戦争と平和、その470~廃棄遺跡⑪~
「アルネリアの連中、一直線にウッコの元に向かっているんじゃないのか・・・?」
「地図でも持っているんじゃねぇの?」
「そんな馬鹿な。あいつらはレーヴァンティンを奪取するために動いたティタニアを追っているはずだ。ウッコが起きたのはそもそも偶然で、あいつらにウッコを討伐するような準備や手段があるものか。だいたいこの遺跡、まだ一部動いているんだぜ? 道が塞がったり移動したりで――」
そこまで言ってドゥームは一つのことに気付いたようだった。手がぴたりと止まると、また考えごとを始める。
「そうか――もしそうならそもそも――でもまさか、そんなことがありえるのか・・・?」
「ドゥーム、何を考えているの?」
「いや、世の中の闇の深さについて。世界をもっと知りたくなったってことさ」
ドゥームはすぐに転移魔術を起動させると、デザイアを呼び出した。
「デザイア、修復度合いは?」
「半分くらいだわ」
「能力は使えるか?」
「それほど長い時間でなければ、問題なく」
「とりあえず仮の新しい体を準備するよ。それを使って顕現してほしい」
「わかったわ」
ドゥームが準備を進める中、他の面子は困惑気味だ。
「おい旦那、俺らも直接行くのか?」
「そうだよ」
「大魔王とそれ以上の魔獣がいるところに突っ込むなんて、オラ自信ないっぺ・・・」
ケルベロスが巨体に似合わず指をいじいじしながら告げたが、その尻をミルネーが蹴飛ばす。
「100万のオークの群れを率いる魔王が、何を気弱な。軍勢だけなら大魔王の格に引けをとるまいに」
「だども・・・」
「軟弱な男は嫌いだ」
ミルネーの言葉にショックを受けたのか、ケルベロスが半泣きになっていた。
「オークは馬鹿だから前に進むしかないけんども、オラはそれなりに全体ってものを見渡してだなぁ」
「うじうじ言う男はダメね」
「当たって砕けて」
「世の中、馬鹿な方が楽しいぜ? ケルベロス」
オシリアとデザイアに散々言われ、グンツに肩を叩かれてケルベロスはがっくりしていた。
「そりゃあグンツは馬鹿だからいいけども、オラこれでもお勉強できるんだどもなぁ」
「オークが何を言ってやがる」
「金華草と紫染草を2対1で煎じた時と、3対2で煎じた時の毒性について、言ってみるべ?」
「お、おう・・・?」
グンツに薬草学の知識はないためわかるはずもない。
「せめて算術にしろや、オラァ!」
「じゃあ999×101-999は」
「ひ-、ふー、みー・・・できるかぁ! 指で数えられるやつにしろぉ!」
「こりゃだめだっぺ。想像以上に馬鹿だったべ」
「んだとぉ!?」
「いつまでやってんだ、行くぞ?」
ドゥームが呆れた顔で呼びかけ、結局一行は全員転移で遺跡の中へと向かおうとした、その時である。
転移の魔術が起動するその瞬間、目の前に突如として光り輝く『誰か』が現れたのだ。神々しいともいえるまでのその光景を目にした瞬間、ドゥームの脳裏に描かれたのはただ一つ、恐怖だけだった。
転移の魔術は無事起動した。一行は全員無事で、遺跡の中に魔物とともに潜入させた分体を起点に、無事転移もできた。だが、全員にはまるで高温の何かに炙られたように、火傷の跡ができていた。
刹那、全員が目を見合わせ引きつった表情を確認していた。
「よう、最後のはなんだよ・・・?」
「・・・私に聞くな、わかるはずがないだろう」
「・・・ドゥーム、さっきのは? どうして私までもがダメージを受けているの?」
「・・・僕も知らない、あんな奴。『虚ろ』ではないだろうけど、力のある奴らが一堂に集まると、やっぱりよくない者を呼び寄せるのかもしれない。しかし、それにしても――」
あまりに力が強くなかったかと、ドゥームは考えた。それに、勘違いでなければ一体ではなかったようにも見えた。もしあれが遺跡の中に入ってくるのなら、早々にやるべきことを済ませて撤退する必要があるとドゥームは考え、まだ戦く仲間をいざない遺跡の奥へと進んでいった。
続く
次回投稿は、1/28(火)16:00です。