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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1938/2685

戦争と平和、その475~滅びの予言①~

「まあこうしていても仕方あるまい。飲むとするか」

「・・・そんなことをしている場合か?」


 呆然とした表情のまま反論する者もいたが、何名かは盃を受け取りその場に座り込んだ。


「付き合おう」

「おい、お前たち」

「いつまで固いことを言っておるか。ここに守る者は何もない。ソールカ姫様が我々の存在意義そのものであり、かつての戦士団の誓いでもあるだろう。

 来たるべき滅びに備えてはや数千年、いずれ限界が来ただろうさ。もう潮時だ、我々は頑張った。誰が好き好んで可愛い後輩たちに過酷な運命を課すかよ。我々はヘードネカやヴァイカの言う通り、長く生きすぎたのさ。以下に姫様を独りにしたくないとはいえ、我々とて初代戦姫ではないだ」

「ぞうじゃな。当時のことを知る者も、ソールカ姫様だけ。他の伝説の戦士たちも全て死に絶え、当時のことを知る者など我々の中にもおらぬ。

 数千年前何があったのか、どうして魔人と真竜が争ったのか、その中に割って入れたウッコやアッカはどこから来たのか、そして魔人と真竜を圧倒するほどの魔獣を倒した当時の戦士団は本当に人間だったのか。古竜たちは黙して語らぬまま自然と同調して隠れてしまい、ソールカ姫様も度重なる眠りのせいで当時の記憶は曖昧だ。

 ただ予言だけが残された。いずれ出現する、滅びの御子に対して備えるべしと。それを律儀に守ってきたが、まさか当の戦姫の反逆のせいで里が滅びるとはの」

「これも時代の流れじゃろうて。魔人はブラディマリアを残して全て滅び、真竜ですら退化から滅びの兆候を見せるなか、よく我々はもったほうじゃ。あれほど絶対的な存在に見えた魔人も、まさか滅びる時がこようとはのぅ」

「かつて、真竜と魔人は互いに手を取り合っていたというが、到底信じられんな」

「そうさな。さて、何に乾杯するね?」

「我々の自由と老いでよかろう」


 その言葉に、長老たちの何名かがどっと笑った。


「今更自由になってものぅ。もうちょっと若けりゃ、やることもあろうが」

「なんじゃ貴様、500年前に振った男が恋しいかえ?」

「おうよ、あれは良い男じゃった。身ごもった後に殺されるのが忍びなくて捨てたからの」

「後に土地を切り開いて領主となり、名君と讃えられた。見る眼は確かじゃったな」

「なんじゃそれは。そんな話は知らんぞい?」

「当り前よ、こんな話が当時の長老たちに耳に入ってみろ。出世が台無しじゃ」

「里の運営が出世か? それこそ馬鹿な話じゃ」

「昔はそう思っておったのよ」

「それぞれ隠している話がありそうじゃのぅ。社の崩壊ついでに暴露せぬか」

「乗った!」

「ねぇ、盛り上がっているところ悪いんだけど」


 話が盛り上がり膝を打った瞬間、その輪に割って入る聞いたことのない若い声。老婆たちがふと見れば、そこには幼い少女が立っていた。その背後には獣のような巨躯の男。少女の声は可愛らしく熱を持たず、しかし冷たく無慈悲に老婆たちには聞こえていた。そう、先ほどの開放感が一瞬でなくなる程度には。

 少女は残念そうに告げるのだ。


「姫様――はいないよね? せっかく来たのに残念だなぁ」

「ハッハハハ! こういうのは、『スカ』と言うんだな。知っているぞ!」

「おじさん、うるさい」


 少女が大声で笑う男の声に耳を塞いだ。そして不満そうに口を尖らせて文句を言った。


「そもそもおじさんがちゃんと方向を決めないで走り出すからこうなったんでしょう? 北の果てに行ったり、南の大地にたどり着いたり、そりゃあもう盛大な無駄走りだよ」

「ハハハハハ! 西の海でクラーケンの群れにも絡まれたな!」

「おじさんが南の大陸で一休みするって言ったけど、三日も海の上を走っても島の一つも見なかったよ! おまけにクラーケンどころじゃない化け物にも遭遇するし。何なの、あのカニ。海の上に立ったら雲にまで届いてたよ?」

「足長ガニだ。それ以外あるか?」

「長いにもほどがあるよ! 私がいなかったらさすがのおじさんでも危なかったよ!?」

「うむ、たしかに喰いきれなかったな!」

「だからそういう問題じゃなくってさぁ!」


 目の前でぎゃあぎゃあと騒ぐ奇妙な組み合わせの二人を、結界師たちが囲んだ。いずれにせよ、招かれざる客であることは確定。少なくとも捕える必要はあるだろうと長老たちが互いに頷きあった。


「貴様達は――片方はドラグレオじゃな? かつての賢者が憐れなことよ。白銀公も貴様のそのていたらくを見ていたらさぞかし嘆くじゃろうて。オーランゼブルの魔術の効果で馬鹿者に成り果てるとはな」

「あぁん!? 俺は馬鹿じゃねぇ、阿保だって言ってんだろうが! 権力者に媚びたことはねぇぞ、オラァ!」

「どっちでもええわい。して、その隣の娘は何者じゃ? そもそも、どうやってここに侵入した? まだ結界は作動しておるはずじゃが」

「長老様、それが」


 結界師の一人が蒼ざめながら答えた。


「結界は一つ残らず消えておりました。全ての方位が、ひとつ残らずです」

「何じゃとぅ?」

「ああ、あれかぁ。ぴりぴりするのが邪魔だから消しちゃった。私が本気になれば、もののうちに入らないよ、あれ」


 少女――ミコトが答える。その威圧感がまし、不気味さを感じたところで長老の一人が合図をした。


「やれ! 潰してしまえ!」

「待て! まだ聞くことがある!」

「だから、効かないってば」


 里の結界師全員での結界攻撃。ドラグレオでさえ動きを完全に封じられる結界の圧力の中、ミコトはゆっくりとその中で歩いていた。



続く

次回投稿は、2/7(金)15:00です。

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