戦争と平和、その486~廃棄遺跡⑭~
エルザはまだいないものの、現場指揮、探索は順調だった。だからこそ、ミランダは不安な気持ちになる。
「(おかしいわね・・・ティタニアはどこに消えたのかしら? それともどこかで迷っている? 確かに広大な遺跡だから、一つ順路を間違えれば数刻は時間差が出るとは思うけど。
それよりも、下から感じられる圧倒的に巨大な存在感。こんな巨大な存在感は今までの人生で感じたことがない。今まで戦ったどんな魔物より、魔王より強大だわ。これがペルパーギスじゃないのかしら? そうだとしたら、既にティタニアの捜索は無意味であり、マスターやシュテルヴェーゼ様と連携してことに当たる必要がある。統一武術大会どころじゃないわ。いえ、先に事実確認が必要なのかしらね。それにしても、気配の出所がレーヴァンティンの安置所のすぐ傍のように感じられるのだけど――アタシの勘違い?)」
ミランダが頭を悩ます間にも、次の報告が来る。
「申し上げます!」
「何かしら?」
「先程、忽然としてこの近隣に人が出現いたしました。警戒網の内側に突然出現したため、その存在を予測できず――」
「この周辺を完全封鎖するほどの時間も人的余裕もないわ。人一人くらい放っておきなさい」
「いえ、それが様子が尋常ではないため――」
「? どういうこと?」
伝令の言葉にミランダがぴくりと反応した。伝令は告げる。
「髪が黄金に光り輝いているのです。まるで太陽であるかのように――」
「それは――何かしら?」
「地につくほどに長い髪を持った、この世の者とは思えないほど美しい女性です。センサーで感知し確認をしましたが、闇からそっと姿を窺ったにもかかわらず、こちらに気付いて微笑みました。それ以上は何もないものの、いかがいたしたものかということで遠巻きに監視だけ継続しています」
「うーん。なんだろう、それは」
「それは銀の一族の戦士長であろう」
突然アルネリアの本部天幕に割って入る者がいた。なんと、ブラディマリアが浄儀白楽を伴って突然押し入ってきたのである。
これにはミランダもアルベルトも驚いたが、それよりも発言の方にミランダが興味を引かれた。
「なんでここに、なんてことはさておき、気になることを言ったわね?」
「なんじゃそなた、会議の時より話が早いではないか」
「状況が状況だわ。猫の手も借りたいところで、強者二人の手が借りられるならアタシの個人的な感情なんてクソくらえよ。それより、銀の一族の戦士長とは何者?」
「ほほ、気に入った。妾とてかつての幼き記憶と口伝のみじゃが――おそらくは魔人と古竜が戦った際に割って入ってきた銀の一族じゃろう。現在でもこそこそなにやら活動しているようじゃし、武術大会にもおったであろう?」
「ああ、ヴァトルカとジェミャカとかいう二人ね」
「あんなのは小物も小物。妾が見た銀の一族は髪が長く、魔人と単騎で互角に渡り合う化け物揃いじゃった。それらが古竜側についたゆえ、戦力の均衡が傾いたのよ。
特に戦士長なる黄金の髪の持ち主があの当時と同じ者なら、妾でもどうにもならぬ。何せ魔人と古竜の大半をまとめて屠ったウッコとアッカを仕留めた化け物以上の存在じゃからのぅ」
「ウッコとアッカ・・・なんですって?」
ミランダの反応に、今度はブラディマリアが目を丸くした。
「知らぬのか? アルネリアの地下にあれほどの化け物を飼っておきながら?」
「知らないわ。アタシが知らないだけかもしれないけど――これはペルパーギスの気配じゃないの?」
「ペルパーギスなる小者など、知らぬわ。そんな者のために妾が直接出向いたと思っておるのかえ? 妾がこうして出向いたのは、かつて魔人と古竜をおいやったウッコの気配を感じたからじゃ。まだ完全に目覚めておらぬし、今なら何とかできる可能性がある――むしろ、覚醒されてはどうにもならぬと考えたからよ。
そして来てみれば貴様たちが探索をしておるではないか。ウッコまでの道順が明らかであるなら、疾く妾に教えよ。ウッコが目覚めぬうちに、屠ってやるでのぅ」
「ちょっと待った。少し考えさせなさい」
ミランダは高速で頭を回転させ始めた。初めて聞く情報ばかりだが、ブラディマリアの真剣な様子、浄儀白楽も会議と違い余計な口を挟まずブラディマリアに任せている様子。騎士たちの報告なども併せれば、真実を語っている可能性が高いと考える。
だがこの魔人の言うことを素直に聞いてよいものかどうか。まだ決断に至らぬうちに、さらにこの天幕を訪れた者がいた。
続く
次回投稿は、2/29(土)14:00です。