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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1951/2685

戦争と平和、その488~廃棄遺跡⑯~

「やめよ、今はその時ではない」

「放せ。一族の仇を目の前にして止まれというのか? まさか五千年も経過して、当時の人間が生きておるとはの。この好機を逃せと言うか?」

「戦姫ソールカが一族の仇とは限らない」

「魔人を滅ぼしたきっかけは奴らだろう? 古竜とは互角か優勢に渡り合っていたはずなのだ! それをあいつらが竜に協力したから――」

「そうとは限らない。私もまだ当時は年若い竜で意思決定ができる立場ではなかったが、竜の意志とは無関係にお前達に襲い掛かった一団がいたのだ。いや、正確には竜の中にも暴走した一団がいた。それらが勝手に魔人に襲い掛かり、争いがやまなくなって――」


 そこまでシュテルヴェーゼが語ろうとして、ミランダがぱぁんと、手を鳴らした。その音で我に返るブラディマリアとシュテルヴェーゼ。

 ミランダはもはや物怖じしてはいなかった。毅然としてその場を収めるために行動したのだ。


「その話は後、今は一刻の猶予もないって結論だったわよね? アタシたちがウッコの所まで案内するから、詳しくはその後で話しなさいな。あるいは到着するまで時間もあるのだからその道すがらにでも。

 ただウッコの討伐に関しては協力して頂戴。他所に気が散ったり、万一貴女たちに争われでもした日には、何もかもが滅茶苦茶だわ。そのことだけは心に留め置いてもわうわよ?」

「・・・無論だ」

「そなたなぞに言われずとも、わかっておるわ!」


 シュテルヴェーゼは決意をあらたに、ブラディマリアは少しむすりとして返答する。そしてミランダがぱんぱんと手を叩くと、その場は解散になった。


「ラファティ、二人を案内して。すぐにウッコの所に向かうわ。おそらく探索が終了する頃にはウッコの所に案内できるでしょう。急ぐわよ!」

「はっ、了解いたしました!」

「ジャバウォック、ロックルーフ。あなたたちへの依頼は保留にするわ。またそのうち依頼をするから、よろしく頼むわね」

「あいよ」

「承知した」

「では解散! 各自、動きましょう」


 ミランダの言葉でそれぞれが動き出した。天幕を出ると、ラファティの案内に従いながら、ジャバウォックがちらりとミランダの姿を盗み見た。


「勇ましいな」

「ああ、大した人間だ。我々を前に、堂々とした口調だった。人間にしては肝が据わっているとは思っていたが、中々どうして」

「いや、まぁそうなんだが。お前、何か引っかからないか?」

「何かとは、何だ?」


 ロックルーフが不思議そうな顔をしたが、当のジャバウォックも困っていた。自分で口にしておいてなんだが、何がおかしいとは具体的に口に出せなかったのだ。

 そうしてジャバウォックが言いあぐねている間に、彼らは遺跡の中に向かって行った。その彼らを見送った後で、ミランダがアルベルトに語り掛ける。


「アルベルト、あなたにも行ってもらうわ」

「はっ。ですがミランダ様の護衛はいかがいたしますか?」

「今はそんなことを言っている場合ではないでしょう。戦力になりそうな者は全て投入した方がよい。指揮官はラファティにやってもらうから、あなたは私の剣としてウッコの討伐を見届けなさい」

「かしこまりました」


 一礼して去るアルベルトを見送った後、ミランダは天幕の椅子に腰かけ、天を仰いだ。そして天に手をかざしながら、呟いたのだ。


「さて、これで私にできることは現状なくなった。ここから盤面の駒がどう動くか、果たして予想通りにいくかしら。こういう時に崩すとしたら、やっぱりアルフィリースなのかしらね」


 ミランダがふっと一人笑ったが、その疑問に答える者は当然誰もいなかった。


***


 ブラディマリアと浄儀白楽は、アルネリアの先導で遺跡の中を歩きながら、互いにそれぞれ悩み事があった。戦いのことを話しつつも、遺跡の様子を確認しているシュテルヴェーゼ一行とは違い、二人は遺跡の光景にすら目をくれず自分の考えに没頭していた。

 ブラディマリアの考えはウッコのことから、戦姫ソールカへと向けられていた。かつて畏れ、そして恨んだ相手が目の前にいるかもしれない。ウッコのことどころではないのではと考えるも、自分一人でソールカをどうにかできるとはどうしても思えなかった。思えば、そのためにティランを産もうとしたのかもしれない。

 古い記憶は定かではないが、魔人複数体を同時に圧倒するだけの戦闘力を有しているはずの戦姫ソールカ。その力が全盛期のそのままであれば、止めるすべなどなかろうと思うのだ。

 だがここで一つの疑問が浮かんだ。オーランゼブルはどうしてそのソールカを放置していたのだろうか。それどころか、話題にすら今までのぼらなかった。あえてそうしたのだろうが、その意図を聞いてみたくはあると思う。

 自分が連絡をすることは不可能だが、そういえば浄儀白楽は個人的に連絡を取れるはずだと思い至る。そうして自分の隣にいる浄儀白楽に意識を向けると、彼は彼で全く違う考えに没頭していた。



続く

次回投稿は、3/4(水)14:00です。

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