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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1954/2685

戦争と平和、その491~イェーガー内、深夜①~

***


 その頃、イェーガーの団内においてマイアはイルマタルとウィラニアのお守りをしながら転寝うたたねをしていた。万一のことがあればマイアがこのイェーガーを守る盾となるが、今までそんな事態には一度も至っていない。

 マイアは真竜の中では特に穏やかな気性だが、それにしてもあまりに平穏な日々が続くので、少しばかり鈍くなっている自分を感じるのも事実である。

 時にはアルフィリースやウィクトリエあたりと手合せをしようか――そんなことをイルマタルとウィラニアの寝顔を見ながら考えているうちに、いつの間にか眠っていた。目を覚ましたのは、妹のラキアに肩を揺らされたからである。


「姉さん、マイア姉さん。起きて」

「・・・あら、ラキア。私、寝てた?」

「寝てたっていうか、大丈夫? 私が肩を揺らすまで起きないなんて」


 隣には女勇者フォスティナもいる。そういえば万一を考えての護衛を、夜間に代わることを決めていたことをマイアは思い出す。

 竜の睡眠は基本浅い。特に守護を任されて警戒していた中でのことである。ラキアに敵意がないとはいえ、部屋に入られて気付かないのはたしかに問題だ。少し自分の気の抜け方に呆然としながらも、マイアが周囲を見渡した。


「確かにぼうっとしていたけど・・・レイキは?」

「さぁ? 私が部屋に入ってきた時は姉さんたちだけだったわ。それより姉さん、様子がおかしい。アルフィリース団長と幹部たちが転移魔術で突然消えて、あとのことをエクラとコーウェンが話し合っている。どこに行ったかはわからないけど、おそらくは――」

「あの強大な気配の元でしょうね。シュテルヴェーゼ様もジャバウォックやロックルーフを従えて向かったでしょうし、別段おかしなことでないわ。アルフィリースは常に戦いと争いの渦中にいる。きっと必要だから行ったのよ」

「でも、人間にどうにかなるような現象だとは思えないわ。グウェンドルフ様はいらっしゃらないのかしら?」

「さすがに大陸の反対にいればわからないと思うけど・・・シュテルヴェーゼ様にまずはお任せするのが一番でしょうね」

「どうしてアルフィリースばかりこんな目に遭うのかしら」


 ラキアの心底心配そうな顔つきに、マイアは微笑んだ。


「ラキアが他人の心配をするなんてね。アルフィリースは借金のかたにお世話になっているだけじゃなかったの?」

「ち、違うわよ! アルフィリースは仮契約でも私が騎乗を許可した人間よ。それが簡単に死んでしまったら私が馬鹿みたいだし・・・それに、アルフィリースは御子なんでしょう? それって、私たち真竜にとっても重要な人物なんじゃないの?」

「真竜にとってか・・・さて、それはどうかしらね」


 実は御子というものについてマイアも正確なことは知らない。ただ人間、あるいはそれ以外の非力の種族の中にも非常に強力な能力を持つ者が周期的にあらわれ、真竜やハイエルフ、有翼族と交渉をすることは今までもあった。それらは色々な呼称で呼ばれた――英雄、勇者、魔王。それら全てが御子であったとは思わないが、逆にいえば御子とは何なのかを正確にはマイアも知らない。

 かつて古竜は、本来の意味での御子は千年に一人程度だと言われた。ゆえに古竜たちもその存在については詳しくは知らない者が多い。知っていそうなのは草原竜イグナージだったが、マイアはかつて幼いころに良くしてくれた草原竜のことを少し思い出した。


「(草原竜様、もうお眠りになるの?)」

「(ああ、永い眠りになるだろう。もう目覚めることはないかもしれない)」

「(どうしてお眠りになるの?)」

「(力を使い過ぎたからだよ。私も、大地も)」

「(またお話できる?)」

「(できるかもしれないが・・・その時は、最後の御子が現れた時だろう。できればそうならないことを祈るよ)」

「(ふ~ん)」


 マイアはそんな幼い頃のやりとりを思い出していた。そうだ、最後の御子と言っていた。イグナージならば何か知っているかもしれない。眠りについた古竜や古き魔獣たちは呼びかければ回答が得られる者もいると聞く。マイアは草原竜の元に行く必要性を感じていた。

 が、立ち上がろうとして半分体を起こしたウィラニアとイルマタルががたがたと震えていることに気付いたのだ。その様子にただならぬ事態を感じたマイアが二人の様子を聞く。


「どうしたの、二人とも? 怖い夢でも見たの?」

「怖い夢? 違う、あれは現実よ・・・現実なのかしら?」

「マイアおばさん、ママはどこ? ママがいないから、あれが来たの?」

「おばさんじゃなくてお姉さん・・・って、それどころじゃないわね。ママはお仕事よ。それより、何を見たの?」

「もやもや・・・とても大きいもやもやなの」


 イルマタルの言葉は要領を得ないが、ウィラニアは必至に適切な言葉を探しているようだった。


「――陽炎。そうだ、陽炎だわ」

「陽炎? 夏の暑い日に見える、あれ?」

「私は寒い国に住んでいるから一度しか見たことがないけど、だからこそよく覚えている。暑い国ではよく見るものだと教えられたわ。あんな感じでもやもやしたものが部屋に入ってきて――レイキおじいさんを連れ去ったわ」


 ウィラニアの言葉に、マイア、ラキア、フォスティナが顔をそれぞれ見合わせる。レイキが何者なのか、三人とも知っている。レイキを力づくで連れ去れるような者など、いようはずがないのだ。いったい2人は何を見たというのか。



続く

次回投稿は、3/10(火)14:00です。

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