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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1945/2685

戦争と平和、その482~滅びの予言⑧~

「さて、こうなると一撃加えてからの離脱にしたいけどよぉ。あいつ、天才だわ。戦うほどに――」


 隙がなくなっていきやがる、とドラグレオが感嘆する。長老たち銀の一族の戦士を三人同時に捌きながら、徐々に反撃に転じているのだ。ドラグレオが割って入ろうにも、長老たちの連携が見事なせいで、割って入ると邪魔にしかなりそうにない。


「くそっ、焦れってぇな!」

「暇なのかしら、おじさまぁ?」


 ドラグレオの背後から声がかかる。そこには、返り血に濡れた銀の一族の戦姫ヘードネカが立っていた。その表情はどこか恍惚としており、妖しく光る双眸が危険な相手であることを告げていた。


「暇なら遊んでくれませんかぁ?」

「お前は・・・味方じゃねぇのか?」

「いいえ? たった今、一族を裏切っちゃった」

「なぜだ?」

「本能には逆らえない、そういうことかな」


 ドラグレオがちらりと陽炎の方を見た。なるほど、そういうことかと頷いた。


「人の恋路を邪魔する俺は、お前に蹴られて死んじまえ。そういうことか?」

「おじさん、面白いねぇ。そこまでじゃないけど、八つ裂きにさせてくれるなら、なおいいかも」

「もっとひでぇじゃねぇか!」

「そのくらいじゃあどうせ死なないっしょ? 私もどのくらい自分が強いのかよく知らないし、練習相手になってくれたら最高かなぁ」

「ことわ――いや、受けて立つぜ!」

「やっぱり――ええっ!?」


 意外な返答にヘードネカも思わず素っ頓狂な声を上げる。まさか受けて立たれるとは思わなかったどころか、ドラグレオが一歩前に出たので思わず仰け反るヘードネカ。


「そ、そういう趣味なの?」

「てめぇが誘ったんだろうが! 試してみやがれ!」

「う・・・改めて受けて立たれるとなんてやりずらい。しょ、しょうがないなぁ。じゃあ存分にやってあげる!」


 ヘードネカの舞と、ドラグレオの頑強さがぶつかる。それを見た陽炎は、結局ドラグレオの思い通りになったことを察していた。

 そう、自分と戦うよりヘードネカとの戦いを選択したのだ。こちらを片付けたとて、自分が割って入ることはないと判断されたのだ。確かにそれはあまりに無粋。こちらの性格を考えたうえでの、苦肉の選択だろう。

 それがどういう結末をもたらすのか、陽炎にはおおよその予想がついた。そうなると、急激にこの戦いに対する興味が失われたのだ。


「どこを見ている!」


 長老たちが陽炎に一斉に襲い掛かる。その攻撃を片手でぱしりとはたくと、一人に向けて無造作に魔力の塊をぶつけた。魔術にもならぬ、ただの脈絡のない攻撃。それゆえに、予想もつかず避けることができなかった。

 塊に体の前面が潰されたかのようにひしゃげ、ふらりと倒れる戦姫。その様子を一瞬目で追いやった瞬間、もう一人の戦姫の額に穴があいた。今度は圧縮した魔力の塊を指で弾いて貫通したのだ。

 残された戦姫が青い顔をしながら守勢に回る。せめて時間稼ぎをしようと考えたのだろう。だが陽炎は容赦なく、そちらに魔力の塊を放出する。逸らすために舞で前面に空気の塊を作ろうとした戦姫だが、放出されて棒状になった魔力の塊が突然がばりと左右に展開した。

 戦姫があっと思った瞬間には、巨大な獣の咢のように開いた魔力の塊に喰われていた。逃れようとした腕だけが天に向けて突き出されたが、やがて力がなくなると魔力の塊は何事もなかったかのようにそのまま消滅したのだ。

 そして陽炎はヘードネカとドラグレオの戦いに注目し、しばし眺めると残念そうにため息をついて首を横に振った。だがその場を去るでもなく、ただ岩に腰かけてその戦いを眺めていたのである。



続く

次回投稿は、2/23(土)15:00です。連日投稿です。

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