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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1944/2685

戦争と平和、その481~滅びの予言⑦~

***


「んならぁああああ!」


 ドラグレオが全力で拳を振るい、大地を殴る。燃える大地がさらに抉れ、熱された岩が散弾のように吹き飛ぶ。当たれば木っ端微塵、散弾のような岩に当たっても致命傷は必至。だがそんなドラグレオを、陽炎は弄ぶように戦っていた。

 かつて武芸自慢の巨体武者を、身軽な若い戦士が軽装で手玉にとった逸話があるが、その再来といったところなのか。ドラグレオがそんな逸話を知っているわけではないが、どれだけ振り回されても体力切れだけにはならない自信がドラグレオにはあった、のだが。


「(こいつぁ、よくねぇ)」


 相手の姿はいまだ判然とせず。それが熱気や蒸気から来る陽炎のせいだけでなく、相手から放出される膨大な魔力のせいだとドラグレオも気付いたのである。

 魔力の総量だけならオーランゼブル、ライフレス、ブラディマリアすらゆうに上回る。しかもそれがただの『人間』であることに、ドラグレオは今までにない危機感を抱いていた。


「(俺のことを舐めてんだかどうかは知らねぇが、本気で攻撃してこねぇのが救いだな。あの魔力だったら、短呪ですら壊滅的な威力を持つ可能性がある。ミコトがここから安全圏まで逃げるのに、おおよそ一刻ってところか。それまでの時間はなんとか稼ぎてぇが、ちょっと厳しいよなぁ。いくら俺の体力が無尽蔵っていってもよ、氷漬けにされたり地下深くに押し込められたりすりゃあ出るのに時間がかかるからよぅ。

 一つわかったのは、天の火は連発できねぇってことか。あれは天の火っていうか――似せた何かだな。なにせ、精霊たちそのものが驚いてやがるもんなぁ。本物なら俺がもう少し早く勘付いたはずだしよ。やはりウッコとアッカがいねぇと、本物の天の火は撃てねぇってことか。

 さて。奴さんにその気がねぇのなら、このままずるずると戦いを引き延ばすのがいいんだろうが・・・)」


 そんなに上手くいくものかね、とドラグレオが悩みながら岩を相手にぶん投げていると、そこに割って入る者がいた。


「大賢者殿、助太刀いたす! どうかお逃げを!」

「うわっ、馬鹿っ!」


 そんなことを考えていた矢先に割り込んだ銀の一族がいたので、思わずドラグレオは馬鹿よわ張りしてしまった。ドラグレオが苦戦していると考えた長老たちが、戦いに割って入って陽炎を攻撃したのだ。長老たちの渾身の一撃が陽炎に命中するが、ドラグレオは長老たちの腕を掴んで追撃を止めさせた。


「俺のことはいい! それより余力があるならミコトの撤退を手伝ってくれ!」

「ですが、しかし!」

「均衡が崩れたら、あいつが何するかわかんねぇぞ!? あいつは、この銀の一族の里を滅ぼした一撃を放った奴の使い魔だ! 本人が来れねぇ理由はしらねぇが、まだ使い魔が絶対命令の制御下にない。だが使い魔が苦戦したりすることがわかれば――」

「は? 使い魔? あの強さで??」


 長老たちが疑問に思った瞬間、陽炎の気配が一瞬で変わった。今までは見ての通りゆらゆらと揺れているような気配だったのに、明確な殺気でもってドラグレオと銀の一族の長老たちを威圧してきたのだ。

 ここに来て事態が悪化したことを長老たちは知った。


「・・・余計なお世話だったということですか」

「悪ぃが、まさにその通りだ。あれほどの化け物相手にできることなんて、俺にも大してねぇんだ。多分だが、上半身を吹き飛ばそうが何をしようが、再生するだろうな。それに対して、さしもの俺でも頭を吹き飛ばされりゃさすがに死ぬ。耐久力の勝負ですら、おそらく俺が不利だ。

 加えてあの魔力。俺はオーランゼブルの精神束縛のせいで全力が出せず、ミコトを逃がさなきゃならねぇと来たもんだ。勝てる要素は一つもねぇな。せめて決着を長引かせたかったんだけどよ」

「それも厳しくなってしまったと」

「ああ。お前さんたちが強すぎるせいで、天秤がこちらに傾いちまった。こうなった以上、あいつもふざけたような戦いにするわけにはいかないだろうよ――来るぞ!」


 陽炎が動き、ドラグレオと長老たちが応戦した。だが銀の一族でもかつて上位の戦士であったはずの長老たちの攻撃がかすりもしない。


「こやつ! 格闘戦も一流か!」

「(いや、多分違うな・・・格闘戦は本人の中じゃあ二流だろう。他の得物、それも長物――たとえば棒術なんかが得意のはずだ。

 それに、本領は魔術戦だろうな。遊んでいるのか、まだ余裕があるのか、具体的な命令が来てねぇのか。これならまだ付け入る隙があるかもしれねぇ)」

「おのれぇ!」


 ドラグレオは雄たけびとは別に冷静な部分を保っていたが、戦姫たちは先ほどヘードネカの足止めに向かった仲間のこともあった。ヘードネカがこちらに来てしまえば、形勢が不利になることはわかり切っていたのだ。

 ドラグレオは長老たちと陽炎の戦いを見ながら、相手の隙を探していた。



続く

次回投稿は、2/19(水)15:00になります。連日投稿です。

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