの辛辣な一言に一瞬閉口したアルフィリースだが、意見は同じだとばかりに鋭い視線を何人かが向けた。だがアルフィリースもまた負けはしない。
「・・・今回のことは、きっとアルフィリースにとっても助けとなるでしょう。いえ、やらなければならないのです」
「それはアルフィリースが自ら決めることです、あなたではない。ましてここにいるのはアルフィリースと巡り合い、彼女についていくことを決めた者たち。誰があなたの言葉に従いますか」
「おい、俺ぁ違うぞ?」
「爺さん、台無しだから。今そういうのいいから」
レクサスに窘められ、ルイに肘打ちをもらってベッツがむせる。ラインが呆れながらもアルフィリースに質問した。
「んで、助けとやらはなんなんだ? それが具体的にわからん限り、どうしようもない」
「オーランゼブルの狙っている計画については、もう私は結論がわかっています。アルフィリースもまた、自力で正解に到達しつつある。だから考えるべきは次――オーランゼブルの計画の発動後のことです」
「オーランゼブルの計画と、その発動後・・・?」
「ええ。オーランゼブルの計画を止めることは、今更不可能です。ですから、発動した後のことを――」
そこまでアルフィリースが話したところで、地鳴りが響いた。そう遠くない場所で、何かが崩れたような音が聞こえる。
アルフィリースたちはリサの先導で、その場所に全力で向かった。目の前には巨大な扉。とてもではないが、人間の力で開けられる大きさではない。
「巨人用だとでも?」
「自動扉よ。封印されているわ」
「開けられるのか?」
「すぐにでも」
アルフィリースが壁の様子が一部金属質になっているところに手をかざし、光の帯を操作した。するとまもなく重たく低い音とともに、重量感のある扉がゆっくりと左右にスライドしたのだ。
逸る彼らの目に飛び込んだ光景とは――
「床が――抜けたのか?」
「崩れたのか、壊れたのか」
「前者だろう。こんな分厚い地面が簡単に抜けるとでも?」
「化け物が起きたら、あり得る話じゃないのか?」
「でも壊れ跡を見てくださいよ。物理的に壊してますよ、これ。しかもデカい魔獣っていうか、下手したら人間がやってる」
「レクサス、マジで言ってんのか?」
「爺さんじゃないんだから、こんな時に冗談言いませんって」
レクサスが小突かれながら答える。それぞれが抜けた場所を確認しながら、リサがアルフィリースに聞いた。アルフィリースは蒼い顔をしながら、抜けた穴の底を見ている。
「ここには何があったのです?」
「おそらくは――ウッコとレーヴァンティンが」
アルフィリースはさらに目を凝らしたが、穴は深く闇は濃く、底の確認などできそうにもない。アルフィリースはぶつぶつと呟きながら、考えをまとめていた。
「一体何が――我々よりも早くここに到達した者がいた? いや、ウッコが起きていたのだから、起こした者がいたということでしょうか。わからないことばかりだわ」
「さて、どうするのです? さらに追いますか? それとも引き上げますか? アルネリアの神殿騎士団も調査に向かっているでしょうから、慎重を期するのなら合流するという手もありますが」
リサが少し面倒くさそうに提案したが、アルフィリースはあっさりと却下した。
「いえ、皆が行かないと言うのなら、私だけでも向かいます」
「ち・・・どうあってもデカ女を手放す気はないのですか」
「――だが、我々も向かう必要があるかもな」
ディオーレが穴の反対側を指さすと、そこにはティタニアが立っていた。
続く
次回投稿は、3/30(月)13:00です。