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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1939/2685

戦争と平和、その476~滅びの予言②~

 青ざめる結界師たちに、命令を下した長老が叫ぶ。


「貴様ら、全力でやらんか!」

「そんな馬鹿な・・・! もう全力です!」

「何ィ!? 元来はソールカ姫様の暴走を止めるための結界じゃぞ! なぜこの中で動けるのじゃ!」

「ふぎゃああ! いてぇ、いてぇぞちくしょうめ! おい、ミコト! なんとかしろ!」

「おじさんならしばらくは平気でしょ? もう、しょうがないなぁ」


 ミコトが手をかざすと、結界が一瞬で消滅した。全力で張っていた結界が突然消滅し、結界師たちは全力疾走を突然強制的に止められたように体勢を崩してその場に倒れ込んだ。

 ドラグレオすら片膝をつく中、ミコト一人が平然と立っている。老婆たちは既に腰を抜かしたのか、へたり込んでその場でミコトを恐ろし気に見上げていた。


「な、なんなのじゃこの娘は」

「我々の結界が効かぬなど。かつてはウッコとアッカを止めるために使われた結界じゃぞい」

「ミコト・・・御子・・・おぬし、滅びの御子かえ?」


 酒を呑んでいた老婆がミコトに問いかける。老婆の問いかけにミコトは首をひねりながらも頷いた。


「滅びの御子かぁ。正直よくわからないんだよね、生まれてこの方、小さな祠に閉じ込められていたから。世話をしてくれた人も嫌々だったみたいだし、それでも死なせちゃいけないんだって吐き捨てるように言ってた。

 私はなんで生きているんだろうって思ってたけど、おじさんが外に出してくれなければ、そのまま何も考えずに生きていたんだろうなぁ。

 おじさんが空から降ってきて、祠が壊れた。それからおじさんに連れられて世界を見て回ったんだよね。世界はとっても綺麗で素敵で――なのに、なぜか全部壊したくなるんだよね。

 そうか、言われて気付いた。私の役目は、それか」


 ミコトの瞳が突然黒く染まった。同時に放たれる漆黒の空気と、腐りゆく地面。空気が老婆たちに届かんとした時、その頭をドラグレオが撫でた。


「やめろ、ミコト。役目や使命、運命なんざクソくらえだ。この大地や海にくらべりゃ、そんなものはちっぽけだ。お前もわかっているだろ? 俺もお前も、もっと自由でいいってよ」

「おじさん・・・おじさんって馬鹿だけど、良い馬鹿だよね」

「そこは阿保って言えって言ってるだろ?」

「良い言葉風に言っても、内容が締まらないよ」


 ミコトがくすりと笑って殺気をひっこめた。老婆たちの中には失神したり、失禁をする者までいたが、酒を呑んでいた老婆は目の前で起きた出来事を興味深そうに眺めていた。


「そうか――そういうことか。滅びの運命とはやはり滅びの御子のことで――それが大賢者と出会って運命が変わるのか! では予言とは――どこで狂ったのか」

「その予言ってのも、数ある『滅びの予定』の中の一つに過ぎねぇ。ウッコとアッカもそうだったろう。だがその運命は一度ねじ曲がったんだ。それこそ、古竜と魔人と、古代の魔獣共が協力してな。余計な手が入らなけりゃ、今でも魔人と真竜は協力していたかもしれねぇ」

「ドラグレオよ、お主――大賢者としての記憶があるのか!?」

「オーランゼブルのせいでいろんなことがあやふやだがな。オーランゼブルの魔術は楔みてぇなものだ。効果が永続性じゃないぶん、再度面と向かって強化されない限り洗脳状態になることはねぇだろうが、奴が解くか死なねぇ限り完全に解けることもないだろうな。そのせいでまっとうな思考ができる時間が少ねぇが、俺が何をすべきかはわかってるぜ?」


 老婆が力強く頷いた。


「それでその娘の傍にいるのか――じゃがそれは」

「どうなるかはわかってる。だが俺にしかできねぇ、俺の生まれた役目はこれだと言い切れるくれぇには強い使命を感じるぜ? もちろん役目や指名なんざクソくらえだがよ、何より俺がそうしてやりてぇ」

「おじさん・・・ロリコン?」

「ロリ――なんだって!?」


 ドラグレオが慌てたが、ミコトがその様子にくすくすと笑っていた。


「冗談だよおじさん、感謝してる」

「お、おうよ! 決して下心なんざないからな!」

「口にした方が胡散臭いわい」


 老婆もつられて笑ったが、残っていた酒を一気に飲み干した。その表情が、一気に晴れやかになる。


「そうか、そういうことか。何がどうなったかはわからんが、運命は流転したのじゃな。里に籠っていた我々は無意味じゃったか!」

「無意味たぁ言わねぇが、外に出ねぇと意味はねぇ。狭い世界でいくら議論を積み重ねても、限界があらぁな」

「なるほど、よかれと思ってやったことが既に因習と化していたか。我々が数千年悩んだことが、こんなやり方で解決することじゃったとはのぅ。たしかに、これも滅びの一種か。じゃがこんな滅びなら悪くないわ。

 しかし、お主らどうするつもりじゃ? 本来はその娘――ミコトが我々の姫様と戦う運命じゃったはずじゃ。じゃがその運命はもはや果たされぬ。どうするのがもっともよいと思うか?」


 老婆の言葉にドラグレオはしばし顎を撫でていて悩んだが、腰に手を当てて胸を張り、きっぱりと言い放った。



続く

次回投稿は、2/9(日)15:00です。

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